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  第51話 『 VS〝鎖威〟 』


 「 Lv.55001……!? 」



 ……俺は〝白絵〟の頭上を見て、絶望した。


 ――ハッタリじゃない……!?


 〝白絵〟の頭上に浮かぶそれは俺の〝極黒の支配者〟で作ったハッタリのレベルとは違うものである。


 ……絶対に勝てない、そう思ってしまった。


 一瞬でも、敗北を認めたらもう終わりだった。

 今の俺に戦う覇気は無かった。

 とっくに束縛の呪いは解けているのにもかかわらず、俺はその場から動くことができなかった。


 ――ごめん、ニア、レイ・リン。


 ……俺は心中でアクアライン一家に謝った。

 どうやら、今の俺では敵討ちを取れそうになかった。


 「……許さない」


 ……声は隣から聴こえた。

 俺は声のする方を向いた。


 「〝白絵〟……!」


 ――ギルドが泣いていた。


 その目には深い憎悪と殺意が入り雑じっていた。

 ギルドが〝太陽の杖〟を強く握る。


 「やめろっ、ギルド……!」


 俺は咄嗟にギルドの腕を掴んで制止した。


 「離してくださいっ」

 「駄目だ、〝白絵〟とは戦うな!」


 〝白絵〟は強すぎる。今の俺たちでは勝率は――0だ。

 そんな勝率でギルドを戦わせるわけにはいかなかった。


 「離してください」

 「駄目だ、死ぬぞ!」


 しかし、ギルドは簡単に納得してはくれない。ギルドは俺よりアクアライン一家と一緒にいる時間が長かったのだ、簡単には割り切れないであろう。

 ギルドの気持ちはわかる。俺だって〝白絵〟を殺したいぐらいに憎いんだ。

 それでも、〝白絵〟と戦っては駄目なんだ。

 ……ギルドは俺にとってはかけがえのない大切な仲間だ。そんな仲間を俺は見殺しにはできなかった。


 「離してください……!」

 「駄目だっ!」


 俺とギルド、二人とも自分の意見を譲らなかった。


 「 止める必要は無いよ、タツタ 」


 ……そう言ったのは〝白絵〟だった。


 「どの道、お前たちは僕の部下である〝鎖威〟と戦うことになるんだから」


 〝白絵〟が喋り終わるのと同時に、〝鎖威〟が前に出てきた。


 「コイツは僕が名前を覚えている部下の中で最も弱い戦士だ」


 ……風が吹いた。


 「でも、お前たちよりは強い筈だよ」


 ……漆黒のマントが風に煽れた。


 「僕はもう眠くなったから城に戻るけど、お前達は〝鎖威〟と戦ってもらうよ」

 「止まれっ! 〝白絵〟……!」


 ギルドが〝白絵〟に吼えた。


 「悪いけどお前の復讐には興味は無いよ」

 「……黙……れ」


 ――ギルドが俺の腕を振り払い、〝白絵〟に飛び掛かった。


 「黙れェェェェェェェェェ……!」


 「 何度も言わせるなよ 」


 ――ズドンッ! 巨大な錨付きの鎖が二人の間に割り込んだ。


 「お前たちの相手は〝鎖威〟だ」


 続けて鎖の鞭が触手のようにギルドに襲い掛かった。


 「……っ!」


 ギルドは軽い身のこなしで、鎖の鞭を回避した。


 「 甘いな 」


 ――ガキンッ、地面から出てきた鎖がギルドの足首に絡み付き、ロックされた。



 「 〝グラウンドロックチェーン〟 」



 ……捕まった。


 「まずは一人」


 大量の鎖が身動きの取れないギルドに襲い掛かった。


 「 馬鹿っ、一人で突っ走るな! 」


 ――俺は鎖とギルドの間に割り込み、迫り来る鎖を〝SOC〟で全て叩き落とした。


 ……ジイィン。クソ、手が痺れやがる。鎖の一つ一つがなんて威力なんだ。


 「……すみません、タツタさん」

 「謝ってる時間はねェぞ」


 気を落とすギルド……良かった、少しは冷静になったようだ。

 俺は〝鎖威〟を真っ直ぐに見つめた。


 ……強いな。


 〝鎖威〟は間違いなく格上の部類である。

 しかし、今回は三対一。勝機はある筈だ。

 ……俺とギルドがいる。そして、最後の一人、カノンが――上空から〝鎖威〟に狙いを定めていた。


 「 気づいているぞ 」


 無論、これに気づけない〝鎖威〟ではない。


     ハンガー     チェーン


 ――巨大な錨付きの鎖が地面から八本、カノンに襲い掛かる。


 「 出力最大 」


 カノンも〝火音〟を構え――引き金を引く。



    破    王    砲



 ――轟ッッッッッッッッッ……! 〝錨鎖〟と〝破王砲〟が衝突し、森中に轟音と閃光を撒き散らした。


 「ふん、相殺したか」


 …… 格下に自分の技を相殺されたことが不服なのか、〝鎖威〟が舌打ちをした。

 だがな、俺はそんな〝鎖威〟に俺は言ってやりたいよ。


 ――〝火龍装填・紅蓮斬華〟モードの俺は〝鎖威〟の目の前にいた。


 ……上ばかり見ていると足下掬われれぞ、てな。


 「……っ!?」


 〝鎖威〟が咄嗟に鎖の防御壁を造り出そうとする。


 「おせェよ……!」


 ――真紅の花弁の羽根が一つ粉々に砕け散る。





      灼      煌





 ――直撃! 〝灼煌〟が〝鎖威〟の防御壁を突き破って炸裂した。


 〝鎖威〟は紙屑のように吹っ飛ばされ、岩壁に叩きつけられた。


 「……やったか?」


 「 まだまだ 」


 ……〝白絵〟が笑った。




 ――ドッッッッッッ……! 地面から小さな錨付きの鎖が俺目掛けて飛び出した。




 「 !? 」


 ……間に合うか?


 ――俺は辛うじて身を捩って、錨付きの鎖を回避した。


 ……間に合った!


 「 いや、駄目だよそれじゃあ 」


 ……〝白絵〟の視線は俺の背後に向いていた。


 「 まずは一人 」


 ――〝鎖威〟は俺の背後にいた。


 「 あっ 」


 ……しくじった。


 「 死ね 」


 ……これは、かわしきれない。


 〝鎖威〟の右腕が俺の心臓目掛けて伸びる。


 「 タツタさん……! 」


 「 !? 」


 ……最悪だ。


 ――ギルドが俺を突き飛ばした。


 ……世界がスローモーションになった。


 ――俺が今さっきいた場所にギルドがいた。


 ――〝鎖威〟の右腕がギルドの土手っ腹へと伸びる。


 ――カノンとドロシーが何か叫びながら駆け寄るが間に合わない。


 ――〝白絵〟が笑う。


 「 ギルドォォォォォォォォ……! 」


 ……俺は手を伸ばす。


 ……ああ、届かない。


 ……どうして、俺の腕はこんなにも短いんだろう。


 ……どうして、俺はこんなにも弱いんだろう。


 ……どうして、大切なもの一つ護れないんだろう。


 「ギル――……!」











 ――ドッッッッッッッッッ……! 〝鎖威〟の右手がギルドの土手っ腹を貫いた。



 「 ギルドォォォォォォォォッッッ……! 」



 ……俺の叫び声が暗い森に響き渡った。


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