第440話 『 神への反逆 』
「……僕の……敗けだ」
……龍二はその場に座り込み、敗北を認めた。
「案外あっさり認めてくれたな」
「兄さんの往生際の悪さは僕が一番知っている。これ以上引き留めても無駄なこともね」
「流石は俺の弟だ」
全てお見通しという訳だ。
「……兄さん、本当に強くなったね」
「かもな」
俺達は荒れ果てた大地を見下ろして呟く。
「……まっ、僕のお膳立てがあってのものだけどね」
「まったくだ」
俺はずっと龍二の掌の上で転がされていて、最後の最後だけ龍二の予想を覆しただけに過ぎなかった。
「ありがとな、お前がいなかったら俺はここまで強くなれなかったし、生き残れなかったよ」
「感謝の言葉は全部終わってからにしてくれないか」
――全部。
……それは最後の戦いが終わって、初めて全部であった。
「……勝つよ、兄さん」
「ああ……って、お前も来んの?」
「まあね」
勝てよではなく勝つよ、それは頼むのではなく共に戦う意思表示であった。
「僕らは兄弟なんだ。全部押し付けてさよならなんて僕が許さないよ」
「……心強いよ」
魔王が味方に付いたのだ、それ以外の感想などある筈もなかった。
「……」
俺は立ち上がり、そして――空を見上げた。
「 見てるんだろ! ブラドール=ヴァン=リローテッド……! 」
……俺は空に吼える。
「この世界に〝白絵〟に勝てる奴は俺以外にはもういない! だが、俺は〝白絵〟を殺さない!」
……見えている筈だ、聞こえている筈だ。
「このままじゃ、お前の〝ゲーム〟は永遠に終わらねェ! だから、提案がある!」
……だから、聞こえているんなら!
「 俺とお前で勝負しろっ……! 」
――返事をしやがれ……!
「……」
「……」
……一瞬の静寂。
……それは突然で、何の前触れもなかった。
――俺達の前に荘厳な観音開きの扉が現れた。
「……そんな大声出さなくても聞こえるっての」
声は扉の向こう側から聞こえ、同時に扉はゆっくりと開かれる。
「久し振りだな、あの世以来って所か?」
白い肌。
白い髪。
白い瞳。
――異質。その男だけが世界から切り取られているような違和感あった。
「――タツタ」
……そう、俺は因果王――ブラドール=ヴァン=リローテッドと一年振りの再会を果たすのであった。




