第336話 『 クリスVS〝おろち〟 』
――〝額〟の頭が吹き飛んだ。
……難しいことなど何一つ無かった。
俺は奴の〝箱庭〟により一度死に、そして蘇生し、油断した奴の背後から神速の〝雷〟で頭を貫いた。
……ただそれだけである。
「誉めてやる。貴様は俺に〝第3形態〟まで出させた」
俺は生き、〝額〟は頭を失い、首からした下は力なく倒れた。
「だが、貴様は俺に歯向かった」
俺は〝額〟の遺体に背を向け、〝魔眼〟の示す方向へ歩み出した。
「死ぬ理由などその程度に過ぎぬよ」
俺は歩む――西へ。
……〝白絵〟を殺す為。
……強くなる為。
「 貴様の出番は終わりだ。後は地獄の底で這いつくばっていればよい 」
……向かう先には〝八精霊〟がいた。
「――ッッッッッッッッッッ……!」
――肩に激痛が走った。
見れば鎖鎌がわたしの肩を貫いていた。
(速い! 刺された! いや、今はそれよりも――……!)
――二本目の鎖鎌が迫る。
「かわさないとッ……!」
――ギュルッ……! わたしは斬撃に沿うように身体を独楽のように回転させて、鎖鎌を回避した。
「 で? 」
――ギッッッ……! 〝おろち〟がわたしの肩に刺さった鎖鎌の鎖を思いっきり引いた。
――同然のように引っ張られた鎖鎌はわたしの肩を切り裂いた。
「ッッッッッッッッッッ……!」
痛い! 痛い! 右腕が焼けるように痛い!
わたしは堪らず地面を転がった。
「……っ!」
――既に二本の鎖鎌がわたしに迫っていた。
(痛がっている暇なんて無い……!)
わたしは地面に手を当てた。
氷 槍
――ドッッッッッ……! 地面から鋭利な氷が飛び出し、迫り来る二本の鎖鎌を弾いた。
「……………………やっと」
……やっと連撃が止まった。
(速くて、正確で、鋭い怒濤の連撃……こんなの凌ぎきれないよ)
やはり、手負いといえど〝KOSMOS〟の一人、格上であることは変わらなかった。
「弱いねー、君」
「……」
手負いではあるものの〝おろち〟は余裕そうに笑った。
「僕のスピードにまるでついていけてない♪」
「……」
「だから次の攻撃でお前は死ぬんだよォ……!」
――ドッッッッッ……! 〝おろち〟が一挙に間合いを詰めてくる。
(……見えないし、追い付けない――だから!)
「 魔導具 」
――発動と同時、〝おろち〟の身体が遅くなった。
超 重 力 の 網
「相手を遅くすればいいよね……!」
「身体、重ー」
しかし、所詮は目で追えない程に速い〝おろち〟が、辛うじて対応できる速さになっただけであった。
しかも、〝超重力の網〟の代価として、わたしの耐久性は通常の半分程度まで劣化していた。
「でーもー」
〝おろち〟は構わず前へ進む。
「完全に止められないなら意味ないよねー」
――〝おろち〟の眼が妖しげに輝く。
「ほら、凍れ」
――ピシッッッ……! わたしの身体が石化した。
蛇 眼
「――ッ!」
……石化能力!? 油断した!!
わたしは間に合うかどうかわからないが、地面から巨大な氷壁を出して、〝おろち〟とわたしの間に壁をつくった。
すると、石化はあっさりと解除された。
(一か八かが上手く行って良かった)
わたしは恐る恐る氷壁の横から〝おろち〟の様子を窺った。
……そこには誰も居なかった。
「――えっ」
――トンッ……。氷壁を足場に〝おろち〟がわたしの頭上にいた。
「首、もーらったァ♪」
「――」
――凶刃が振り下ろされる。
――わたしは咄嗟に身を捩った。
……あっ
これは
かわしきれな い
――気づけば、わたしは鎖鎌と首の間に腕を立てていた。
「――ッ」
――コンッ……。わたしの腕の骨と鎖鎌が交差した。
……そして、それは僅か一瞬の静止を生んだ。
――その一瞬ッッッッッ……!
……その一瞬でわたしは斬撃の線から逃れた。
だけど、それはただではない。
……血飛沫が舞う。
……何かが宙を舞う。
――腕
……そう、失ったのだ。
……わたしは右腕を失ったのだ。




