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 第428話 『 最後の二十日 』



 ――黒い衝撃波と黒いムカデが衝突し、周囲一帯に破壊の余波が吹き荒れる。


 (……凄まじい威力だ)


 先程の〝極・黒飛那〟と〝百足王〟との衝突も凄まじかったが、これは先程の比ではなかった。


 (凄ェ暴風だな、立っているのもやっとだぜ)


 衝撃で空気は歪み、大地は割れ、木々は全て凪ぎ払われてしまった。


 (――〝蟲鱗〟、〝むかで〟の最終兵器なだけあるな)


 〝極・黒飛那〟程度であれば一瞬で蹴散らされてしまいそうであった。


 ――だが、俺の〝極・黒飛那三月衝〟も負けてはいなかった。


 黒い衝撃波と黒いムカデは互いに押して押されてはを繰り返していた。


 (これならやれる! これなら〝むかで〟に勝てる!)




 「 その程度か 」




 ――〝蟲鱗〟が咆哮し、〝極・黒飛那三月衝〟が僅かに押された。


 「あまり俺を失望させるなよ、空上龍太」


 黒い衝撃波の形が歪む。


 「――なっ!」


 「その程度では俺はお前を認めない」


 これは壊れる!


 〝おれ〟が敗ける!


 「絶対にだ……!」


 〝蟲鱗〟が咆哮し、そして――……。



 ――〝極・黒飛那三月衝〟が消し飛ばされた。



 ……打ち負けた。


 ……俺が、


 ……俺の全力全開が、


 「……………………ねェ」


 「……?」



 「 まだ終わってねェ……! 」



 そう、俺は〝極・黒飛那三月衝〟を放った位置は――〝蟲鱗〟から少し離れていた。


 (……ギリギリだ)


 〝蟲鱗〟が俺の目の前まで迫っていた。


 (だけど、ギリギリで二発目が間に合った)


 既に〝空門〟には〝極・黒飛那〟一発分の魔力が込められていた。


 「悪いな、〝むかで〟」


 刃が空を切る。


 「俺はウルトラ諦めが悪ィんだよ……!」




  極  ・  黒  飛  那




 ――〝極・黒飛那〟が〝蟲鱗〟に叩き込まれた。


 「――行け」


 黒い衝撃波と黒いムカデが押し合う。


 「行けっ」


 黒いムカデにひびが走る。

 黒い衝撃波が歪む。


 「行けェェェェェェェッッッ……!」




 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!!




 ……二つの強大なエネルギーは相殺され、周囲一帯を吹き飛ばした。


 「……」

 「……」


 舞い上がる粉塵。

 雨のように地面に降り注ぐ礫や砂利。


 「……」

 「……」


 その中で俺と〝むかで〟は沈黙し、睨み合っていた。


 「……まさか、二段攻撃で俺の〝蟲鱗〟を打ち破るとは思ってもいなかったよ」

 「俺も二発目でやっと相殺とは思っていなかったさ」


 俺と〝むかで〟は睨み合う。


 「――俺の敗けだな」


 〝むかで〟は溜め息を吐き、俺に背を向けた。


 「何でだよ、まだ互いにまだ戦えるだろ」


 「悪いが、俺は疲れている」


 返ってきたのは哀愁を感じさせる声であった。


 「もう五日はロクに寝ていないのだ、少しは休ませてくれ」

 「そんなの俺は全然納得できねェよ」


 俺はまだ戦いたかった。

 もっとこの戦いを楽しみたかった。

 

 「……態々、言わせるな」


 〝むかで〟は大きな溜め息を吐き、少しだけ俺を見つめた。



 「 頼んだぞ、タツタ 」



 〝むかで〟はそれだけ言って姿を消した。


 「……頼んだぞ、って」


 残された俺は〝むかで〟の言葉を反芻する。


 「……それってつまり?」


 ……認めてくれたのか、俺を?


 「……」


 俺はその場に仰向けで倒れた。


 「……………………疲れた」


 途方もない疲労感が俺に襲い掛かった。


 「……滅茶苦茶強かったな、〝むかで〟」


 引き分けたことが不思議なくらいに強かった。


 (……だけど、ここまで来たんだな)


 最初は本当に弱かった。


 (……Mr.サニーとMs.ムーンにボコられたっけな)


 あの頃は本当に弱くて、ただの前蹴りで戦意喪失するぐらいにヘタレだった。


 (だけど、魔物を倒せるようになって、〝魔将十絵〟や〝七つの大罪〟にも勝って、今日は遂に〝むかで〟と引き分けた)


 ……本当に長かった。


 ……たったの二年間が果てしなく長く感じられた。


 (それでも今日まで生きてこれた、今日〝むかで〟と引き分けた)


 俺は虚空に手を伸ばし握り締める。


 ……その掌の中には確かな自信があった。


 (――後は)



 ――〝白絵〟



 ――ブラドール=ヴァン=リローテッド



 「……背中、捉えたぜ」


 ……昔は雲の上の存在で、足下すら見えなかった奴等の背中が見えていた。


 「もうすぐだ、もうすぐ追い付く。だから」


 〝白絵〟との決戦まで――……。



 「 首洗って待っていやがれ 」



 ――残り二十日。


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