第259話 『 タツタVSカノン.Ⅲ 』
「……雷速を完全に見切ったのか?」
……僕はタツタくんの成長速度に度肝を抜かれた。
(……完全に見切っていたぞ。しかも、〝空門の呼吸〟を使わずに)
〝白絵〟に〝white‐canvas〟を使わせたその実力は、僕の知っているタツタくんを遥かに上回っていた。
「……本当に強くなっていたんだね」
「言っただろ。お前は俺に絶対に勝てねェってなっ」
タツタくんはまるで羽虫を払うように、僕の脚を弾いた。
僕は空中を一回転して着地した。
「……雷が通じないか。だったら!」
装填――……。
「 力で捩じ伏せる! 」
破 王 砲
水 旋
――僕の身体に二種類の弾丸が装填される。
「 んで! 」
――解放。
炎 魔 水 龍 弾
――ボッッッッッッッッッ……! 圧縮された高エネルギー弾が、タツタくん目掛けて放たれる。
「……〝白絵〟戦で見せた〝破王砲〟と〝水旋〟の複合技か」
タツタくんは逃げも隠れもせずに拳を構えた。
「その性質は縦横無尽に曲がる!」
タツタくんが右手に黒い魔力を集中させ、真正面から立ち向かう。
「だったら、曲がる前に壊す……!」
「 ハズレ 」
――形状変化。
「 〝炎魔水千弾〟 」
――巨大な熱弾は無数の小さな熱弾に分裂した。
「……っ! 軌道じゃなくて形を変えた、だと!?」
――無数の熱弾がタツタくんに襲い掛かり、タツタくんは堪らず防御の体勢を取らされる。
「 〝再装填〟 」
――その一瞬の隙に僕は〝雷鳴閃〟を装填し、タツタくんの間合いに侵入する。
「 & 」
――僕は右手に〝破王砲〟と〝重王弾〟を装填した。
「 〝解放〟 」
「――ッ!」
……タツタくんが後ろへ跳ぶ、が遅い。
炎 魔 重 王 拳
――ゴッッッッッッッッッッッッッッッ……! 超エネルギーと超重量を秘めた拳撃がタツタくんの土手っ腹に炸裂した。
「――ッッッッッッッッッ……!」
タツタくんは勢いよく吹っ飛び、地面を二度バウンドし、石壁に叩きつけられた。
石壁に亀裂が走る。
――トンッ……。僕はタツタくんが立て直すよりも早く、タツタくんの額に人差し指を添えていた。
「……悪いけど」
人差し指が赤く光る。
「 手加減はできないから 」
零 式 ・ 破 王 砲
――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 大火力の熱線がタツタくんを呑み込んだ。
……吹き抜ける爆風。
……崩れ落ちる石壁。
「 ……わかったよ 」
――舞い上がる粉塵の中から声が聴こえた。
「 手加減無しでやってやる 」
――視界が真っ黒になった。
「――」
「 〝超〟 」
……次の瞬間。
黒 飛 那
――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!!
「――がッッッッッッ……!」
……破壊の奔流が僕を呑み込み、吹っ飛ばした。
(……馬鹿な!)
……有り得なかった。
「……素手で〝黒飛那〟を撃てるなんて、聞いてないよっ」
僕は地面を転がり、そのままコロシアムの石壁を突き破った。
「おかしなことはないぜ」
……舞い上がる粉塵から出てきたタツタくんが答えた。
「〝黒飛那〟の正体は〝闇黒染占〟で強化された〝風刃〟だ。柄物が無ければ撃てない代物じゃない」
〝炎魔重王拳〟・〝零式・破王砲〟を食らってなお、タツタくんは平然としていた。呆れた頑丈さである。
「まっ、媒介が無い分、かなり威力は落ちるがな」
「……」
……威力が落ちていてこれ程の破壊力か。
「……認めざるを得ないみたいだね」
僕は軋む身体を無理矢理起こして、立ち上がった。
「 君は強い 」
身体にのし掛かるダメージがタツタくんとの実力差を物語っていた。
「 僕よりもずっと強い 」
……悔しいけどそれが現実であった。
「……だけど、それも今夜までだ」
装填――〝破王砲〟。
「僕は君を超える」
装填――〝雷鳴閃〟。
「僕が君の仲間だってことを認めさせてやる」
装填――〝水旋〟。
「この――………」
装填――〝重王弾〟。
……地面に亀裂が走る。
……空気が震動する。
装填――〝黒朧〟。
「 〝五頭龍〟で……! 」
……僕は異形の怪物になっていた。




