第442話 『 神域突破‐stage.Ⅳ 』
「……」
「……」
……俺とブラドールは無言で睨み合う。
「来ないのか?」
「……」
ブラドールが挑発するも俺はすぐには動かなかった。
(……神の力がどれ程のものかわからねェ以上、下手には突っ込めねェ)
迂闊に突っ込んで即死となれば、それこそゲームオーバーであった。
「……埒が明かないな、ならばこちらから行こうか」
――俺と龍二の頭上から無数の光が落ちてくる。
「先に言っておくが俺の力は〝白絵〟の上位互換だ」
「……隕石、か」
空から無数の光が落ちてくる。
「この世界は俺が創った世界だ。あらゆる法則、あらゆる現象も俺の掌の上にある」
――故に、
「宇宙にある無数の浮遊物の軌道をねじ曲げることなど造作もない」
無数の隕石が暗黒大陸に降り注ぐ。
「兄さん、下がって!」
〝特異能力〟、解放!
「 〝消滅〟 」
――全ての隕石が消滅した。
……龍二が消滅の魔法を創造して、隕石を消し去ったのだ。
「防御は僕がする! 兄さんは攻めろっ!」
「頼もしいぜ! 兄弟!」
防御は龍二がしてくれるなら俺は攻めるだけだ。
「 〝黒王〟 」
黒 飛 那
――黒い衝撃波がブラドールに放たれる。
しかし、ブラドールは逃げも隠れもしない。
「さっきも言ったろ――俺の力は〝白絵〟の上位互換だとな」
消 滅
――〝黒王・黒飛那〟が一瞬にして霧散した。
「――っ!」
俺の最大火力がこんなにも簡単に消された!
「兄さん、ブラドールの力は〝全知全能〟――奴には火力は無意味だ」
「正解だ」
――今度は雷が落ちてくる。
「――っ! 〝消滅〟!」
龍二が雷に消滅の魔法をぶつける。
が
「……消え……ない」
……雷は消えず、俺達に襲い掛かる。
「龍二っ!」
俺は龍二を抱えて雷を回避する。
「今度は〝消滅〟では消えない雷を創造したまでだ」
「……っ!」
俺と龍二は一旦ブラドールから距離をとった。
「――かはっ」
「龍二っ!」
龍二が吐血する。
「……すまない、兄さん。兄さんとの戦闘のダメージが残っているみたいだ」
「〝white‐canvas〟で早く治せないのか」
「任せて、今するから」
ただでさえブラドールは反則級に強いのに、俺達は互いに満身創痍であった。
しかし、俺達には〝white‐canvas〟があるのだ。すぐにでも治療すればよかった。
「……あれ?」
「どうかしたのか?」
龍二が戸惑いの声を漏らす。
「white‐canvasが使えない?」
「何だとっ」
何故だ。さっきまで使えていたじゃないか。
「ああ、〝white‐canvas〟なら今封じさせといたよ、邪魔だったからな」
「……っ」
やられた、先手を打たれたか!
「……クソッ」
……やはり一筋縄にはいかない。
ブラドールには〝全知全能〟には弱点が無かった。
〝white‐canvas〟のように脳内キャンバスを経由する必要がない為、〝極黒の侵略者〟による干渉が出来なかった。
又、ブラドールにはレベルの概念も無く、そもそも〝特異能力〟では無い為、〝精霊王〟の魔術・〝特異能力〟封殺も通用しなかった。
……現状、奴の〝全知全能〟を破れる人間はいないであろう。
――俺を除いては……。
「……策はあるのかい、兄さん」
「あるよ」
俺は龍二の前に出て、ブラドールと対峙する。
「ブラドール! お前の〝全知全能〟は俺が攻略してやる……!」
「……」
ブラドールは無言で俺を見下ろす。
「無駄口はいい、結果で語れよ」
必 殺 必 中 の 矢
ブラドールが弓を構え、弦を張る。
「忠告だ、避けた方がいいぞ」
「兄さん! その矢は危険だ!」
ブラドールが矢を射る。
「 〝魔法障壁〟ッ! 」
龍二が矢の進路に魔法障壁を展開する。
「無駄だ、〝必殺必中の矢〟は止まらない。そして――……」
矢が魔法障壁を突き破り、俺の心臓目掛けて飛来する。
「射抜いた人間を確実に死に至らしめる!」
――俺は笑った。
「 〝特異能力〟 」
矢は空を裂き、迷い無く突き進む。
しかし、俺は逃げも隠れもしない。
神 域 突 破
……〝必殺必中の矢〟は地面に突き刺さった。




