第414話 『 王手 』
――巨大なムカデが僕に襲い掛かる。
(……魔術も〝特異能力〟も使えない、か)
状況は最悪であった。
(だけど、良かったよ)
魔術も〝特異能力〟も無ければ〝むかで〟には勝てない。しかし、今の僕には一つだけ可能性が残されていた。
「 第四の剣技 」
――僕と〝むかで〟の間に、巨大な楯が召喚された。
「 〝守護剣〟 」
巨大な楯が迫り来るムカデを弾いた。
「魔術? いや、魔導具か」
「御明察♪」
〝魔絶〟の無効化対象は魔術や〝特異能力〟に限る。
つまり、魔導具は無効化対象外であった。
「だけど、ただの魔導具じゃあないよ」
「……」
第十五の剣技――〝光剣〟
第七十七の剣技――千殺刃
……千を超える光の刃の切っ先が〝むかで〟を捉えた。
「 〝百錬剣〟――伝説の最上級魔導具だ 」
僕は運が良かった。
正直、〝百錬剣〟無しでは一パーセントも勝率が無かったからだ。
(……これをくれたギガルドには感謝しないとね♪)
……まあ、強引に奪い取ったのだが。
「……滑稽だな」
〝むかで〟のプレッシャーが更に高まる。
「まさか、伝説の最上級魔導具ごときで、俺に勝てるとでも思ったのか?」
――斬ッッッッッッッッッ……! 全ての〝光剣〟が一瞬にして、〝雷〟で叩き落とされた。
「悪いがそこまで〝強欲〟の〝むかで〟は甘くはないのだよ」
「だろうね」
僕は〝むかで〟と距離をとるように後方へ跳ぶ。
(……〝百錬剣〟込みでも勝率は十パーセントちょいだからね。棚ぼたの魔導具にそこまでの期待はしてないよ)
そのまま僕は窓の外へ飛び降りる。
(とはいえ〝光踏術〟が使えないのは不便だね)
第十四の剣技――〝超加速〟
僕はそのまま暗い森の中へと飛び込んだ。
「逃がさんよ」
「焦るなよ、少し距離を置かせてもらうだけさ」
逃げる僕を〝むかで〟が猛追する。
「〝光踏術〟無しじゃあ流石に剥がせないね」
「〝鎧〟+〝雷〟」
〝雷〟の神速を〝鎧〟で肉体に付与して加速した〝むかで〟が距離を詰めてくる。
「 〝光剣〟・〝千殺刃〟 」
「 かわすまでもない 」
僕は無数の〝光剣〟を〝むかで〟に放つも、〝むかで〟は〝光剣〟を素手で凪ぎ払う。
「ならこれなら?」
第六十九の剣技――〝火龍の咆哮〟
――轟ッッッッッッッッッ……! 業火が龍となり〝むかで〟を呑み込む。
「 馬鹿が、そんな大雑把な攻撃は逆効果だ 」
……業火を死角にして、〝むかで〟は僕の背後に回り込む。
雷
――神速の〝むかで〟が僕に襲い掛かる。
第十の剣技――〝超集中領域〟
第二十九の剣技――〝戦闘反射〟
第四十三の剣技――〝先見の明〟
僕の〝眼〟には迫り来るムカデの軌道とその先が見えていた。
僕は意図も容易く神速のムカデを回避する。
「 下か♪ 」
――ぼこっ……。地面からムカデ が飛び出した。
――僕は首を傾いで、地面からのムカデを回避する。
「 かわしたと思ったのか? 」
――ギュルッ……! ムカデが旋回し、僕を捕獲する。
「捕まえた」
「と、思った?」
第三十七の剣技――〝剛力〟
僕は拘束するムカデを力づくで引き千切る。
「反応、一秒遅れているぞ」
――ゴッッッッッッッッッッ……! ムカデを引き千切る時間一秒間の隙に、〝むかで〟の拳骨が僕の頬に叩き込まれた。
(――重っ)
僕は堪らず吹っ飛ばされるも、空中で剣技を発動する。
第九十九の剣技――不殺剣
僕は地面に身体を当て、その反動で跳躍、すぐに着地する。
そして、そのときには既に〝むかで〟から貰ったダメージは完治していた。
「……回復能力まであるとは、便利な魔導具だな」
「らしくなく褒めるなよ、気味が悪い」
〝不殺剣〟の回復能力にも限度がある。そう何度も使いたくはなかった。
(〝百錬剣〟には死者蘇生できる剣技はない。だから、即死には対応できないんだよね)
今までのような大雑把な戦い方は許されなかった。
慎重に
冷静に
僅かな勝機も見逃すな。
「回復持ちならば、少しずつ体力を削っていても仕方がないな」
〝むかで〟は出していたムカデを一旦引っ込める。
「うむ、そうだな」
しかし、途端にプレッシャーが跳ね上がる。
「 ならば即殺しようか 」
百 足 王
――巨大なムカデが僕に立ちはだかる。
「……これはまずいね」
これ程の質量に押し潰されれば、今の僕の身体は耐えられないだろう。
――即死
……そうなれば蘇生の術は無かった。
「僕も出し惜しみしていられないようだ」
第 百 の 剣 技
解き放たれるは〝百錬剣〟の極致。
帝 剣 闘 衣
……僕の身体は白銀の鎧に覆われた。
「さあ、来るがいい。僕は逃げも隠れもしないよ」
「望むところだ」
〝百足王〟が僕に迫り来る。
第三十七の剣技――〝剛力〟
( 四重装! )
〝剛力〟を四重に掛け、真っ向から〝百足王〟を待ち受ける。
「呑み込め、〝百足王〟」
『ギアァァァァアアァァァァアァァァァァァァァァァァッッッッッ……!』
咆哮し、目の前にある全てを蹂躙する〝百足王〟。
両手を前に構える僕。
そして――……。
「虫けらめ、捩じ伏せてやるよ」
『ギアァァァァアアァァァァアァァァァァァァァァァァッッッッッ……!』
――衝突。




