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  第33話 『 予想外に次ぐ予想外 』



 「「 …… 」」


 ……睨み合うニアさんと〝しゃち〟。

 大技を出しあったにも拘わらず互いの魔力が尽きる様子は無かった。魔力の節約ではない。では、この沈黙の正体は?


 「……よし」

 「準備完了♪」


 動き出したのは二人同時であった。

 どうやら二人は〝仕込み〟をやっていたようだった。


 「「 出でよ 」」



 鯱 王 ・ シ ャ ル カ ラ



 海 皇 ・ リ ヴ ァ イ ア サ ン



 ――盆地に溜まった巨大な水溜まりに二匹の巨大な眷属が召喚された。


 「でかい……!」


 わたしはそのあまりの巨大さに驚愕した。

 〝しゃち〟の召喚した眷属――シャルカラは目も鼻も耳も無い、ただ巨大な口のある漆黒の魚である。

 一方、ニアさんの召喚した眷属――リヴァイアサンは目の無い巨大な海蛇である。

 どちらにも共通して言えることはただひたすらに馬鹿でかいということであった。


 「行くよ♪」


 最初に動き出したのはシャルカラであった。


 「 〝クアブレイズ〟 」


 ――シャルカラの口から巨大で大量の水の刃が、ニアさんとリヴァイアサン目掛けて繰り出される。


 「迎え撃つよ、リヴァイアサン!」


 一方、リヴァイアサンは尾を高く高く振り上げた。

 そして、水の刃がリヴァイアサンに差し迫る。


 ――パアァァァァァンッッッ! 強靭な尾で水の刃を叩き壊した。


 ……魔術なんて関係無い! 純粋な力押し!


 「まだまだ♪」


  水  刃  走  刃


 ――シャルカラの口から絶え間なく水の刃が撃ち出された。


 「無駄よ」


 しかし、リヴァイアサンの尾は全てを叩き壊す。

 叩き壊す!

 壊す……!


 「 はい、後ろがら空き♪ 」


 ――〝しゃち〟はリヴァイアサンの背後にいた。


 ……水刃走刃を囮にリヴァイアサンの背後を取ったのだ!?



     ウォーター     フォール



 ――巨大な水の刃が〝ニア〟さん目掛けて振り下ろされた。



 「 知ってた♪ 」



 ――〝ニア〟さんが笑った。


 ……次の瞬間。


 ――〝ニア〟さんが崩れ落ちた。どうやらニアさんだと思ったそれはただの水分身であった。


 「 !? 」

 「 アーンド 」


 ――すうぅ……、リヴァイアサンが消えた。


 「 リヴァイアサン、解除 」


 ……〝ニア〟さんが消えた。


 ……リヴァイアサンも消えた。


 ……残ったのは〝しゃち〟だけ。


 ――そこで問題。


 現在進行形でリヴァイアサンには水刃走刃が撃ち出されている。

 なので、リヴァイアサンは身を守る為に水刃走刃を尾で叩き壊していた。

 しかし、そのリヴァイアサンは消えてしまった。


 ……はてさて、そうなるとシャルカラから撃ち出された水刃走刃は一体どうなるのでしょうか?


 「 !? 」


 そう、答えは――……。


 「 BANG 」


 ……リヴァイアサンの背後を取った〝しゃち〟に水刃走刃が撃ち出される、である。


 すぐにシャルカラを解除したが、一度発射された〝水刃走刃〟は止まらない――幾十もの水の刃が〝しゃち〟に襲い掛かる。


 「……ちっ!」


 〝しゃち〟は咄嗟に〝水閃〟で〝水刃走刃〟を叩き斬った。

 しかし、そこには一つの隙が生まれるのだ。

 ニアさんと〝しゃち〟の実力は互角――故に、僅かな隙が勝敗を決する。


 「 捕まえた♪ 」


 ――ガシッ、ニアさんが〝しゃち〟を後ろから羽交い締めした。


 「それだと君も〝水刃走刃〟を喰らうことになるよ♪」

 「ふふっ、構わないわ。もっとも、喰らうのは〝水刃走刃〟だけでは無いけどね」

 「……何だって?」


 ……ニアさんと〝しゃち〟の図上には巨大な氷の龍がいた。



 「 〝ダイヤモンドデイジー〟 」



 ……ニアさんが不敵な笑みを浮かべた。


 「わたしの取って置きよ、思う存分喰らいなさい」

 「……っ! 離せ!」

 「無駄よ」


 ニアさんは更に氷結して、〝しゃち〟の動きを封じた。


 「わたしは水分身じゃないわ、だからこそこの場で氷結の拘束ができるのよ」

 「……君も死んじゃうよ」


 「 死なないわ 」


 ニアさんが笑った。


 「わたしにはギルドさんがいる。それに――……」


 「 大切な家族を遺して死ねるわけないじゃない 」


 ――ドッッッッッ……! 〝水刃走刃〟が二人に炸裂した。


 そして、間髪容れずに――……。




   氷   龍   天   華




 ……巨大な氷の龍が二人を食べ、同時に天空に巨大な氷の華を咲かせた。



     ブレ     イク



 ――パリイィィィィィィィィィィンッッッ……! 氷の華が粉々に砕け散った。


 氷の結晶が巨大な水溜まりに降り注ぐ。

 それと並んで、ニアさんと〝しゃち〟が落下する。


 「……」

 「……」


 ――ぽちゃんっ、二人諸とも水溜まりに落ちた。


 「ニアさんッ……!」


 わたしはニアさんの下へ駆け寄った。

 魔力は既に右腕に集めていたからすぐに〝祝福の鐘〟で治療できるだろう。

 先程、ニアさんから受けていた指示はこれである。


 「 わたしは刺し違えてでもあの〝しゃち〟を倒す。だから、貴女はわたしが生きていたときに治療できるよう魔力を溜めておいて 」


 ……これがニアさんに頼まれた仕事である。


 だから、急げギルド! ニアさんが死ぬ前に怪我を治すんだ!


 「 ははっ、勝ったと思ったかい? 」


 ……その笑い声はニアさんの隣で水面に浮かぶ〝しゃち〟から発せられたものであった。


 「僕をここまで追いやったのは誉めてあげるよ♪ でもね、君たちは一つ見落としているよ」



 ――パリイィィィィン……! ニアさんに氷結されていた筈の〝おにぐも〟が氷結を自力で破壊し、わたしの前に立ちはだかった。



 「 おにさんは生きているよ♪ 」



 ……〝しゃち〟が最低最悪な真実を語った。


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