第54話 『 闇黒の覇者 』
〝特異能力〟 、 臨界突破 !
「 カノンを離せ 」
闇 黒 の 覇 者
「 殺すぞ 」
――斬撃一閃。カノンを拘束していた鎖が一刀両断された。
「……むっ?」
〝鎖威〟が予想外な一撃に首を傾げる。
「これは予想外だな」
〝鎖威〟が俺の方を見て、上から目線で俺を讃える。
「お前も俺の鎖を壊す力があるとはな」
……ジャラッ、巨大な錨付きの鎖が地面から飛び出した。
「少し、興味が湧いた」
――巨大な錨付きの鎖が俺目掛けて発射された。
「 ならば、これも受けてみろ 」
「 闇黒染占 」
黒 焔
――極黒に染まった〝SOC〟から真黒の炎が吹き出した。
「……っ!? 黒い炎!?」
〝鎖威〟が驚嘆した。
だがな、まだ驚くには早いぜ。
俺は〝SOC〟を振り抜いた。
「 消し飛べ 」
黒 龍 炎 波
――轟ッッッッッッッッッ……! 黒い炎が〝錨鎖〟を呑み込み、灰も残らず消し飛ばした。
「……馬鹿な」
〝鎖威〟が信じられないと言わんばかりに目を見開いた。
何故なら、〝鎖威〟の〝錨鎖〟が跡形も無く消し飛んでしまったからだ。
「……〝鎖威〟」
俺はそんな〝鎖威〟を見て笑った。
「 お前、弱いな 」
「――」
――殺ッッッッッッッッッッッッ……!
「 頭に乗るな、ルーキー風情が 」
……〝鎖威〟がキレた。
千 年 鎖 刃
「……受けてみろ、カラアゲタツタ……!」
……地面から幾千の錨付きの鎖が飛び出した。
「 これが 」
……鎖が天を覆う。
「 千を越える、殺戮の鎖だ 」
――幾千の錨付きの鎖が俺目掛けて降り注いだ。
「 ああ 」
……俺はただ〝SOC〟を振り上げ、
「 その程度か 」
――そして、振り下ろした。
――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!
……幾千の鎖が全て漆黒の炎に焼き尽くされ、消し飛んだ。
「そんな有り得な――……」
――斬ッッッッッッ……! 〝鎖威〟の右腕が消し飛んだ。
「 まずは右腕 」
……ああ、何かどうでもよくなってきたな。
「 次は殺すぞ 」
……俺は〝鎖威〟を殺せばいいんだ。
それ以上の真実なんて在りはしない。
「 殺す 」
……殺す。
「 殺す 」
……殺す。
「 殺す! 」
――俺は刃先を爆発させ、その反動で一気に〝鎖威〟との間合いを詰めた。
「 〝錨鎖〟……! 」
……〝鎖威〟が巨大な錨付きの鎖を射ち出した。
「 邪魔 」
――俺は素手で〝錨鎖〟を受け止めた。
「 だ 」
――そして、〝鎖威〟に投げ返した。
「馬鹿な……!」
〝鎖威〟は咄嗟に跳躍して、〝錨鎖〟を回避した。
地面に〝錨鎖〟が突き刺さる。
〝鎖威〟が前方へ視線を走らせる。
しかし、当然ながらそこに俺の姿は無い。
「 ひはっ 」
――跳躍した〝鎖威〟の背後に俺がいるからだ。
「 隙あり 」
――殴ッッッッッッ……! 俺の会心の拳撃が〝鎖威〟の土手っ腹に炸裂した。
「――ッッッッッッ!」
〝鎖威〟がゴムボールのように吹っ飛ばされる。
そして、木々を薙ぎ倒し、岩壁に叩きつけられた。
「かはっ……!」
岩壁は砕け、〝鎖威〟が吐血した。
ま だ だ 。
――俺は〝鎖威〟の目の前にいた。
右腕を切り落とした、思いっきりぶん殴ってやった。だが――まだ足りない。
「……お前はギルドとカノンを殺そうとした」
……ああ、何でこんなに冷たいんだ。
「……〝白絵〟はニアたちを殺した」
こんなに怒っているのに、
こんなに殺したいのに、
俺の身体を流れる血液は酷く冷たかった。
「 だから 」
……俺は狂笑った。
「 俺に殺されたって文句無いよな? 」
千 撃 ・ 闇 黒 拳
――ドドドドドッッッッッッッッッ……! 千を越える拳撃が〝鎖威〟に炸裂した。
「……思っていたよりも、しぶといな」
「……」
俺は力無く項垂れる〝鎖威〟を見下ろしながら呟いた。
「……少しは何か言ったらどうだ、鎖野郎」
「 勝ったと、思ったか? 」
……〝鎖威〟が笑った。
「認めよう、お前は確かに強い」
〝鎖威〟がある魔法を開放した。
「だが、生き残るのは〝白絵〟様、ただ一人だ」
鎖 龍 空 激
――俺の頭上目掛けて超・巨大な錨付きの鎖が落ちてきた。
……確かにでかかった。その巨大さは今までの〝錨鎖〟とは比にはならないだろう。
「……その身に刻め」
〝鎖威〟が不敵に笑った。
「 これが俺の取って置きだ 」
――ゴッッッッッッッッッッッッ……! 〝鎖龍空激〟が俺に炸裂した。
「……」
……〝鎖威〟が粉塵の外から笑っていた。
「……やったのか?」
――斬撃一閃。
……同時、俺に炸裂した筈の〝鎖龍空激〟が一刀両断された。
「 言ったろ 」
……〝鎖龍空激〟が崩れ落ちた。
「 お前は弱いってな 」
……俺は怪我一つ負っていなかった。
「……馬鹿な」
〝鎖威〟が絶望に膝を着く。
「諦めたか……英断だな」
俺はそんな〝鎖威〟に歩み寄る。
「お前じゃ俺には勝てない」
〝鎖威〟は逃げる気力すら残っていない。
「俺はお前を許す気は無い」
俺と〝鎖威〟が静かに対峙した。
「それって、お前が死ぬしかないだろ?」
俺は〝SOC〟を静かに振り上げた。
「 〝白絵〟様 」
〝鎖威〟が〝白絵〟の方を見た。
「 私は貴方の下で戦えて幸せでした…… 」
……そして、満足げに笑った。
――斬ッッッ……。〝鎖威〟が断頭された。
……血飛沫が噴き出す。
……〝鎖威〟の身体が地に平伏す。
「 さようなら、〝鎖威〟 」
……俺は静かに笑った。




