表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
401/462

 第391話 『 最強の〝一〟 』



 「――ごばっ……!」


 ……俺は鎧の中で血を吐いた。


 (……これが神速の世界か、体への負担が半端じゃねェな)


 これが、タツタや〝むかで〟の生きる世界……悔しいが尊敬せざるを得ないな。

 しかし、今は誰かを尊敬したり、羨んだりする時間はない。


 (――畳み掛けろ)



 ――バキッッッ……! 俺の足下が弾け飛んだ。



 「――見えるよ♪」



 ――〝白絵〟が僅かに横へ跳ぶ。


 ――俺の拳が〝白絵〟の真横を突き抜ける。


 「悪いけど、神速を見切る〝眼〟ならとっくの昔に持っているんだ」



 ――トンッ……。〝白絵〟の掌が俺の横腹に当てられた。



 「 よ♪ 」


 「――ッ!」



  トール   き   ハン   マー



 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 〝白き閃光〟を纏った拳が横腹に叩き込まれた。


 「――ッッッッッッ……!」


 俺は堪らず吹っ飛び、巨大な図書館の中へと転がる。

 本棚に叩きつけられた体に古びた本が落ちてくる。


 「イテテッ……なんつぅ威力だよ」


 〝帝剣闘衣バルト・カイザード〟を発動していなければ、只ではいられなかったであろう。


 「……しかし、神速まで見切るとはな」


 甘くはないと思っていたが、予想以上に〝白絵〟との力の差は広いようである。


 「だったら、もっと無茶をするしかないようだな」


 第 十 四 の 剣 技



   アクセル    ブー    スト



 「――かはっ」


 俺はまたも血を吐いた。

 しかし、俺は倒れない。


 (……もっとだ)


 ……俺は……まだまだ速くなれる……!



 ――バキッッッッッッ……! 俺の足下が弾け飛んだ。



 「――来るね♪」


 ――〝白絵〟がカウンターで右手を前に突き出す。


 「 遅ェな 」



 ……その横で俺は拳を構えていた。



 「 第三十七の剣技ソードスキル! 」


 「――」



     フル     パワー



 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 今までよりも遥かに強烈な鉄拳が〝白絵〟の土手っ腹に叩き込まれた。。


 「――ォも、いね」

 「派手にぶっ飛びな……!」



 ――〝白絵〟は堪らず吹っ飛び、巨大な時計塔に叩き付けられた。



 時計塔は瓦解し、崩れ落ちる。

 時計塔の上に取り付けられていた巨大な鐘も落ち、リンゴーンと低い音を響かせる。


 「――♪」


 しかし、〝白絵〟は平然と立っている。


 「関係ねェ! その余裕、剥ぎ取ってやるよ!」


 ――トンッ……。俺は既に〝白絵〟の前にいて、間髪容れずに〝白絵〟をアッパーで打ち上げた。


 〝白絵〟の軽い身体は空高く打ち上げられ、


 「まだまだァ……!」


 ……その真横に俺がいた。


 「横ォッッッ……!」


 殴られた〝白絵〟は真横に吹っ飛ばされ、


 「下ァッッッ……!」


 間髪容れずに俺は回り込み、回し蹴りによって地面へ叩きつけた。


 「……これが神速を超えた超神速か」


 〝白絵〟は頭から血を流しながらも、飄々と笑んでいる。


 「見事だ、ギガル



 ――踏ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 俺の全力の踏みつけが〝白絵〟の言葉を遮った。



 地面は盛大に弾け飛ぶ。


 「――」


 ……しかし、そこに〝白絵〟の姿はなかっ



 ――トンッ……。〝白絵〟が俺の頭上に移動しており、その手は既に俺の頭に添えられていた。



 「やれやれ、人の話は最後まで聞くべきだと思うよ」


 「――ッ!」


 俺は逃げようと地面を強く蹴っ


 「あっ、それと」



     白     轟



 ――閃ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 目映い光の柱が立ち上がり、天を貫いた。


 「慣れてしまったよ、お前の超神速ならね」


 「……っ」


 〝白轟〟を直撃した俺は地にひれ伏していた。


 「……」


 ――格が違う。


 (……コイツは今まで戦ってきた誰よりも強い)


 身体も満身創痍だ。常に〝不殺剣メディケーション〟で回復しているのに、回復が追いつかない。


 (……どうする? 超神速すらも見切られた。次は? 次はどうすればいい?)


 ……選択肢は一つしかなかった。


 しかし、その道は地獄の路だ。


 その痛みもは想像を越えるであろう。


 (……俺は馬鹿だし、不器用だからな)


 難しいことを考えたって大した考えなんて出なかった。

 だから、いつだって単純で、真っ直ぐな選択肢を選んできた。

 今日だってそうだ。

 俺は何も変わっちゃいない。



 ―― 一点突破だ。



 だから、今日も明日も、俺は俺らしく生きてやる。


 第 十 四 の 剣 技


 その選択に間違いなどある筈がなかった。



   超    加    速



 「――ッッッッッッ……!」


 ――激痛が電流のように全身を駆け巡る。


 ( ま だ だ )


 第 十 四 の 剣 技


 「――かはっ……!」



   超    加    速



 ……息ができなくなるぐらいに苦しかった。


 ……全身の筋肉が引き千切れそうな程に痛かった。


 「……………………まだ……だ」


 第 十 四 の 剣 技


 「……俺は……お前を……お前の想像をぶち超えてやる」



   超    加    速



 ……これが世界最速。


 ……タツタよりも〝むかで〟よりも、〝白絵〟よりも速い世界。


 踏み入れた超超超超神速の領域。


 腕も脚も辛うじて動く。


 後は?



 ……俺の姿が消える。









 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 〝白絵〟がノーガードで殴り飛ばされた。



 「――は――やっ」


  次  の  瞬  間  。



 ――〝白絵〟は右に、左に、上空へ、地面へ吹っ飛ばされた。



  次  の  瞬  間  。



 ――民家が次々と吹き飛び、地面も弾け飛ぶ。



  次  の  瞬  間  。



 ――〝白絵〟の身体は縦横無尽に弾き飛ばされる。



 ……骨は折れ、


 ……血飛沫は舞い、


 ……肉片が宙へ放られる。



 ――トンッ……。俺は地面に着地した。



 それは俺の姿が消え、0.004秒後の出来事であった。


 俺の〝帝剣闘衣バルト・カイザード〟が壊れ、元のチョーカーに戻り、俺の手の中に収まる。


 〝白絵〟の肉片と鮮血が雨のように地面に降り注ぐ。


 「……………………勝った」


 全ての力を出し尽くした俺はその場で膝をついた。


 「「ギガルドッ!」」


 ユウと建物の影に隠れていたお嬢が駆け寄って来る。


 「やってやったぞ、お前ら……!」


 俺は勝ち誇るように、チョーカーを握る腕を天へ突き上げた。




 ――斬ッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 突き上げた腕が切断された。




 「――なっ!」

 「ギガルドッ!」


 理解が追い付かない。痛みも追い付かない。ただ腕を切断された事実だけが脳裏に刻まれる。


 「ぐあああッッッッッッ……!」


 痛みが追い付き、激痛が神経を駆け巡った。



 ――パシッ……。切断された腕を何者かがキャッチした。



 「悪いけど、この〝百錬剣〟は僕が貰わせてもらうよ♪」


 「シロエェッッッ……!」


 ……何てことはない、〝白絵〟は無傷で生還していた。


 「……どう、やった」

 「難しいことはしていないさ。僕はただ死後十秒後に自動オートで蘇生する魔術を〝white‐canvas〟で創造していただけだからね」


 ……マジ、かよ。


 ……それじゃ……あ……俺は……。



 ――スッ……。〝白絵〟の掌が絶望で俯く俺に向けられた。



 「さようなら、余興にしては楽しませてもらったよ♪」


 「……」


 言葉も返せない。

 力も魔力も出し尽くした。


 「如何に数を揃えようとも最強の〝一〟には劣る。それがお前の敗因だね――ギガルド=ヴァンデッド」


 「……」


 〝白絵〟の掌から目映い光が放たれる。


 「 バイバイ♪ 」


 真っ白な世界。


 焼ける肌。


 不愉快な〝白絵〟の笑い声が聴こえる。




 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!




 ……圧倒的な破壊が全てを呑み込んだ。


 「 死なせはしないよ 」


 風が吹く。


 何者かに抱えられる。


 薄れ行く意識の中、ぼんやりと視界に映ったのは?


 「――ギガルド兄ちゃん」


 ……夜凪夕であった。


 「後は俺に任せて」


 「……………………あ、あ」


 俺は静かに瞼を閉じる。

 そして、深い眠りに落ちる。



 ……任せたぜ……ユウ。



 そして、俺の意識は完全に閉ざされた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ