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  第64話 『 タツタVS〝刃〟 』



 「……何にも見えねェ」


 ……俺の視界は闇に呑み込まれた。

 俺は〝灰色狼〟の一人――〝刃〟で入族試験の試験官を務めている。

 そして、現在進行形で旅人――カラアゲタツタと闘っていた。

 しかし、戦闘開始早々に奴の〝特異能力〟と思われる力で視界が真っ暗になったのだ。

 果たして、タツタはこの闇の中でどう闘うのだろうか?

 この暗闇の中、俺にできることはほとんど無い。

 俺には闇の中で自由に動き回れる〝目〟を持っていないからだ。

 だから、俺にできることは神経を研ぎ澄ませて、奴の攻撃に備えることだけだった。


 「……」


 ……俺は待った。


 「……」


 ……待ち続けた。


 「……」


 ……ただただ待ち続けた。


 「だぁーーー! いつまで待たせるんだァーーー!」


 いつまでも来ないタツタの攻撃に俺は苛立ちを覚えずにいられなかった。


 ――そのときだ。


 「――っ!?」


 ――気配がした。背後だ!


 俺は反射的に右手の黒刀を背後に薙いだ。



 ――ガキイィィィィィンッ……! 俺の斬撃とタツタの斬撃が交差した。



 「……むっ、お前見えるのか?」


 (……見えねェよ。ただ生まれつき感がいいだけだ)


 ――更に斬撃が繰り出される。


 「――ァッ、ぶねっ!」


 ――俺もほぼ勘で受け止める。


 「……」

 「……」

 「やるな」


 ……何か知らんが誉めてくれた。


 「よし、闇を解除するか」


 ……ありがたい。


 ――すぐに闇が晴れる。


 うおっ、まぶし! 光度の差に目がビックリした。


 「お前も〝夜王の眼〟を持っているとは予想外だったよ」

 「俺の台詞だよ、それ」


 ……〝夜王の眼〟、何それ? だが、取り敢えず知ったかぶりをした。


 「あとはお前だけだったのに、惜しかったよ」

 「……どういう意味だ?」


 タツタがそっぽを向いた。俺も奴の視線を追う。そこには――……。


 「 !? 」


 ……信じられない光景が広がっていた。


 「……お前がやったのか?」

 「どうかな? 暗闇の中でテキトーに剣を振ってただけだけど」


 俺の質問にタツタが飄々と流した。

 俺は再びその光景へと視線を戻す。そこには――……。



 ……〝つらら〟と〝焔〟が雪原に倒れていた。



 二人共意識は無く、冷たい雪原に横たわっているのにも拘わらず、起きる様子は無かった。


 「……対戦カードの交代は認めない」


 タツタが小さく呟く。


 「だっけ?」


 ……タツタが極悪な笑みを浮かべた。


 「次の試合とその次の試合、この場合どーなるのかなー?」

 「……チッ」


 ……なんて嫌らしい笑い方なんだ。

 そう、タツタの狙いは最初からこれだったのだ。

 ギルドとカノンが先に数を減らし、三番手としてタツタが試合を始める。

 そして、試合開始早々に〝特異能力〟で周囲を闇で呑み込み、〝夜王の眼〟とかいう暗闇でも自由に動き回れる〝目〟で〝つらら〟・〝焔〟、あわよくば俺を撃破しようとした。

 結果、非戦闘要員であるドロシーやフレイを不戦勝にする準備が整ったのだ。

 しかも、抜け目無いことに試合直前に対戦カードの交代の禁止を確認することによって、俺達のメンバーチェンジを封じたのだ。


 「……そうだな」


 しかし、俺もそう簡単には引き下がらない。


 「確かにこのままあいつらが目を覚まさなければお前ら全員合格だよ」


 俺は〝特異能力〟――〝ヴァルキリーセン〟を発動した。


 「お前が俺を倒せれば、だがな」


 俺の〝戦闘反射〟は相手のあらゆる殺意・敵意に対して、反射的に防御・攻撃をする能力である。この力でさっきの夜襲を回避したのだ。


 「あいつらが目を覚ますまで時間を稼がせてもらうぜ」


 「 それは間に合わない 」


 ……俺の言葉にタツタが即答した。



  特  異  能  力


  臨  界  突  破 



 ……タツタのプレッシャーが跳ね上がる。


 吹き出す黒い魔力。


 それはタツタを中心に渦巻く。




  闇  黒  の  覇  者




 「 一撃で終わらせる、から 」



 ……タツタがそう宣言し、不敵に笑んだ。


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