第417話 『 再臨せし覇道 』
……舞い上がる粉塵。
……燃える大地。
「……何故だ」
俺は静かに問い質す。
「何故、貴様はまだ生きている――〝白絵〟」
……俺の背後に立つ〝白絵〟に。
「直前で〝帝剣闘衣〟を脱ぎ捨てたのさ……お陰で伝説の魔導具が消し炭になっちゃったけどね」
そう、笑う〝白絵〟は既に満身創痍であった。
「……成る程」
俺が破壊したのは脱け殻となった〝白絵〟の魔導具であり、〝白絵〟本体は俺の背後まで離脱していたようである。
「だが、そんな満身創痍な姿で、魔術も魔導具も失ったお前に勝機はあるのか?」
「……」
恐らく、さっきの緊急離脱は奥の手だ。そうでなければみすみす唯一の武器を手放す筈がなかった。
「よく今の一撃を凌いだ。称賛に値するぞ」
「上から目線で物を語るなよ、虫けら」
依然として〝白絵〟の戦意は失われていなかった。
「 だが、ここまでだ 」
――〝蟲龍〟、弐式
雷
――縛ッッッッッ……! 神速のムカデが〝白絵〟に巻き付き、拘束した。
「 次は絶対に外さない 」
――〝蟲龍〟、漆式
蟲 麟
……俺は再び〝蟲麟〟を召喚した。
「……あの火力を何発も撃てるとはね」
「日に四発は可能だ……回数等、最早数える意味も無いがな」
〝白絵〟には最早〝蟲麟〟を避ける手段は無い。
反則的な〝特異能力〟も、魔術も、魔導具も無い。
「 行け、〝蟲麟〟 」
〝蟲麟〟の巨大な顎が〝白絵〟を捉える。
「そして、俺の野望を討ち果たすがいい……!」
……楪。
……俺はやっとお前を救える。
……これで俺の長い旅は終わる。
「……愛しているぞ」
――楪
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「 間に合った 」
……〝白絵〟が嗤う。
「 〝特異能力〟――解放 」
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……止まる。
時間が、
〝蟲麟〟が、
――止まる。
次 の 瞬 間 。
――〝蟲麟〟が粉々に砕け散った。
「――」
〝白絵〟は間髪容れずに〝雷〟を引き千切る。
「くはっ」
〝白絵〟は笑う。
「くはははっ!」
笑う〝白絵〟の身体は既に傷一つ見当たらなかった。
「惜しかった! 実に惜しかったよ、〝むかで〟!」
〝白絵〟の笑い声と共に絶望がこだまする。
「 王の復活だ……! 」
それはまるで悪夢であった。
今まで地肉を削って、長い年月を掛けて封じた王の力。
それが今、俺の前に再び立ちはだかっていた。
……そう、〝white‐canvas〟が復活していたのだ。




