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  第44話 『 開戦! 料理対決!? 』



 「……どうしてこうなった」


 ……俺はギルドの胸の谷間よりも深い溜め息を吐いた。

 俺は溜め息の原因に目を向ける。


  サウ り ザン く  の ブレイズ !


 ――ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッ……!


 ……ギルドが包丁でキャベツを千切りしていた。


 「 か ら の 」


 ……ギルドは再び包丁を握り直した。


  サウ り ザン く  の ブレイズ !


 ――ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッ……!


 ……どんだけキャベツを千切りしてんだよ!


 「えっと、ドロシーはー――……!?」


 一方、ドロシーはというと――……。


   スーパー   毒   味   !


 ……野苺のタルトを食べていた。


 「 お前が食うのかよ!? 」


 俺はショックで頭を地面に叩きつけた。


 「いえ、これは毒味です」

 「皿、空なんだけど!」

 「……はっ!? あまりの出来映えについうっかり!?」


 ……それから、ドロシーは二度三度と完成品を平らげたのであった。


 「……頼むから普通にやってくれ」


 ……無論、俺の切実な願いは天に届くことはなかった。


 ……………………。

 …………。

 ……。


 「「 できました! 」」


 ……ギルドとドロシーが同時に俺の前に料理を差し出した。


 「……おっ、やっとできたか」


 偉く時間が掛かっていたがまあいいや、一先ずギルドの方を食べてみよう。

 そこには――……。


 『 ゲペャアッ! 』


 ……銀の更に盛り付けられたヘドロモンスターがいた。

 紫色とも緑色とも言えない色々な色の混ざり合ったようなグロテスクな色に、不細工な顔に異臭を放つそいつは意外に高い鳴き声を上げた。


 「キャベツどこ行った!?」


 ……最早、キャベツの千切りの面影も残っていなかった。


 「あのー、ギルドさん。料理はいつできるのでしょうか?」


 俺は恐る恐るギルドに訊ねた。


 「あるじゃないですか、タツタさんの目の前に」


 ……どうやらこのグロテスクなヘドロモンスターが料理だったようである。


 「ほら☆」


 ほら☆ じゃねェよ……! 笑顔で殺人兵器食わせようと勧めてくんな!


 「臭いや見た目とは裏腹に極上の味なんですよ」


 ……もう少し努力して、見た目や臭いはどうにもならなかったの?


 『 ピギャァッ! 』


 ……オイオイ、これまだ生きてるんだけど……! 意外にソプラノボイスで鳴いてるんだけど……!


 「さあ、たーんと召し上がれ☆」


 「食えるかァ……!」


 ――俺は勢い余ってヘドロモンスターの盛り付けた皿をギルドの顔面に叩きつけた。


 「……」

 「……」


 ……二人の間に沈黙が流れた。


 「 ひゅ 」

 「……ひゅ?」


 ギルドが身体がグラァと傾いた。


 「 ひゅーばたん☆ 」


 ……ギルドが倒れた。


 「……」

 「……」

 「……や」


 やっべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……!!!


 何このリーサルウェポン! 一種の化学兵器なんですけどーーー!

 俺は気絶したギルドに駆け寄った……息はあった、命の別状は無さそうであった。


 「やりますね、ギルド様」


 ……何故か、ドロシーが戦慄していた。


 「あまりの美味しさに昇天してしまわれるなんて」


 ……あっ、そういう解釈するんだ。


 「では、今度は私の料理をお召し上がり下さい♡」


 今度はドロシーが俺の前に料理を持ってきた。



 ――真っ赤なカレーライスを……!



 「野苺のタルトどこ行った!?」


 最早、タルトの面影も無かった。てか、カレーライスそのものである。


 「申し訳ございません、準備不足で野苺を切らしてしまいまして、急遽、カレーライスになってしまいました」


 ……お前が食ったからだろ! 準備不足関係ねェだろ!


 「てか、赤っ!? 真っ赤なんだけど!?」

 「はい♡ 世にも珍しいグレート唐辛子を使わせて頂きましたので♡」

 「……で、どのくらい辛いの?」

 「〝白絵〟様は大の辛党なので大丈夫なのですが、普通の方ならー」


 ……ニコッ、ドロシーが朗らかに笑った。


 「 火を吹いて死にます♡ 」


 「 殺す気かァァァァァァァァァッ!!! 」


 ――俺はドロシーの顔面にカレーライスを叩きつけた。


 「……」

 「……」


 ……二人の間に沈黙が流れた。


 「 ひ 」

 「……ひ?」


 ドロシーが急に足踏みを始めた。


 「 ヒィィィィィィヤァァァァァァァァァァァッッッ!!! 」


 ……そして、火を吹き出し、その場に倒れた。


 「……」


 俺は倒れたドロシーに駆け寄った……うん、命に別状は無さそうだ。


 「……うーん」


 たった一人で立ち尽くした俺は腕を組んで、首を傾げた。


 「何だこれ?」


 それ以外にこの状況を言い表す言葉を、俺は思いつかなかった。



 ……かくして、ギルドとドロシーによる料理対決はグダグダな感じで終わりを告げた。あと、俺の独断で料理係はドロシーに任せることにした――ヘドロモンスターより激辛カレーライスの方が幾分かましだったからだ。


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