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 第438話 『 兄弟対決、決着 』



 「――〝極・闇黒染占〟」


 ……風と共に黒い魔力が渦を巻く。


 「……〝白絵〟、さっさと本気を出した方がいいぜ」


 俺は地面が弾き飛ばす程の勢いで飛び出す。


 「無論、そのつもりだよ♪」


 〝白絵〟も〝光剣〟を片手に飛び出す。


 黒い刃が走る。

 光の刃が空を切る。



 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 二つの刃が交差し、その衝撃の余波が周囲を吹き飛ばした。



 「やるねっ」

 「お前もなっ」


 俺と〝白絵〟は鍔迫り合いを繰り返し、その度に衝撃波が周囲に吹き抜ける。


 ――ピシッ……。〝白絵〟の頬が僅かに裂けた。


 (――行ける! 剣なら俺の方が上



 ――トンッ……。〝白絵〟が半歩後ろへ跳んだ。



 「――」

 「――♪」


  次  の  瞬  間  。



 ――閃ッッッッッッッッッッッッッッッ……! 大地を貫いた。



 (――無予備動作ノータイムの大技! これは反応が遅れるな!)


 俺は辛うじて回避できたが、〝風読み〟が無ければ直撃していたであろう。


 (さて、考えろ! こっちには時間が無いんだ!)


 ウィンの体力が切れたら一貫の終わりだ。それまでに決着をつけなければならなかった。


 「…………攻めるか」


 ――正解。今の俺にはこれしかなかった。


 「行くぜ」



 ――俺は〝白絵〟の周りを縦横無尽に駆け回った。



 「……これは」

 「お前の想像通りだよっ!」



  超  ・  黒   棺



 ――計十六ヵ所から放たれた〝超・黒飛那〟が〝白絵〟に迫り来る。


 「 魔法障壁 」


 ……しかし、〝白絵〟は一歩も退かない。


 「 ×16 」


 全ての〝超・黒飛那〟の前に魔法障壁が展開される。



 ――相殺。〝超・黒飛那〟は一発も〝白絵〟へ届かなかった。



 「 まっ、それも囮だけどな 」



 ――俺は既に〝白絵〟の目の前にいた。



 「――っ!」


 ……俺は信じていたのだ。


 〝白絵〟が〝黒棺〟を相殺することを……。


 信じて、〝黒棺〟の中に飛び込んだのだ。


 「悪いな、〝白絵〟。こちとら玉砕覚悟で戦ってんだよ……!」



     神     月



 ――斬ッッッッッッッッッッッッッッッ……! 神速の抜刀が〝白絵〟に炸裂した。



 「――っ!」


 〝白絵〟が出血しながらも後ろへ跳んで、距離をとる。


 (……やるな)


 神速の斬撃に魔法障壁を挟み、魔力の膜でダメージを最小限にしたのだ。まさに神業、卓越した戦闘反射の賜物であろう。


 「……だが、効いた筈だぜ」


 この出血、回復の使えない〝白絵〟には堪える筈だ。


 「……ぬかせ、この程度じゃあ僕は倒れないよ」


 「じゃあ、倒れるまで追い詰めるまでだ」


 ――俺は畳み掛けるように間合いを制圧する。


 「――」


 「 〝羅閃〟 」


 ――神速の居合い切りと〝白絵〟の〝光剣〟が交差する。


 「まだまだ」

 「――っ」



  八   叉   連   斬



 ――高速八連斬が〝白絵〟に襲い掛かるも、辛うじて捌ききる。


 「……離れろ」

 「……?」


 ――閃ッッッッッッッッッ……! 光線が地面を貫く。


 「 離れろ、クソ兄貴 」



 ――ドドドドドドドドドドドドドドドッッッ……! 次から次へと光線が降り注ぐ。



 「キレやがったっ」


 もう滅茶苦茶であった。

 地形を変える程の光線が雨のように降り注いでいた。

 降り注ぐ破壊の雨、これはとてもではないが近づけそうになかった。


 舞い上がる粉塵。


 飛び散る礫や砂利。


 吹き抜ける熱風。



 「 〝終焉の光〟 」



 巨大な魔方陣が幾つも展開される。



 「 ×20 」



 ――マジかよ!


 一撃一撃が町一つ吹き飛ばす光線が一挙に降り注ぐ。


 (流石にこれは逃げ切れねェぞ……!)




  黒  王 ・ 黒  飛  那




 ――俺は最大出力の〝黒飛那〟を上空へ放つ。



 ヤバい。


 これは相殺しきれない。




 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!



 ……降り注ぐ光が闇を呑み込み、四方十里を吹き飛ばした。








 「……」


 ……あれ?


 「……」


 ……俺、何をしていたんだっけ?


 「……」


 ……ここは何処?




 『 馬鹿野郎! 目を覚ましやがれ! 』




 「――っ!」


 ――〝空門〟に怒鳴られ、俺は覚醒する。


 『起きたか、馬鹿タツタ』


 「……俺、気を失っていたのか?」


 『少しだけな』


 周りには粉塵が舞い上がっており、時間がほとんど経過していないことを知らせてくれた。


 「……あいつは?」


 俺は立ち上がり、粉塵を掻き分け〝白絵〟を捜す。

 〝風読み〟を使い、俺はすぐに〝白絵〟を見つけ出した。


 「……やはり生きていたか、しぶといね」


 〝白絵〟は覚束ない足取りで立っていた。

 出血もあるが、今ので魔力を使い過ぎたのであろう。


 「……〝白絵〟」


 「何だよ、タツタ」


 俺は〝空門〟を鞘に納めていた。



 「 もうやめにしないか? 」



 「――」


 俺の言葉に〝白絵〟が絶句する。


 「……俺にはお前と戦う理由が無いんだ。俺の敵はお前じゃない、ブラドールだ」

 「……」


 ……そもそもこの戦いに意味なんてなかった。


 俺は〝白絵〟を含む皆を救おうとしている。

 だから、〝白絵〟を殺すつもりはなかった。


 そして、〝白絵〟も――……。


 「お前も俺を殺す気なんて無いんだろ?」


 いや、違うな。逆だったんだ。



 「 お前は俺に殺して欲しかったんだろ? 」



 「――」


 ……俺は気づいていたんだ。


 いつからだろう? ずっと前から薄々勘づいていた気がする。


 「……何を言って?」


 「誤魔化すなよ、兄弟同士だろ」


 俺はずっと〝白絵〟に生かされていた。


 カグラに〝SOC〟を造らせ、


 〝八精霊〟を集めさせ、


 カノンと競わせて、


 時に復讐心を煽らせ、


 俺は〝白絵〟が引いてくれたレールの上を走って強くなったんだ。


 「……今まで何度も死にかけから蘇った。これも、お前の〝white‐canvas〟のお陰だったんだ」


 この世界に来て三回ぐらいは心臓が止まったけど、俺は奇跡的な生還を果たしていた。


 ――ご都合主義が過ぎていた。


 「お前は俺を死なないように強くして、そして、俺がお前を殺すように仕向けたんだ」


 「……違う」


 「違わないっ」


 俺は〝白絵〟の否定を一刀両断する。


 「じゃあ、説明しろよ! 何で今まで俺を殺さなかった! 何で俺を強くした!」


 「……」


 「答えろよ、空上龍二っ……!」


 「……っ」


 俺の問い掛けに〝白絵〟は俯き、すぐに答えなかった。











 「……兄さんの言う通りだよ」



 ……長い沈黙の果てに龍二はそう呟いた。


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