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 第345話 『 水氷龍VS狂獣 』



 ――カノン兄ちゃんを救ってくれよ



 ……ユウくんが眠りにつく前に言った言葉だ。


 「託されました……!」


 その意志は確かに受け継いだ。


 「フレイちゃんはサポートをお願いします」


 私はバハムートの他に、ゴーレムとピヨマルを召喚する。


 「カノンくんは私が倒します」


 ――殺すのではなく倒す……それが私の役割であった。


 「はい、一緒に頑張りましょう!」


 フレイちゃんも炎弾を展開して、怪物の攻撃に備えた。


 『 あーーーーーーーーーーーッ 』


 怪物が大きく口を開いた。


 「 ? 」


 ……何か来る。そう思った次の瞬間。



 ――閃ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 巨大な光線が怪物の口から放たれる。



 「バハムートッ!」


 私は叫ぶ。



 ――ガッッッッッッッッッッッッッッッッ……! バハムートが私の叫びに反応して、光線を素手で弾いた。



 「あっ、ありがとうございます」


 とはいえ、素手は無理があったのか、バハムートの硬い鱗に小さなひびが走った。


 (……モロに受けるのは危険そうですね)


 私はバハムートの強度と怪物の光線の威力から作戦を立てる。


 「バハムート、接近して戦いましょう!」


 ――了解、お嬢


 バハムートは頷き、怪物に殴り掛かる。


 『アハッ、ヒャヒャーーー、頭、カチ割れワレちゃうよォー、ひはっ』



 ――怪物がバハムートの背後に回り込んでいた。



 (――速いッ)


 ……この速度、〝白絵〟クラスだ!


 「バハムート! 全方位攻撃です!」



  クリ   スタル   ソル   ジャー



 ――ドッッッッッッッッ……! バハムートの全身に氷柱の鎧が纏われた。



 氷柱の鎧は怪物を貫く。しかし、怪物に痛がる素振りは見られなかった。


 (……痛覚が無いの?)


 それでも関係ない。私の目的は殺さずに倒すことだ。


 「そこで回転です!」



 ――バハムートが勢いよく回り、氷柱で貫いた怪物を引き裂いた。



 「決まった!」


 これだけのダメージを与えれば怪物もただではいられない筈であった。


 『痛いイタイイタイタイタイあー、ダメだめ、ハ ら わ タ 出ちゃうねェ』


 怪物は地面を転がり、悶え苦しんだ。


 『 イ   イ      嫌だ

     た    のはァ    』


 「――ッ!」


 ――僅か数秒だ。


 『こー、こー、今度わァーーー』


 ……僅か数秒で怪物は完全再生した。



 『 大丈夫ゥー 』



 ……加えて、怪物の体表に硬質な骨のような鎧が纏わりついた。


 (バハムートの真似事ですか!)


 怪物はバハムートの方を向き、強く地面を蹴った。



 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!



 ……一瞬。


 ……一瞬で怪物は、バハムートの〝氷槍兵装〟を破壊し、バハムートへタックルを叩き込んだ。


 (――駄目だ! 完全に目で追えない!)


 バハムートは堪らず遥か後方へと吹っ飛ばされる。


 「バハムートォッ……!」


 私は咄嗟に叫んだ。


 『 お 』


 ……そして、既に怪物は私達の前に立ちはだかっていた。


 「ドロシーさん、伏せてくださいッ!」


 「――ッ!?」


 ――フレイちゃんの叫びに反応して、私はその場に伏せた。




     灼     煌




 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!! 灼熱が私の頭上を抜け、怪物に叩き込まれた。


 「フレイちゃん!」

 「大丈夫ですか、ドロシーさんっ」


 私の身を案じるフレイちゃんではあるが、既に二発目の〝灼煌〟を撃ったせいか、疲労の色が見えていた。


 「無理はしないでくださいね」

 「大丈夫です、このぐらい。皆に比べたらまだまだ大したことありません」

 「……」


 ……そうだ。私達は戦いが始まって早々にリタイアしてしまったせいでまだ何もやっていなかった。

 〝額〟に敗れ、ずっと大樹の陰で眠っていたのだ……その間、きっと皆は死に物狂いで戦っていたであろうに!

 だからこそ、私達は無理してでも皆の分まで戦わなければならなかった。

 フレイちゃんも同じ気持ちであるのか、辛そうではあるものの闘志だけは衰えていなかった。


 「絶対に生き残りましょうね!」

 「言われなくとも!」


 私とフレイちゃんは互いに鼓舞しあい、再び怪物の方へと意識を向けた。


 『 あー、aー、熱いよぅ、アツスギテぇ、のぼせちゃうねェ 』



 ――無傷



 ……怪物の骨の鎧は少し焦げただけで、他は全くの無傷であった。


 (……〝灼煌〟でも無傷なんて、あの鎧、想像よりもずっと硬い!)


 だとするならばこれはピンチだ。現状、フレイちゃんの〝灼煌〟を上回る火力を出せるのはバハムートだけ、つまりバハムートでしか怪物に傷をつけることすらできないのだ。


 「フレイちゃん! ピヨマルに乗ってください!」

 「はいっ!」


 私とフレイちゃんはピヨマルに乗って飛翔した。


 (ユウくんはゴーレムに任せているから大丈夫として、後は私達の身の安全を確保しないといけない)


 取り敢えず、ピヨマルに乗ってバハムートが体勢を立て直すまでの時間を稼がないといけなかった。


 (……あれ?)


 ……そこで私は気がついた。


 「カノンくんはどこ?」


 ……先程までの場所にカノンくんの姿が見当たらなかった。


 「ドロシーさん、後ろですっ!」


 「――ッ」


 ――私は咄嗟に振り向いた。



 ……そこには何もいなかった。



 「「――えっ?」」


 ……確かに、私も背後に気配を感じた。しかし、そこには何もなかった。


 (――まさか、光速移動で既に



 ――ゾクッッッッッ……! 気配は真上から感じた。



 ……しかし、時既に遅し。鋭利な爪が私達へ振り下ろされ




 ――凍ッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 怪物は一瞬にして氷結した。




 「バハムートッ……!」


 ……そう、これはバハムートの氷魔法であった。


 強靭な尾が空を切る。


 怪物は凍ったまま。



 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッッ……! バハムートの強靭な尾によって怪物は遥か後方へと吹っ飛ばされた。



 「あっ、ありがとうございます」


 ……今の一瞬、かなり胆を冷やした。


 「やりました、かね?」


 フレイちゃんが疑心に満ちた目で怪物が吹っ飛ばされた方向を見つめた。


 「……」


 これで倒したとは思えないけど、バハムートが復活するまで持ちこたえることができただけでも今は良しとしよう。



 ……ざわっ



 「フレイちゃん、構えてください」

 「……えっ?」


 私はバハムートを前へと出した。


 「バハムート、氷の壁をお願いします」


 ――バハムートが私の指示に従い、地面から氷の壁を展開した。


 「来ますよ」

 「――」




 ――ゴンッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 怪物が氷の壁に体当たりした。




 ……それは突然で、一瞬の出来事であった。


 「危なかったですね」


 光速の体当たり、事前に準備をしていなければ手遅れであっただろう。


 ――ピシッ……! 氷の壁に亀裂が走った。


 (……凄まじい威力。バハムートの巨体を吹っ飛ばすだけはありますね)


 これはバハムート一体では厳しいようであった。


 「 出番ですよ 」


 ……ならば、こちらも奥の手を出すまでであった。



 「 ミラースライム 」



 ……それが、対カノンくんの最終兵器であった。


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