第425話 『 証明せよ 』
「――にわかに信じがたいな、空上龍太」
……吹っ切れた俺はタツタと改めて対峙した。
「……貴様は確かに強くなった。しかし、俺が敵わなかった〝白絵〟に勝てるとはとてもだが信じられんな」
そう、タツタは確かに言った。
――〝白絵〟を倒す
――因果王、ブラドール=ヴァン=リローテッドに勝つ
「……策はあるのか? まさか無策とは言わぬ筈だ」
「安心しろ、策ならあるさ……まあ、多少の博打も必要だがな」
タツタが不敵に笑み、俺の問い掛けに答えた。
「その策とやらを説明してもらおうか」
「ああ、いいぜ」
そして、タツタは語る。
「説明するよ、俺の作戦を――……」
王と神の攻略法を……。
……………………。
…………。
……。
「……成る程な、概ね理解した」
……タツタの語った二人の攻略法を聞いた俺は、腕を組み、頷いた。
「貴様の作戦は悪くない、上手くいけば二人に勝てるやもしれぬな」
それがタツタの回答に対する主観的評価であった。
「まあ、半分はジェノスが考えたことだけどな」
あいつの助言が無ければここまで練り上げることはできなかった、とタツタが小さく笑った。
「 だが、完全に信じられはしないな 」
――俺は食い下がる。
「作戦自体は悪くない、だが疑惑も残っている」
俺は真っ直ぐにタツタの顔を見つめた。
「 貴様にそれができるのか? 」
「……」
……そう、確かに空上龍太は強くなった。
「敵は紛れもない強敵だ、付け焼き刃の作戦で勝てる相手ではないぞ」
しかし、〝白絵〟やブラドールより強いようには到底見えなかった。
「貴様は本当に勝てるとでも思っているのか?」
「勝つさ、何としてでもな」
タツタは真っ直ぐに俺の瞳を見つめ、即答した。
「それ以外に俺の道は無い」
「……」
……とても純粋で淀みの無い瞳であった。
(……虚勢ではないようだな)
この男は本気で〝白絵〟やブラドールに勝つつもりであった。
「――信じられねェか?」
俺の沈黙から悟ったのか、タツタが俺の感情を代弁する。
「まあ、無理もないか……恥ずかしながら、お前には情けない姿を何度か見せちまったからな」
「……」
俺は沈黙でタツタの言葉を肯定する。
「――だったら、試してみるか?」
タツタが不敵に笑んだ。
「何をだ?」
「俺に神をも倒す力があるのかどうかをだ」
タツタが刃を抜く。
「勝負しようぜ――〝むかで〟」
「……」
「俺の可能性をてめェに証明してやるよ……!」
そして、その切っ先を俺に向け、宣戦布告をした。
「……本気か?」
「本気しかねェよ」
「容赦はせぬぞ」
「やったら殺す」
「……」
「……」
俺とタツタは下らない問答を繰返し、俺は溜め息を吐いた。
「……いいだろう」
……俺の腕から巨大なムカデが顔を出す。
「貴様の現在地を教えてやる」
……俺は内心笑っていた。
(……俺も興味があったようだ)
タツタの強さ。
タツタの可能性。
(……今はただ、それが知りたい)
さあ、教えてもらおうか。
この戦いで、
この俺に、
お前の言葉が信じるに値するのかを……。
漆黒の刃が走る。
ムカデが空を裂く。
……そして、宿命の対決が、今始まりを告げた。




