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  第24話 『 復讐トリガー 』



 「 〝白絵〟 」


 ……また、その名前だ。

 〝白絵〟、お前は一体何者なんだ。

 ……あるときは、アークを救った救世主。

 ……あるときは、カノンの家庭を踏みにじった極悪非道な悪魔。

 どっちが本当のお前なんだ?

 それとも、どっちも本当のお前なのか?


 「あいつがウチに来たのは星の綺麗な夜だった」


 ……おっと、また考え事していたな。カノンの話に戻ろう。

 家族団らん、全員揃ってリビングで夕食を食べていたときだった。


 ――コンコンッ、ノックの音がしたのだ。


 そして、こちらが対応するよりも早くその扉は開かれた。

 スカーレット邸の玄関に足を踏み入れたのは、

 長く、白い長髪に、

 漆黒のイヤリングとマントをなびかせた、

 飄々とした雰囲気の少年であった。


 ……〝白絵〟である。


 〝白絵〟は玄関に入るや否や、スカーレット邸をキョロキョロと見渡した。

 ゲインは客人対応の為に〝白絵〟の前に出た。カノンやマリー・アメリアは影からその様子を窺っていた。

 〝白絵〟はゲインが話し掛けても無視して、部屋を見渡した。


 ――そして、〝白絵〟とカノンの目が合ったのだ。


 〝白絵〟はぱあっと笑顔になり、土足で廊下を踏み荒らし、カノンの前に現れた。

 〝白絵〟はジロジロとカノンを見るや、


 「見つけた、才能の原石☆」


 ……とカノンを見下ろして笑った。

 突然、侵入してきた変質者を家の長であるゲインが見逃す筈もなく、ゲインは〝白絵〟に歩み寄って、何をしているんだとその腕を掴んだのだ。


 「 いってぇな、クソジジイ 」


 〝白絵〟がギロリとゲインを睨み付けたのだ。


 次 の 瞬 間 。


 ――ゲインは一瞬にしてバラバラに引き裂かれたのだ。


 一瞬にして血と肉塊になってしまった父親の姿を前に残された家族は騒然とした。

 エリーはカノンとアメリアの手を引いて〝白絵〟とは反対の方向へ駆け出した。

 カノンの頭の中は真っ白であった。

 訳がわからなかった。

 昨日まで続いていた平穏そのものな日常が突然終わりを告げたのだ。心の整理がつく筈がなかった。

 しかし、〝白絵〟は逃げる家族を見逃さない。

 瞬間移動で家族の前に現れてはマリーの首を断頭したのだ。

 残ったのはカノンと妹のアメリアだった。

 カノンは拳銃を取り出し〝白絵〟に発砲した。

 しかし、〝白絵〟には一発たりとも届くことは無かった。全て、目の前で灰になってしまったのだ。

 圧倒的な実力さに絶望したカノンに〝白絵〟が言った。


 「恨めよ、カノン=スカーレット」


 〝白絵〟は絶望に膝まついたカノンを見下ろして笑った。


 「父を殺され、母を殺され、これから妹を殺す、僕、〝白絵〟をね☆」


 ……次の瞬間。


 ――アメリアは一瞬にして灰になった。


 ……断末魔を上げる暇すら無かった。アメリアは灰色の粉になってしまったのだ。


 「そして、忘れるなよ」


 泣き崩れるカノンに〝白絵〟が嗤った。


 「その絶望と復讐心を……」


 ……そして、〝白絵〟はその場を消え去った。

 父は引き裂かれ死んだ。

 母は断頭されて死んだ。

 妹は灰になって死んだ。


 ……カノンだけ、

 ……カノンだけが生き残った。


 あとは皆――……。



 ――死んでしまった。



 ……………………。

 …………。

 ……。


 「 以上が僕の昔話だ 」


 カノンが辛そうな顔をしながら話を打ち切った。


 「だから、僕は〝白絵〟を殺さないといけないんだ。たとえ、それがあいつの願い通りだとしてもね」


 カノンは真っ直ぐと俺を見据えた。


 「さあ、話したよ。僕に魔王城への道程を教えてくれないかい」

 「……」


 カノンの壮絶な過去を聞いた俺は沈黙していた。

 カノンの覚悟は相当なものであった。だからこそ、俺は返す言葉を探していた。

 俺に人の復讐を止める権利は無い。そこまで図々しくないし、話に聞く限りじゃカノンには〝白絵〟を殺す権利があるような気がした。

 それにあの覚悟。犬死覚悟で戦うという強い意志があった。

 ……犬死?

 ああ、それか。それが気に食わなかったのか。


 「お前、〝白絵〟に勝てるのか?」

 「勝てる、勝てないは関係ないよ。僕はあいつに復讐しないといけないんだ」

 「お前、死ぬぞ」

 「……」


 〝白絵〟に勝てないことぐらいカノンにだってわかっていたのだ。だからこそ、カノンは戦うのだ。


 ……カノンは死にたがっていた。


 強くなれば、強くなるほどに〝白絵〟との力の差を痛感したのだ。

 もう、恨み続けることに疲れてしまっていたのだ。

 だから、一思いに戦って、華々しく死のうとしていたのだ。


 「……道を教えてくれないか」

 「……」


 カノンの頼みに俺は閉口した。


 「道を教えろ、タツタくん」

 「やだね」


 ……俺はカノンの頼みを一刀両断した。


 「俺は復讐の手助けはしてやっても、自殺の手助けなんて真っ平御免だね」

 「……わかったよ。もう、君には頼らない」


 カノンは俺にそっぽを向いて、歩きだした。


 「……」


 カノンは歩く。歩く。歩く。


 「……」


 歩く。歩く。歩く。歩く――止まる。


 「……どういうつもりだい」


 カノンは俺の方を睨み付けた。何故ならば俺は――……。


 「悪いな、カノン」


 ……〝SOC〟の切っ先をカノンに向けていたからだ。


 「 ここから先は通行止めだ 」


 ……俺は〝SOC〟を構えた。


 「 誰も僕の邪魔はさせないよ 」



 ……カノンが拳銃を一丁ホルダーから取り出し、銃口を俺に向けた。


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