エピローグ 『 』
――西暦2031年8月13日。
照りつける太陽。
白い入道雲に青い空。
今年も紛れもない夏が訪れていた。
「……また来年の夏に来るよ、父さん」
お盆、俺は有給を取り父さんの墓参りに来ていた。
「兄さん、皆でお昼ご飯を食べようって母さんが」
「おう、すぐ行くよ」
俺は父さんの墓を一瞥し、龍二の方へと向かう。
「ごめん、父さんとまだ話してた?」
「いや、問題ないよ。どうせ、蒼太が腹減ったとか愚図ってるんだろ」
「流石は先生、何でもお見通しという訳だ♪」
「気が早ェよ、小さな賞で受賞しただけだ」
茶化してくる龍二の頭にチョップして、俺は蒼太の方へと歩み寄る。
「蒼太は何か食べたい物はあるか?」
「うーん、かき氷! メロン味のやつ!」
「……主食にしてくれ」
まあ、確かにこの暑さだ、かき氷が食べたい気持ちもあった。
「じゃあ、喫茶店で何か食べてからかき氷を食べよう」
「やったーっ!」
俺と蒼太は手を繋いで、母さんやギルドの場所まで歩いていく。
「かきごーりー、かきごーりー♪ カキカキ、ゴリゴリ、かきごーりー♪」
「何だその歌は?」
「かき氷の歌、今考えた」
「へえ、じゃあ、一緒に歌うか」
「うん!」
かきごーりー、かきごーりー
カキカキ
ゴリゴリ
かきごーりー
俺と蒼太は手を繋ぎながらヘンテコな歌を歌った。
正直、何が面白いのかはわからないが、一緒に歌うだけで蒼太はゲラゲラと笑った。
俺もそんな蒼太を見ているだけで、自然と笑えてきた。
「タツタさーん、蒼太くーん」
遠くでギルドが手を振りながら、俺達の名前を呼ぶ。
……それは35回目の夏の一頁であった。
……………………。
…………。
……。
「 タツタさーん 」
……ギルドの声が聞こえた。
「……ん? もう喫茶店に着いたのか?」
俺は眠い目を擦りながら、気の抜けた声で呟く。
「何を寝惚けてるんですか、もう〝シュッキン〟の時間ですよ!」
「……出勤って、今日はお盆で有給取ったから大丈夫だって」
「今日は8月12日! お盆は明日ですよ!」
「……………………えっ?」
俺は間抜けな声を漏らし、カレンダーの方を見た。
――西暦2022年8月12日。
「ああァーーーーーーーーーーッ!」
俺はベッドから飛び降り、急いで着替える。
「ちょっと、レディーの前で脱がないでください!」
「今はそれ所じゃないんだよ!」
朝から蝉にも負けない騒がしさの空上邸であった。
「タツタさん、お弁当忘れてますよ!」
「すまない! じゃあ、行ってくるから!」
寝癖も直さず慌ただしく家を飛び出す俺。
そんな俺を見送るギルド。
(……〝神速〟が使えたらなぁ)
自転車を修理に出している為、尚更そう思ってしまう。
――この世界には魔法も〝特異能力〟も無い。
だから、寝坊したら全力疾走しなければならないし、遅刻したら全力で謝らなければならなかった。
不便だと思うときもあるし、あの頃が恋しくなるときもあった。
――それでも後悔は無かった。
自分で選んで、自分で歩いた道に後悔なんてある筈がなかった。
(……それにここも何だかんだいって楽しいしな)
魔法や龍や精霊がいてもいなくても、明日がわからないのは一緒だった。
そう言う意味では俺は今も冒険をしていた。
必ず叶うとも限らない夢を叶える為に毎日戦っていた。
五年先、十年先、の未来なんてわからない。
だけど、毎日走っているし、時々休んだりもしている。
その結果は今日、明日で出るものではない――それでもいつかは、必ずその日がやって来る。
幸か?
不幸か?
……その〝未来〟は誰にも見えない。しかし、いつかは訪れるのだ。
『 空龍の剣~持たざる者の叛逆譚~ 』の御拝読、誠にありがとうございました。
当作品に付いては本日を持って完結とさせていただきます。
当初、四〇〇話・一〇〇万文字ぐらいで終わらせる予定でしたので少々長くなってしまいました。
『 空龍の剣 』は初の長編作品となっており、私の中でも思い入れの深い作品となっております。ですので、エピローグ執筆直後は軽いロス状態になったものです(苦笑)
又、連載期間、度々の休載や加筆修正等に付きましては深く謝罪させていただきます……本当は作品に合わせて夏に完結させる予定でした。
遅筆だけならまだしも、〝何故か書けなくなる病〟も患い、五年掛けて一〇〇万文字強しか投稿できませんでした。その件より反省し、次回からはしっかりと書き溜めてから連載する所存であります。
差し出がましいかもしれませんが、感想や評価・レビュー等戴ければとても励みになります。たぶんその辺の床に転がるぐらい喜びます(笑)
最後に本作を最後まで御拝読くださったことを改めて感謝いたします。
……あっ、最後に次回作の宣伝をさせていただきます!
『 廻るセカイの異界忍帖~とある忍者の異世界漂流譚~ 』
https://ncode.syosetu.com/n5462hj/
――時は戦国、永録11年。
……火賀城、炎上。
逃亡する火賀家の姫――火賀愛紀姫とその従者――伊墨甲平がたどり着いたのは、異界の強国――ペルセウス王国。
そこで出逢ったのは愛紀姫と瓜二つの容姿をした王女――ペルシャ=ペルセウスであった。
己が幸福を対価に行使する異能――〝奇跡〟。
次代の神を決する戦い――〝聖戦〟。
次代の神を決する戦いに巻き込まれてしまう甲平と愛紀姫。
はたして、甲平は愛紀姫を、大切な者達を護り抜くことは出来るのか――……。
……という感じのストーリーです。
『 空龍の剣 』で培った経験値を元に書いており、エンターテイメントとしてはパワーアップしていると思いますので、是非御拝読ください!
投稿は本日、七時頃から既に投稿していますのでどうかお見逃しなく!
ではでは~~~っ!




