第389話 『 〝白絵〟VS夜凪&ギガルド 』
……俺とユウと〝白絵〟が対峙する。
「さて、何秒耐えられるかな♪」
〝白絵〟が胸糞悪い笑みを浮かべる。
「何時間の間違いじゃないの? 〝白絵〟」
ユウが〝白絵〟の挑発を軽口で返す。
「……」
「……」
……沈黙する二人。
……吹き抜ける風の音すら聴こえる静寂。
最初に動いたのは?
「 俺が行く 」
「……ギガルド兄ちゃん」
……俺はユウの前に出た。
「俺が攻める。お前はフォローを頼む」
「でも、この前の戦いで〝大喰い〟は壊れたんじゃ」
「そうだな」
俺の魔導具――〝大喰い〟は〝むかで〟との戦闘で消し飛んでしまったのだ。
「 だが、新しい武器ならここにある 」
……俺は剣をデザインしたチョーカーを引き千切った。
「行けるの?」
「やらなきゃ、ドロシーを失うまでだ……嫌だろ?」
「愚問だね」
俺は剣型の装飾に魔力を込める。
するとどうであろう、装飾は巨大化し、一本の巨大な大剣へと姿を変えた。
「風の谷に眠りし秘剣――〝百錬剣〟、とくと見やがれ……!」
「……へえ♪」
〝百錬剣〟を見た〝白絵〟が愉しそうに笑んだ。
「〝百錬剣〟とは面白い。僕も文献では目にしたことがあったけどね」
「そいつは説明が省けて助かるぜ」
俺は〝百錬剣〟に魔力を込める。
「〝百錬剣〟とはその名の通り、魔力を込めることにより、百通りの能力を剣に付与する伝説の魔剣、だっけ?」
百の能力を秘めた魔剣、それこそが〝百錬剣〟の能力である。
しかし、この〝百錬剣〟には大きな欠点があった。
「――魔力の過剰消費。〝百錬剣〟の能力発動には多量の魔力が必要だ」
だが、俺には〝魔喰〟がある。魔力切れなんてまず起こすことはないであろう。
「僕や〝八精霊〟以上の魔力を持つお前にはピッタリの武器だね――けど」
――〝白絵〟の姿が消えた。
「 いい武器を持っただけで勝てる程、僕は甘くないよ 」
「――」
――〝白絵〟は俺達の背後にいた。
(――出やがったな、〝光踏術〟!)
「 〝白き閃光〟 」
――閃ッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 目映い光が放たれる。
「ギガルドッ!」
「任せろ……!」
――直撃。〝白き閃光〟が俺達を呑み込んだ。
……衝撃で土埃が舞い上がる。
……やがて、土埃は風に流され、視界が開ける。
「……へえ、〝白き閃光〟を凌いだか♪」
そう、〝百錬剣〟が巨大な盾へと形を変え、〝白き閃光〟から俺達を守っていたのだ。
「……第四の剣技――〝守護剣〟」
「――♪」
中級魔術を防がれたのにもかかわらず、〝白絵〟は飄々としている。
(いいぜ、どんどん油断しな)
……そう、〝白絵〟はまだ気がついていない。
(――行け、ユウ)
――斬ッッッッッッッッッッッッ……! ユウが〝白絵〟の背中を切り裂いた。
「油断大敵だ、ヴァーカ」
……そう、ユウは〝蛇〟で地面を這い、〝白絵〟の背後に回り込んでいたのだ。
「油断? これは余裕だよ♪」
しかし、〝白絵〟はダメージを負っていなかった。
「〝魔力の膜〟だね」
ユウは反撃に備えて、再び〝白絵〟から距離を取った。
「生半可な攻撃じゃ、あいつに傷を負わせることすらできないんだよ」
「情報提供、助かるぜ」
……ならば、こちらにもやりようがあった。
「なら、最初の予定通り、俺が攻めさせてもらう」
俺は〝百錬剣〟を構える。
第一の剣技――〝快刀乱麻〟
第十一の剣技――〝達人剣〟
第十四の剣技――〝超加速〟
第四十三の剣技――〝先見の明〟
第五十六の剣技――〝羽根の如く〟
第七十二の剣技――〝破魔の剣〟
第八十五の剣技――〝不治〟
……俺は同時に七つの剣技を発動した。
「行くぜ」
「いつでもどうぞ♪」
――バキッッッッッッ……! 俺の足下が弾け飛ぶ。
「速いね♪」
「ふんッッッ……!」
俺は〝白絵〟の背後に回り込み、斬りかかる。
〝白絵〟も反応して、〝光剣〟を振り抜く。
――衝突。〝百錬剣〟と〝光剣〟が交差する。
「まだまだ!」
俺は絶え間なく斬撃を繰り出し、〝白絵〟は全ての斬撃を回避する。
「ほら、後ろががら空きだよ♪」
――俺の後ろに〝白絵〟がいた。
(――〝白絵〟が二人?)
俺は間髪容れずに背後の〝白絵〟を切り裂いた。
(手応えがない! 〝立体映像〟か
「ほら、隙ができたよ」
〝白絵〟が俺の周囲を駆け回る。
白 棺
――計十六ヶ所から〝白い閃光〟が放たれる。
「逃げ場はないよ、どう凌ぐ?」
「叩き斬る!」
俺は迫り来る〝白い閃光〟を斬る。斬って斬って斬りまくった。
〝白い閃光〟が放たれる間隔はほぼ0だ。だからこそ、止まれない。一つ一つの軌道を見切って確実に対処する。
それを可能とするのが、
剣術を達人レベルに押し上げる剣技――〝達人剣〟。
運動速度を極限まで高める剣技――〝超加速〟。
感覚を研ぎ澄まし、未来を予知する剣技――〝先見の明〟。
剣本体の重さを極限まで軽量化する剣技――〝羽根の如く〟。
これら四つの剣技である。
「お見事、お見事♪」
〝白絵〟は愉しそうに拍手した。
「じゃあ、次はどうかな?」
……既に無数の魔法陣が俺を包囲していた。
「光の射手――」
× 2 2 1
――無数の光の光線が同時に放たれた。
「マジか……!」
追加――……。
「第七十七の剣技」
千 殺 刃
――〝百錬剣〟が千本のナイフに姿を変えた。
「暴れな!」
千本のナイフは〝光の射手〟へ飛来し、切り裂いた。
「……一本一本のナイフが〝光の射手〟を上回るとは驚いたね」
相殺ではなく、一方的な破壊。そう、俺のナイフの切れ味は名刀にも匹敵するものであった。
(これこそが第一の剣技――〝快刀乱麻〟! 魔力を込めただけ刃の切れ味を高める剣技だ!)
そして、俺の反撃は終わらない。千本のナイフは群れをなし、〝白絵〟に襲い掛かった。
「 〝終焉の光〟 」
――閃ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!!
……圧倒的な破壊力を秘めた光線が全てのナイフを吹き飛ばした。
流石は光魔法最強級の威力を誇る〝終焉の光〟と言ったところか、かなり魔力を込めたナイフでさえ、まるで蝿を払うように容易く蹴散らしてしまった。
(――だが、大技を撃つのが早すぎる。少しは焦ってくれたか?)
ならば、そこを突いてこそ勝機は開ける筈だ!
追加――……。
第六十五の剣技――〝無音静殺〟
――トンッ……。俺は〝白絵〟の背後にいた。
「――」
(殺った……!)
俺は大剣に戻した〝百錬剣〟を振り下ろす。
〝白絵〟が距離を取ろうと後ろへ
――ガシッッッ……! 〝白絵〟の足下からユウの手が飛び出し、その足首を掴まえた。
「最高だ! ユウ……!」
「――っ、魔法障壁……!」
――斬ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!
「……なっ」
……初めて、〝白絵〟が動揺した。
「いい顔になったなァ! シロエェ……!」
血飛沫が舞う。
〝白絵〟の膝が地面に付く。
そうだ、俺は斬ったのだ。
頑強不屈の鉄壁を、
完全無欠の最強魔王を、
……魔法障壁ごと〝白絵〟を斬ったのだ。




