第63話 『 オペレーション・ブラック 』
「 タツタくん、〝刃〟、前へ……♪ 」
……クルツェの合図で俺と〝刃〟が前に出た。
「頑張ってください、タツタさん」
「ファイトです」
「頑張ってね、タツタくん」
「御健闘を祈ります」
仲間からの声援が頼もしい限りであった。
「おう、任せろ」
仲間からの声援を背に、俺は闘いの舞台に立った。
「一つ確認していいか」
「おう、何でも訊けよ」
……〝刃〟は意外にも親しみのある奴だった。
「対戦カードの変更ってまだ間に合うのか?」
「……?」
「例えば、今から俺とフレイが入れ替わるとか、フレイとドロシーの対戦カードを入れ替えるのとか」
「何でそんな面倒なことをするんだ?」
……俺の申し出に〝刃〟が首を傾げる。
「いや、大したことじゃないよ。ただドロシーのお腹の調子がよくないみたいなんだ」
「アタターーーッ! お腹イタターーーッ!」
俺の言葉と同時にドロシーがお腹を押さえて痛みを訴える。
「……えっ? マジで! さっきまで大丈夫そうだったのに!」
「マジです! マジです! 生まれそうです!」
「出産!?」
ドロシーの演技に〝刃〟が衝撃を受けた。
「……嘘くせぇ」
……当然ながら〝刃〟が疑いの眼差しを向ける。
「だから頼むよ、対戦カードを交換したいんだ」
「この嘘臭さでよく交渉しようと思えるな、お前ら」
〝刃〟が呆れて溜め息を吐いた。
「いいんですか、クルツェさん」
〝刃〟がクルツェの方を向いて確認する。
「君が決めるッスよ、今回の試験のルールは君達に任せているッス♪」
しかし、クルツェはあくまでも傍観者でいるつもりようである。
「わかりました」
〝刃〟がクルツェに恭しく頭を下げた。
「てなわけでだ!」
〝刃〟が俺の方を向き直って仕切り直した。
「対戦カードの交代は認めない、お前ら何か企んでいるみたいだしな!」
「……ケチッ(ぼそっ)」
「聞こえてんぞ、ゴラァ……!」
……コイツ、からかい甲斐があるなー。
「しゃあねーな、とにかく目の前の敵を倒すか」
「おっ、聞き分けがいいじゃねーか」
俺は〝SOC〟を納刀したまま構えて、〝刃〟は黒い刃を抜刀して構えた。
「覚悟はいいのか?」
「てめェがな」
お互いに戦闘態勢に入る。
「お互いにやる気満々ッスね♪」
クルツェが楽しげに笑った。
「それじゃあ、入族試験第3回戦」
特 異 能 力 、 解 放 。
「 開始……♪ 」
極 黒 の
侵 略 者
――俺から半径100メートルが闇に呑み込まれた。
『……!!?』
……一同が騒然とした。
――開眼……!
しかし、俺はその隙を見逃さない。
夜 王 の 眼
――途端に視界が鮮明になる。
……さてと、作戦――開始だ。