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  第38話 『 死闘決着 』



 「 タツタさん! 」



 ……声が聴こえる。


 ……ギルドの声だった。


 ……俺は二度と開けるつもりのなかった瞼を開いた。


 「 タツタさん! 」


 ……ギルドがいた。


 「本当に死んじゃうかと思ったんですよっ」

 「おはよ、タツタくん」


 ……フレイもカノンもいた。


 「……何だよ、お前等」


 何てことはない。皆生きているし、俺も生きていた。

 まったく、嘘みたいだ。


 「あっ、動かないでくださいね。死にますよ」

 「……えっ?」


 俺は自分の身体を見た。


 「……うわっ」


 ……まさに満身創痍。生きているのが不思議なくらいに傷だらけであった。


 「治しているので暴れないでくださいね」

 「りょ、りょーかい」


 ……死にたくないので素直に従った。


 「それにしても凄いですね。あの〝KOSMOS〟と相討ちだなんて、今でも信じられませんよ」

 「……確かに」


 〝おにぐも〟の戦闘力は今思い出すだけでもゾッとする。謎のパワーアップがあったとはいえ、相討ちに持ち込めたのは奇跡であった。


 「 謙遜することはないわ 」


 ――会話に入ってきたのは〝四大賢者〟の一人――ニアであった。


 「……〝おにぐも〟はわたしの目から見ても強者よ。それを退けたんだから自信を持ちなさい」

 「あっ、ああ」


 ニアの威圧感に気圧され、俺は気の抜けた返事をしてしまう。


 「そういえば、あいつ等どうしたんだ?」


 ……そう、ここには〝しゃち〟も〝おにぐも〟も見当たらなかった。


 「ああ、あいつ等なら帰ったわよ」

 「……案外あっさり退いてくれたな」


 〝おにぐも〟は撃破したが、〝しゃち〟の方は幾分か余裕があったように見えたんだが。


 「〝しゃち〟が交渉したんですよ。今回、わたし達から手を退くから〝おにぐも〟と自分を見逃してほしい、と」


 ……〝おにぐも〟の命と俺の命を天秤に賭けたのか。確かに、俺も〝おにぐも〟も、どちらも治療しなければ死んでいただろう。


 「そうか、じゃあ安心だな」


 俺は安堵の息を溢した。


 「 ちょっと、いいかしら 」


 ……そう切り出したのはニアだった。


 「単刀直入で悪いんだけど」


 ニアが俺・ギルド・カノン・フレイの方を向き直した。その顔はとても真剣なものであった。


 「ありがとうございます。そして、すみませんでした」


 そして、頭を下げた。

 〝四大賢者〟の一人であるニアが頭を下げたので俺達はいたたまれない気持ちになった。


 「助けてくださり、家族を守ってくださりありがとうございます。そして、こちらの戦いに巻き込んでしまい申し訳ございませんでした」


 その姿から本気の感謝の気持ちを感じた。この姿を見て許さない奴はいないだろう、いればそいつは相当な陰険野郎だ。


 「ありがとうございます」

 「すみませんでした」


 レイとリンも続いて頭を下げた。


 「頭を上げてください、ニアさん。助けてもらったのはお互い様ですよ」

 「いえ、そもそもこの戦いの原因はわたしにあります。なので、全ての責任はわたしにあります」


 ギルドの言葉にも、ニアは頑なに態度を変えなかった。

 俺とギルドは逆に困ってしまった。


 「 では、一つの頼みを訊いていただき、それで手打ちとしませんか? 」


 そう切り出したのは――カノンであった。


 『……頼み?』


 その場にいた全員が首を傾げる。


 「はい、お願い事が一つあります」


 カノンが人差し指を立てて、本題を切り出した。



 「 ニアさん、あなたには僕達の師匠になっていただきたいのです 」



 ……師匠? 何言ってんだコイツ。


 「……わたしにあなた達の師匠をやれって言うの?」

 「はい、僕達は強くならなければいけないんです。その為には優秀な師匠がいるんですよ」


 ……真剣な目だ。カノンの目からは冗談の様子は窺えなかった。


 「……いいでしょう。それがあなた達の望みであれば、わたしが聞かないわけにはいかないわ」


 ニアがカノンの話に頷いた。


 「それでは師匠、これからご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」


 カノンがゆっくりと頭を下げて、ニアに弟子入りした。


 「よっ、よろしくお願いします」

 「よろしくお願いします」

 「……よっ、よろしくお願いします」


 俺とギルドとフレイもカノンの後に続いた。


 「よし、わたしの修行は厳しいわよ。覚悟なさい」

 『 はい……! 』



 ……こうして、俺達パーティーに東の大賢者――ニア=アクアラインという師匠が加わったのであった。


 VS〝KOSMOS〟編、完!

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