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 第418話 『 深海領域 』



 ……完全復活した僕に、〝むかで〟が絶望の瞳を向ける。


 (……正直、一か八かだったね)


 僕はずっと待っていたのだ――僕のレベルが〝むかで〟を超える瞬間を……。


 万全な状態の〝むかで〟と〝white‐canvas〟と魔術を封じられた僕とではレベルの上がる速度に差が生まれる。僕はそこに着手した。

 〝むかで〟も戦えばレベルが上がるが、自分よりレベルの高い〝むかで〟と膨大なハンディを背負った状態の僕はもっと早くレベルを上げることができる。


 ――Lv.58221


 ……これが十分前の〝むかで〟のレベル。


 ――Lv.58350


 ……これが今の〝むかで〟のレベル。


 (今の僕のレベルはLv.58351、遂に〝むかで〟のレベルを上回った)


 レベルさえ上回れば、僕の〝特異能力〟無効化の無効化を発動できるのだ。


 (……僕は運が良かった)


 一つは〝百錬剣アルケミスト〟を手に入れられたこと。


 一つは今日、タツタ達と戦えたこと。


 (……〝百錬剣〟が無ければ、僕のレベルが〝むかで〟を超えられるまで持ちこたえることができなかったね)


 そして――……。


 (今日、あいつ等と戦っていたお陰で〝むかで〟とのレベル差を縮めることができた)


 〝七つの大罪〟のギガルドとの戦い、〝white‐canvas〟を封じられた夜凪夕とタツタとの戦い。

 これだけ世界上位の敵と戦っていれば嫌でもレベルは上がっていた。

 昨日までの僕のレベルを参考にして、今日僕に勝負を挑んだ〝むかで〟にとってこれは嫌な誤算であろう。


 「 さて 」


 僕は最後の仕上げをすべく、弓と矢を召喚した。


 「やるからには最後までやろうか」


 今の僕と〝むかで〟のレベル差はたったのLv.1。些細なことで簡単にひっくり返るレベルであった。



 ――だから、逆転の芽を摘む。



 「この矢は狙った場所を必ず貫き殺す――必殺必中の矢だ」


 無論、〝white‐canvas〟で今創り出したものだ。


 「一度放たれれば、何者にも破壊することも止めることも出来ない」


 僕は弓を弾く。


 弦は張り、音をたてる。



 「 目標は〝精霊王〟だ♪ 」



 「――っ!」


 そして、矢は放たれた。


 「やめろッッッ……!」


 「遅いね」


 〝むかで〟は〝雷〟で矢を遊撃するも、逆に〝雷〟が破壊された。


 「その程度で止まる代物じゃないよ」


 「やめろッッッ……!」


 〝むかで〟が必死に吼えるも、矢はやがて見えなくなるまで遠くへと飛んでいく。


 「やめろォォォォォォォォォォォォッッッ……!」








 ――パリンッ……。〝むかで〟の〝共鳴エンゲージする指輪リング〟が砕け散った。


 「――」


 (〝共鳴する指輪〟の破壊、それは――……)



 ――契約した精霊の死を意味する。



 (……これで逆転の芽を摘んだ)


 これから〝むかで〟が幾らレベルを上げようとも、僕の〝white‐canvas〟を封じることができない。


 (あまつさえ、戦う理由すら失った、か)


 一度死んだ者は蘇生の対象から除外される。〝精霊王〟が死んだ今、僕を殺したところで〝精霊王〟を蘇らせることはできない。


 「……」


 〝むかで〟は力なく膝まつく。その瞳には闘志を微塵も感じられなかった。


 「終わるときは呆気ない幕引きだね」


 僕は絶望に暮れる〝むかで〟に手をかざす。


 「折角いい戦いだったんだ、どうせなら派手に死んでくれ」

 「……」


 〝むかで〟はピクリとも動かない。ただ、生気なく俯くばかりであった。


 「さようなら、〝むかで〟」


 巨大な魔法陣が展開される。


 「お前は今まで戦ってきた奴等の中で最も強かったよ」


 そして、魔法陣が激しく発光した。





  深   海   領   域





 ――グシャッッッ……! 僕は魔法障壁ごと見えない力によって押し潰された。



 「 あんたの相手は俺だよ♪ 」



 ……〝KOSMOS〟の一人である〝しゃち〟が颯爽と現れた。


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