第62話 『 〝重覇〟、発動! 』
「 出番だ、〝重覇〟 」
――カノンが〝重覇〟の銃口を〝風摩〟へ向ける。
「……」
「……」
カノンは照準を定め、〝風摩〟が刃を構えた。
「さっさと来い」
「言われなくて」
先に動いたのは――カノンであった。
「 も 」
――計三発、紫色の弾丸が〝風摩〟目掛けて撃ち出された。
「……威力は無さそうだな、スピードも〝雷羽〟よりも遅い」
〝風摩〟は風を展開せずに、生身のスピードで弾丸を回避する。
「だからといって、わざわざ〝風〟で受けるリスクを取る必要も無いな」
……〝風摩〟は慎重な男だった。
「慎重だね」
しかし、カノンも引き下がらない。
「 だったら 」
――カノンが〝重覇〟を出したまま、〝雷羽〟をホルダーから抜き出した。
「 これならどうだ 」
――〝重覇〟から三発の弾丸が撃ち出された。
「……懲りないな」
〝風摩〟が軽い身のこなしで弾丸の射線から外れる。
「 かわしたと思った? 」
――間髪容れず、〝雷羽〟の銃口がチカチカッと煌めいた。
「 甘いね 」
――三発の〝雷鳴閃〟が〝重覇〟の弾丸を弾いた。
「跳弾……!?」
「正解♪」
〝雷鳴閃〟に弾かれることによって紫色の弾丸が軌道を変えた。その先は――……。
「――っ!」
……〝風摩〟だった。
「捉えたっ!」
当たる! これなら当たる筈だ!
「 惜しかったな 」
――紫色の弾丸と〝風摩〟の間に鎌鼬が走った。
しまった! 奴には風の防御壁があったんだ!
「 惜しかったね 」
……カノンが笑った。
「……!?」
……〝風摩〟が驚愕した。
何故なら――……。
――紫色の弾丸が風の防御壁を貫通したからだ。
……突き破ったのでは無い! 通り抜けたのだ!
紫色の弾丸は容赦なく〝風摩〟を土手っ腹と肩を貫いた。
「……なっ!?」
〝風摩〟は理解できなかった。勿論、俺も理解できていない。
「残念だったね、〝風摩〟さん」
カノンは静かに〝雷羽〟と〝重覇〟をホルダーに仕舞った。
「僕の〝重王弾〟はあらゆる魔力構成物質を貫通するんだ。だから、魔力によって産み出された君の風で〝重王弾〟を防ぐことはできないんだよ」
カノンは代わりに〝火音〟を抜き出した。
「そして、この〝重王弾〟は――……」
――ガクンッッッ……! 〝風摩〟が雪原に膝を着いた。
「貫いたものを重くするんだ」
カノンが〝火音〟の安全装置を解除した。
「籠めた魔力によるけど今回のは一発につきおよそ70キロ――三発で210キロ……とてもじゃないけど動き回れる重さじゃないよ」
――〝火音〟の銃口が〝風摩〟に向けられる。
「それじゃあ、質問だ」
カノンの指先が引き金に触れる。
「今のあなたに僕の〝破王砲〟を防ぐ術はあるの?」
「……」
カノンの質問に〝風摩〟が沈黙する。
しかし、〝風摩〟の決断は早かった。
「合格だ。君の入団を許可しよう」
「ありがとうございます♪」
カノンは〝火音〟の安全装置をかけ直し、ホルダーに収納した。
「あと、〝重王弾〟の効力は一分間だからもう動けると思うよ」
カノンの言葉通り、〝風摩〟に掛かる重力は解除されたのか〝風摩〟がすくっと立ち上がる。
「見事だった」
「どういたしまして♪」
〝風摩〟の称賛の言葉を背に、カノンは俺たちの下へと戻ってきた。
「……カノンの奴、すげェ強くなったな」
……まあ、何にしてもこれでギルドとカノン、二人の入族が確定した。
「さてと」
俺は〝SOC〟を鞘に納刀したまま、腰から外す。
「次は俺の番か」
……さて、作戦開始だ。