第77話 『 氷城決戦! T.タツタVS〝四泉〟!! 』
「 目障りですね 」
……氷の宮殿の玉座にてわたしは表情を曇らせた。
ここは氷の聖堂。わたしを含め、側近である四名しか入ることの許されない神聖なる場所である。
「……人の庭に勝手に入ってしまうし、わたしの可愛い兵隊さんも燃やしてしまうし」
わたしは水晶玉を覗き込む、そこには侵入者らの姿が映っていた。この水晶玉はこの〝氷の花園〟にある全てを覗き込むことができるのだ。
「許せませんね♪」
わたしは視線を水晶玉から前の方へと逸らした。
「 〝紫鶴〟 」
「はい」
側近の一人である〝紫鶴〟が頭を垂れて頷いた。
「 〝蒸鬼〟 」
「 〝葵〟 」
「 〝氷熊〟 」
……この四人こそがわたしの最強の僕――〝四泉〟。その実力はこのノスタル大陸でも指折りである。
〝紫鶴〟――〝四泉〟最強にしてリーダー。
〝蒸鬼〟――水蒸気を操る攻守一体の戦士。
〝葵〟――水を操る、変幻自在の攻撃を得意とする戦士。
〝氷熊〟――氷を操る、〝四泉〟随一の近接戦闘の達人。
……この四人ならば侵入者すら難なく殲滅できるに違いない。
「これは命令です」
これは、わたし……そして、〝白絵〟様の命令だ。
「 殺しなさい、一人残らず 」
……〝クリスティア〟を狙う者は皆殺し。それが、わたしが〝白絵〟様に命ぜられた使命であった。
『 御意……! 』
それだけ言って、〝四泉〟は皆一瞬にして聖堂から姿を消した。
「……」
たった一人になってしまったわたしは大人しく水晶を覗き込む。
「……やはりこの数は鬱陶しいですね」
1、2、3、4……と精霊が二匹。分断しますか。
「 発動 」
――わたしは魔力を解放した。
氷 の 迷 宮
……次の瞬間。
水晶玉に映る侵入者の足下から――氷壁が飛び出した。
『 !? 』
侵入者らが驚愕で目を見開く。しかし、彼らが何かするよりも早く迷宮は完成した。
――〝氷の迷宮〟。
……それは魔力の通った氷の迷路であり、進めるのは前と後ろだけ、上下左右は氷の壁で遮られていた。
『クソッ、どうなってる!』
『閉じ込められた!?』
『タツタさん!』
『駄目だ、〝火音〟でも壊れない!』
『あら?』
『きゅー?』
分断された侵入者らは混乱していた。
この〝氷の迷宮〟は相手を完全に閉じ込められない代わりに、超硬度の氷壁を召喚できる魔術だ……こちらも〝白絵〟様から戴いた魔術である。
「ふふっ、慌てている時間はありませんよ」
――コツッ、足音が侵入者らに近づく。
『 見つけた♪ 』
その足音の主は――〝四泉〟。
『 初めまして、御客様 』
『 そして 』
『 さようなら 』
『 ♪ 』
それでは始めましょうか――戦争を……。