第25話 『 タツタVSカノン 』
「邪魔をしないでくれ、タツタくん」
カノンは銃口を俺に向けて、悲しげに言い放った。
「できれば僕は人を殺したくない」
「やだね」
俺はきっぱりと切り捨てた。
「俺もあんたには死んでほしくないんだ」
俺は〝SOC〟を再び握り直して、カノンを真っ直ぐ睨み付けた。
「だから、ここを通りたければ俺を倒してから行くんだな。どの道、俺に手こずるようじゃ、〝白絵〟はおろか、門番にすら相手にならないぜ」
「……忠告はしたよ」
カノンが諦めの溜め息を吐いた。
「 行くよ 」
カノンの手に握られた拳銃――……。
「 〝火音〟 」
……それはルビーのように鮮やかな鉱石で造られていた。
「君が悪いんだよ」
――ゾクッ!? 何かでかいのが来る!?
「君が僕の邪魔をするからいけないんだ」
――俺は咄嗟に横へ跳ぶ。
引き金が引かれる。
――チカッ、一瞬銃口から強烈な光が走った。
次の瞬間――……。
破 王 砲
――轟ッッッッッッッッッ……! ついさっき俺がいた場所が熱線によって消し飛んだ。
たった一発でなんつぅ威力だよ!
「これが最攻の拳銃――〝火音〟」
カノンは〝火音〟をホルダーに仕舞った。
「 そして 」
今度は別の拳銃を取り出した。
「 これが変化する拳銃 」
……それは青い。まるでアクアマリンのように青い鉱石で造られた拳銃であった。
「 〝水蓮〟 」
――計六発の弾丸、間髪容れずに撃ち出された。
(クソッ、イカれた早打ちだな)
だが、今の俺ならこの程度の弾丸なら――……。
一発、二発、三発! 四・五・六発!
――かわしきれる!
「どうだっ」
俺はカノンの方を見て、挑発的な笑みを浮かべた。
「 !? 」
――ニヤリッ、カノンが笑った。
――曲ッッッッッ……! 俺がかわした筈の弾丸が軌道を替えた。
(軌道が変化する弾丸だと……!)
曲がる、曲がる。六発の銃弾は綺麗な弧を描き空を切る。
勿論、弾丸の向かう先は――……?
「――っ!」
俺は咄嗟に〝SOC〟でガードした。
「 遅いね♪ 」
……カノンが嗤った。
――ドッドッ、弾丸二発。俺の腕と横腹を貫通した。
「――ッ!」
四発は辛うじて〝SOC〟で捌けたが、二発取りこぼしたか!
「 ほら 」
――声は俺の横から聴こえた。
「 集中力を切ったら駄目だよ 」
……カノンは既に俺に銃口を向けていた。しかも、その拳銃は――〝火音〟!?
「――っ!?」
俺はカノンから逃げるように後退しようとした。
「タツタさんっ!」
フレイが悲鳴を上げて、俺の下へ駆け出した。
「間に合ってっ!」
フレイが走る。
「――っ!」
俺も後ろへ下がる。
「 ♪ 」
……しかし、カノンは逃がさない。
銃口をしっかりと俺に定めたまま――……。
「 BANG 」
……引き金を引いた。
――轟ッッッッッッッッッ……!
……大火力の熱線が俺を呑み込んだ。