第47話 『 絶対予告 』
「 〝白絵〟……! 」
……最強の魔導師――〝白絵〟が俺たちの前に現れた。
「久し振りだね、タツタ」
動揺する俺たちとは反対に〝白絵〟は飄々とした態度を崩さなかった。
「……どうしてこんなところに?」
「別に大した用は無いさ――……」
……そこで〝白絵〟は一度言葉を切った。何故?
「 殺してやる……! 」
――鬼のような形相をしたカノンが〝火音〟を手に、〝白絵〟の背後にいたからだ。
「 〝白絵〟! 」
「 〝鎖威〟 」
……〝白絵〟は依然として静止している――代わりに、全身鎖に巻かれた男が二人の間に割り込んだ。
「 護れ 」
「 消し飛べ 」
――カノンが引き金を引いた。
――〝白絵〟と〝鎖威〟を大量の鎖が城壁のように囲んだ。
破 王 砲
鎖 陣 障 壁
――眩い光と轟音が森中に響き渡った。
……その衝撃は周囲を一帯に暴風を撒き散らし、土煙を巻き上げる。
「……すげェ」
俺も何度かカノンの〝破王砲〟を受けたことがあるが、今の〝破王砲〟は以前のそれとは別格の威力であった。
……一体、この一ヶ月でどれだけ強くなったんだよ。
俺は味方ながら嫉妬した。
「……」
土煙はやがて風に流され、
景色は鮮明になる。
「……マジかよ」
しかし、それ以上に驚くことに、〝白絵〟と〝鎖威〟を護る鎖の壁が依然として、そこにあり続けていた。
「……その程度か?」
鎖は形を崩し、更に収縮し、〝鎖威〟の身体に収納された。
……何て防御力だ。あの特大〝破王砲〟でも破れないとはな。
――格上。
……この世界に来て、何度も体験した感覚だ。悔しいが、俺やカノンよりもコイツは格上だ。
そして、その〝鎖威〟よりも〝白絵〟は――遥かに強い。
……遥かに強い? 違うな、最早〝白絵〟の強さは何かと比べるようなものではない。
――神域。
……認めたくはないが〝白絵〟は間違いなくその領域に達していた。
しかし、そんな神様みたいな奴が一体、俺達に何の用があるというのだろうか?
「……カノン、退け」
俺は一先ずカノンを止めた。
「でも、あいつは父さんや母さ――……」
「 退け 」
俺は静かにカノンを制止した。
「頼むから死に急ぐような真似だけはしないでくれ」
「……タツタくん」
……カノンが落ち着きを取り戻す。
「ごめん、タツタくん。少し冷静じゃなかったよ」
カノンが〝火音〟をホルダーに格納した。
……よし、これでゆっくりと話せそうだな。
「それで〝白絵〟」
「何だい、タツタ」
俺は〝白絵〟を真っ直ぐに睨み付けて、本題に入る。
「用件は何だ? お前は一体、何をしに俺たちの前に現れたんだ?」
「ああ、そういえば何も言ってなかったね」
俺の問いに〝白絵〟はいつも通りの飄々とした態度で返した。
「僕がお前達の前に現れたのは――……」
〝白絵〟が俺から視線を滑らせた。
「 殺しに来たんだよ 」
その視線の先は――……。
「……えっ?」
「……ん?」
〝白絵〟と目線があったその二人は困惑する。
そして、〝白絵〟は残酷な未来を告げた。
「 レイ=アクアライン、リン=アクアライン 」
……以前、〝おにぐも〟が言っていた。
――全ての決定権は強者にこそあるのだ。
その理屈で言うならば、最早、最強の魔導師である〝白絵〟の言葉は――……。
――絶対予告。
……そうなるんじゃなかろうか。




