表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
273/462

 第262話 『 タツタとカノン 』



 「 うん、よろしくね! 」


 ……それは初めてカノンと出逢ったときの笑顔であった。

 俺から見たカノンの第一印象は――〝死に急ぎ女顔男〟であった。つまり、そんなに良い印象ではなかった。


 「 作戦通りだね、タツタくん 」


 ……次に思い返すのは〝おにぐも〟戦での共闘であった。

 初めての共闘にしては意外に息が合っていたと思う……まあ、二人の必殺技をぶつけてもピンピンしていた〝おにぐも〟にはかなり絶望させられたが。


 「 出番だ――〝重覇〟 」


 ……〝灰色狼〟への入属試験、カノンの成長スピードには驚かされた。

 その頃からだったかな、カノンに対してライバル心を懐くようになったのは……。


 「 駄目だよ! そんな破廉恥なこと! 」


 ……女湯を覗こうとしたときには衝突もした。不真面目な俺と優等生なカノンでは馬が会わないこともあった。


 「 怪我はないかな、タツタくん 」


 ……〝むかで〟に殺されそうになったとき、カノンは命懸けで助けてくれた。

 カノンだって、〝黒朧〟を撃って動けない筈だったのに、あいつは身を張って、俺を守ってくれたんだ。


 「 僕等は親友じゃないか 」


 ……仲間を捨てた俺にもう一度手を差し伸べてくれた。そのとき、口にはしなかったが泣きたくなるほどに嬉しかったんだ。


 「 ……タツタくん、僕、強くなりたいよっ 」


 ……満天の星空の下、俺とカノンは己の弱さに悔い、強くなることを誓った。

 あれから俺もカノンも強くなった。だけど、まだまだ強くならなければならなかった。


 ――〝白絵〟。


 ……俺も、カノンもこの男を超えなければならないからだ。

 その為にはもっと、もっと強くならなければならなかった。

 だけど、カノンと一緒ならどこまでも強くなれる気がしたんだ。

 カノンに負けたくない。その気持ちだけで俺は強くなれたんだ。

 カノンは仲間で、親友だ。だけど、それ以上に好敵手ライバルだったんだ。



 ――友達だから……!



 ……カノンはそう言ってくれた。 


 ……涙が溢れそうに嬉しかった。



 「 ああ、お前は最高の友達だ……! 」



 ……それが俺の答えであった。


 ……………………。

 …………。

 ……。


 ……厚い雲の隙間から三日月が覗けた。


 「……」


 俺は満身創痍な姿でイクサスの街路をさ迷った。

 既に祭の余韻も消え、街はとても静かであった。


 ――ぽつっ……。掌に滴が跳ねた。 


 「……雨か」


 呟く。そして、間も無くして――……。



 ――ザアァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ



 ……激しく雨が降り注いだ。


 「……」


 しかし、俺は走り出すことができなかった。まるで、鉄球でも引き摺るように覚束ない足を引き摺って歩いた。

 雨は容赦なく降り注ぎ、俺の身体を濡らした。


 「……だったんだ」


 俺は独り呟いた。


 「 友達だったんだ……! 」


 俺は絞り出すように吼えた。

 そう、カノンは俺の友達だったんだ。

 だけど、俺はその手を振りほどいたんだ。


 ――決別したんだ。


 ……カノンは地を這いつくばる。


 ……俺は街をさ迷う。



 ……雨は止まなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ