第27話 『 決着。そして――…… 』
灼 煌
黒 朧
――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!
……最初は赤。
……続いて黒。
……そして――白。
その衝撃は強大で、周囲にあるもの全てを破壊する。
圧倒的な光が暗い森を呑み込み、熱が全てを灰塵とし、暴風が木々を薙ぎ倒す。
そこには二つの破壊が入り交じった巨大な破壊の固まりがあった。
大地が割れる。
暴風が吹き抜ける。
そこにはただ破壊があった。
しかし、やがてその光は収縮する。
大地は静まり、
暴風も止む。
そして、訪れる――……。
沈黙。
「……」
全ての魔力を出し尽くしたらカノンは、〝黒朧〟を両手に膝を着いた。
「……相討ち?」
カノンの目の前にあるのは地形が変わってしまった大地と、舞い上がる土煙だけであった。
……相討ち。
それは半分正解だった。しかし、半分である。
確かに、〝灼煌〟と〝黒朧〟の撃ち合いは相討ちだった。
だが、カノン。お前は一つ勘違いしている。
男と男の喧嘩って奴はなどちかが倒れるまで終わらないんだよ。
――ボッッッ……! 俺は土煙を突き破ってカノンへ突進した。
「 !? 」
「悪いな、カノン」
――空龍心剣流魔剣術抜刀奥義。
「 この喧嘩 」
既に〝火龍装填・紅蓮斬華〟は解除されていた。
俺はカノンの目の前まで到達する。
そして、解放される白銀の刃。
天 浄 展 華
刃 摩 一 条
「 俺の勝ちだ 」
――超・炸・裂! カノンは天高く打ち上げられた。
……………………。
…………。
……。
「……あれ……僕」
……それから、カノンが目を覚ましたのは戦いから三時間後であった。
「起きたか」
「……」
カノンは上体を起こし、周囲をキョロキョロと見渡し、最終的に俺の方を見た。
「……僕は、負けたんだね」
「ああ」
カノンは複雑そうな表情をして俯いた。
ちなみに、カノンは生きていた。何故なら、最後の天浄展華刃摩一条は峰打ちだったからだ。
「気を落とすなよ、今回は俺が勝ったが実力ではお前の圧勝だ」
「気休めはやめてよ」
……気休めなんかじゃない。
今回、俺は〝火龍装填・紅蓮斬華〟を使って勝ったんだ。それはつまり、俺とフレイの二人の力で勝ったってことなんだ。だから、俺一人じゃカノンの足下にも及ばないんだよ、実際は。
「……これからどうするんだ」
「……」
俺の質問にカノンは沈黙した。
「また、魔王城に行くのか?」
「……」
カノンは俯いて、思案に耽る。
「……うん……行くよ」
「……」
「ただし、今じゃない」
「……むっ?」
カノンが面を上げて、俺の目を真っ直ぐに見つめた。
「もう、命を軽んじて捨てるような真似はしない。もっと、今よりもずっと強くなってから魔王城には行くんだ」
「……どういう風の吹き回しだよ」
「別に君に説得されたわけじゃないけど、タツタくんに負けて改めて自分の弱さを痛感したんだ」
「……」
……その瞳には希望の光が宿っていた。
「僕は弱い、もう充分頑張ったと思っていたんだけど、どうやらまだまだだったみたいだね。君と全力で戦って痛感したよ」
「そうか、よかったな」
……どうやら、やけくそに命を投げ出していたカノンはもういないようだった。
無論、カノンの中の闇は依然として胸の中に巣くったままだ。
〝白絵〟を殺すまでカノンの復讐は終わらないのだから。
だがら、俺にできたことはほんの小さなことだった。
――自分はまだまだなんだと知らしめること。
……ただそれだけだった。お恥ずかしいことに。
でも、良かった。これでしばらくの間、カノンは生き長らえることができた。それがカノンにとって本当に良いことかはわからないが、少なくとも目の前の笑顔は俺が戦ったに価するものであった。
「 ところで 」
カノンがズズイと俺に顔を寄せてきた。少しドキッとした。少しだけな!?
「タツタくん、他に仲間はいる?」
「……仲間?」
俺の仲間はフレイと……ああ、ギルドか。最近出番が無さすぎて忘れそうだった。
「いるよ」
「 じゃあ! 」
更にカノンが俺に顔を寄せてきた……だから近いって。
「……あと一人くらい欲しいなあ、とか思ってたりしない?」
「……」
「……」
「……えっ、お前仲間になってくれんの?」
「うっ、うん。他に行く宛もないのでそうしてくれると嬉しいな」
……まさか、予想外なタイミングで仲間が増えるとはな。世の中、何が起こるかわからないってもんだ。
俺は右手を差し出す。
カノンはその手を受け取った。
「じゃっ、よろしくな」
「うん、よろしくね」
……こうして、俺のパーティーに〝六式銃士〟――カノン=スカーレットが加わったのであった。




