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  第34話 『 よく頑張ったな 』



 「 おにさんは生きているよ♪ 」


 ……勝ったと思った。


 「おにさんの体力・腕力・防御力は〝KOSMOS〟随一だからね。あの程度の攻撃じゃやられる筈がないのさ」


 ……しかし、それはまやかしだった。


 「おにさんは絶好のチャンスを待っていたんだよ、氷の中でね」


 ……目の前に立ちはだかるのは圧倒的な――絶望であった。


 「……」


 〝おにぐも〟がわたしを無言で見下ろした。


 ――ゾクッッッ……!


 ……ああ、駄目だ。

 ……この人は強い。

 ……わたしなんかよりも遥かに――強い。


 ……わたしなんかが勝てっこない……!













 ……なんて言っているわけにはいかないよね。


 「 息子と娘を頼んだ 」


 ……わたしは頼まれたのだ。この子たちを守ることをニアさんに頼まれたのだ。

 わたしが逃げ出せばレイくんとリンちゃんは死んでしまう。

 わたしが戦いを諦めてしまえばレイくんとリンちゃんは死んでしまう。

 なら、戦うしかないだろ……!


 「……戦うんだ」


 そして、絶対に生き残る……!


 わたしは地面に〝太陽の杖〟を当てた。



   地   龍   爆   衝



 ――同時。地面が大爆発した。


 ――同時。わたしと双子は駆け出した。


 ――同時。〝おにぐも〟が巨大な戦斧を振り抜いた。


 「――ッ」


 ……大爆発の土煙のお陰で〝おにぐも〟の攻撃がそれたのか戦斧の攻撃は肩を掠める程度で済んだ。

 双子は茂みの中に飛び込む。

 わたしは土煙を掻き分け、ニアさんの下へ駆け出した。


 「小癪な」


 〝おにぐも〟が巨大な戦斧を高く振り上げる。


 そして、振り下ろす。



 ――ドオォォォォォォォォォンッッッ……!



 ……巨大な水柱が立ち上がった。


 その衝撃は凄まじく、巨大な水溜まり内に大波を引き起こした。


 (しまった! ニアさんが流されてしまう……!)


 わたしはニアさんを追い掛けようと、水溜まりの深いところに飛び込んだ。


 「 見つけたぞ 」


 ……見つかった。〝おにぐも〟がわたしのすぐ横にいた。


 「――っ!」


 わたしは咄嗟に〝おにぐも〟に左手をかざした。



  炸  裂  す  る  炎



 ――轟ッッッッッッ……! 大爆発が〝おにぐも〟に炸裂した。


 「……嘘」


 ……しかし、〝おにぐも〟には僅かなダメージすら与えられなかった。


 「……その程度か」


 〝おにぐも〟がただ悲しげにわたしを見下ろす。


 「 う 」


 ……わたし、死ぬのかな?

 ……死ぬ?


 ――わたしが?


 ……………………。

 …………。

 ……。


 「 うわァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ! 」


 ――轟ッッッッッッッ……! 〝おにぐも〟に爆発が炸裂した。


 ……嫌だ!


 「ファイア・ナパームッッッ!」


 ……嫌だ!


 「ファイア・ナパームッッッ!」


 ……嫌だよ、死にたくないよ!


 「ファイア・ナパームッ……!」


 ……何でわたしがこんなところで死なないといけないの?


 「ファイア・ナパームッ」


 ……まだ、アークにちゃんと謝って無いのに!


 「……ファイア・ナパーム」


 ……そんなのってないよ。


 「……ファイア……ナパーム」


 ……死にきれないよ。


 「……ファ……イア………………」


 ……嫌だよ。


 「……」


 ……死にたくないよ。


 「 もう終わりか? 」


 ……誰か。


 「じゃあ」


 ……助けてよ。


 「 死ね 」


 ……助けて。



 「 タツタさん……! 」















 「 よく頑張ったな 」




 ……えっ?



 「 助けに来たぜ 」



 ……風が吹いた。温かくて優しい風だ。


 ……何者かがわたしの下へ歩み寄る。


 ――つぅー、涙が溢れ落ちた。


 ……あはは、駄目だ。涙止まらないよ。


 「……遅いですよ、大遅刻です」


 ……わたしは笑っていた。おかしいなぁ、こんなに絶望的な状況だったのに。


 ……誰が来たのかをわたしはよく知っていた。

 ……普段はだらしなくて、

 ……わたしより弱くて、


 ……でも、


 ……いざってときには誰よりも格好いい、わたしの勇者様。


 「……タツタ……さん」


 「おう、待たせたな。ギルド」


 ……空上龍太がそこにいた。


 「何、泣いてんだよ。馬鹿」

 「……うぅ、だって、本当に恐かったんです」

 「そっか」


 涙を流すわたしをタツタさんが優しく抱き抱えてくれた。


 ――不思議なことに震えが止まっていた。


 「悪かったな。でも、良かったよギルドが生きてて」


 タツタさんはそう言って、再び立ち上がった。


 「ギルド、お前はお前のできることをしろ」


 そして、〝おにぐも〟と対峙した。


 「コイツは俺が何とかしてやる」

 「……」


 ――タツタさんと〝おにぐも〟が睨み合った。


 「……お前に俺が止められるのか」


 「 黙れ 」


 ――斬撃一閃。






     灼     煌






 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッッ……! 熱の波動が〝おにぐも〟に炸裂し、その巨体を大砲のように吹っ飛ばした。


 「……よくもギルドを泣かせてくれたな」


 タツタさんが吹っ飛ばされた〝おにぐも〟に静かに吐き捨てた。


 「もう謝った許さねェ」


 〝SOC〟の切っ先を〝おにぐも〟に向ける。


 「 ギルドを泣かせた分だけ俺がぶっ飛ばしてやる……! 」



 ……ボウッ、紅蓮の業火が水面で揺らめいた。


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