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 第271話 『 蟻蟻蟻 』



 ……ジャヤの洞窟。


 ――背後から猿のような魔物が俺に襲い掛かる。


 「 これで二百と七匹目 」


 ――猿型の魔物が鋭利な爪を振り下ろす。


 ――しかし、俺は俺はカウンターで猿型の魔物を一刀両断する。


 「……だっけ?」


 崩れ落ちる猿型の魔物。


    同    時    。


 『 グオォォォォォォォォォォッッッ……! 』


 ――ドッッッッッッッッッ……! オークが巨大な戦斧を俺に叩き込む。


 「 じゃなかった 」


 ――斬ッッッッッッ……! 巨大な戦斧は一刀両断された。


 『……グゴッ!』


 武器を無くしたオークが俺に背を向けて逃げ出す。


 「……これで」


 ……だけど、俺は逃がしてはあげなかった。


 ――トンッ……。俺はオークの目の前に立っていた。


 『グオォォォォォォォォォォォォォォッッッ……!!!』


 ――オークがヤケクソ気味に飛び掛かる。


 「 208 」



 ――斬ッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! オークが横一閃、一刀両断された。



 「弱いね♪」

 『……グ……ゴッ?』


 俺は〝幻影六花〟、壱の型――〝刃〟を解除し、オークはその場で崩れ落ちり。


 「……少し疲れたな」


 体力を損耗していた俺はその場に座り込んだ。

 この修業が始まってもうすぐ一日が経過する。

 倒した魔物の数は208匹。

 休憩時間はほぼ無し。


 (……お陰で感覚は戻ってきたね)


 視線・殺意・音・臭い、それらを感知する能力が研ぎ澄まされていくのが自分でもわかった。


 (……だけど、まだ足りない)


 確かに感覚は全盛期並みに研ぎ澄まされているけど、身体が今一イメージに追い付かなかった。


 (……雷帝武闘大会、予選敗退は俺だけだ)


 相手が〝七つの大罪〟で分が悪かったとはいえ、何も出来ずに敗北した。


 (……〝白絵〟との戦いでも時間を稼ぐことしかできなかった)


 ――俺は弱い。


 ……たぶん、もうタツタやカノン兄ちゃんにも勝てない。



 (ーーそんなの嫌だ!)



 ……何と言うか少し癪に障った。特にタツタ。


 (一日掛けて208匹、こんなんじゃ全然足りないね)


 もっと追い込まないと皆に置いていかれちゃう。


 「……」


 とはいえ、魔物が集まるとはいえ無限に湧いてくる訳ではない。夜は多いけど日中は数が大分減るのだ。

 だがら、俺はどうにかして魔物を集める方法を考えた。

 ……考えた。

 ……熟考した。






 ――ピカーン! 俺は閃いた。


 「……昔、〝むかで〟が教えてくれたっけ」


 俺はジャヤの洞窟の最深部へと目指す。


 (……このジャヤの洞窟には絶対に手を出しちゃいけない魔物がいる)


 走っていると何匹もの巨大な蟻の魔物が襲い掛かってくる。


 「邪魔」


 俺は蟻の魔物を薙ぎ倒し、ただひたすらに前へと突き進む。


 (蟻の魔物が増えてきた……そろそろかな)


 蟻の魔物を薙ぎ倒しながらジャヤの洞窟を駆け抜ける。


 「ほらいた」


 そこで俺は足を止める。


 「見つけたよ」


 俺は目の前に立つ巨大な魔物に〝刃〟を向けた。



 「 女王蟻 」



 ……そこには巨大で醜悪な女王蟻がいた。


 「恨みは無いけど死んでくれ」

 『gaGiGyaaaaaaaaaaaaaaa……!!!』


 ――女王蟻が襲い掛かる。


 ――俺も真正面から斬りかかる。


 ……それは一瞬のこと。


 女王蟻の長い脚が俺の頬を掠める。

 女王蟻の脚が一本切り落とされる。


 (……やっぱり他の雑魚よりは強いみたいだね)


 俺は頬を滴る鮮血を拭い、再び女王蟻に飛び掛かる。


 「 〝裂〟 」


 俺は〝刃〟を二本に分裂させた。


 「斬るッッッ……!」

 『gaGiGyaaaaaaaaaaaaaaa……!!!』


 ――俺の連続斬りと女王蟻の六本の鋭い爪が衝突する。


 交差する超高速の連撃。

 互いに増えていく傷。


 「埒があかないね」


 俺は痺れを切らして捌の型――〝闇〟を発動した。


 ――途端に視界が真っ暗になった。


 しかし、生まれたのは一瞬の隙。〝闇〟の発動により俺は一瞬だけ集中力を切らした。



 ――ドッッッッッッ……! 女王蟻の鋭利な脚が〝俺〟の身体を貫いた。



 「 あっ 」


 ――ニヤリッ、女王蟻が嗤った。


 ――ニヤリッ、〝俺〟が笑った。


 「 上だよ♪ 」


 ――俺は女王蟻の頭上にいた。


 ……女王蟻が貫いたのは〝闇〟を発動した隙に擦り換わった〝鏡〟であった。


 「 漆の型 」



         結



 ――二本の〝刃〟が合体して弓になる。


 「 〝裂〟 」


 ――更に一本の〝刃〟を召喚し、矢のように放つ。


 「……もっかい――〝裂〟」


 ――〝矢〟が五本に分裂し、各々が女王蟻の脚を貫く。


 「……だめ押し」



        氷



 ――女王蟻の脚を貫いた〝矢〟が氷結し、女王蟻を拘束した。


 『gaGiGyaaaaaaaaaaaaaaa……!!!』


 女王蟻が咆哮する。しかし、無情にも拘束は解けなかった。


 「さっきも言ったけど、あんたには死んでもらうよ」


 ――ドッッッッッッ……! 俺は女王蟻の腹を〝刃〟で貫いた。


 『gaGiGyaaaaaaaaaaaaaaa……!!!』


 女王蟻が苦痛に悲鳴をあげた。


 「たっぷりと痛めつけて、ね♪」


 俺は脳や内臓を外して、〝刃〟で斬りつけた。

 その度に女王蟻は悲鳴をあげ、体液を撒き散らした。


 ――だが、死なない。


 ……死なないように痛めつけているからだ。

 刺して刺して刻んで刺して刻んで刻んで刺して刺して刺して刻んで刺して刺して刻んで刺して刺して刺して刻んで刺して刺して刺して刺して刺して……。



 ……ざわっ



 「――」


 ……何かが蠢くような気配がした。


 「やっと来たか」


 ――ドッッッッッッ……! 俺は女王蟻の脳天を〝刃〟で貫いて留目を刺した。


 ……ざわっ、ざわっ


 そう、何かが近づいていていた。

 それは強大で、寡黙で、何より大群であった。

 やがて大群の内の一匹が俺の前に現れた。


 ――蟻である。


 ……それは巨大で硬質な皮膚をした蟻であった。

 しかし、それで終わりではない。

 次から次へと巨大な蟻が集まってきた。

 蟻はやがて洞窟中を埋める。

 右も左も前も後ろも上も、蟻で埋め尽くされる。

 圧倒的。まさに圧倒的な数であった。百、千など下らない。洞窟の遥か先まで蟻で埋め尽くされていた。

 俺が殺したのはキラーアントの女王蟻であった。

 キラーアントは全長一メートルはある巨大な蟻である。

 そして、キラーアントの女王蟻がキラークイーン。全長五メートルはあるキラーアントの産みの親である。


 ……問題なのはキラークイーンであった。


 キラークイーンは他のキラーアントに比べて巨大で力もあった。

 しかし、キラークイーンの恐ろしさはそれだけではなかった。


 ――フェロモンである。


 ……キラークイーンは死の危険に陥ると身体から無臭のフェロモンを放出する。

 そのフェロモンは半径十キロ圏内に拡散し、それを感知したキラーアントが女王蟻の下へと集まるのだ。

 昔からキラークイーンを集団で駆除した村が、大群のキラーアントに襲われ壊滅するのはよくある話であった。


 「……お前らの母親を殺したのは俺だよ」


 ……殺意。

 ……殺意!

 ……無数の殺意!

 それらが俺に集中した。

 コイツらに人の言葉はわからない。だが、伝わった筈だ。産みの親を殺された事実、産みの親を殺した張本人。


 「……御託はいらないか」


 俺の魔力が跳ね上がる。


 「 さあ、俺を殺しに来い……! 」


 ……それが皮切りであった。

 数え切れないほどのキラーアントの大群が俺に襲い掛かった。



 夜凪夕VSキラーアント×100000



 ――開戦……!


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