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 第229話 『 攻略法 』



  超   獣   変   化



 ……僕は〝破王砲〟・〝雷鳴閃〟・〝水旋〟を肉体に装填した。


 「……それが作戦その2かい?」

 「あア」

 「だと、すれば興醒めだね」

 「試してみよう」


 ――僕は雷速で〝白絵〟の背後に回り込む。


 「 か 」


 拳を振り抜く。


 「 無駄だよ 」


 ――しかし、僕の拳は〝白絵〟に当たる直前で弾かれる。


 「僕が例え何もしなくても超硬度の魔法障壁があらゆる物理攻撃を弾いてしまうからね」


 ……知っている。あの魔法障壁はニアさんの〝氷龍天華〟を以てしても破ることができなかった代物だ。


 「だヶど、僕の考察はまだ終わっちゃいナい」


 ――解放バースト



 えん    すい  せん  だん



 ――灼熱の破壊弾を〝白絵〟目掛けて放った。


 「……だから?」


 〝白絵〟は軽いステップで〝炎魔水旋弾〟を回避する。


 ――同時。僕は〝白絵〟の目の前にいた。


 ……そう、僕は〝雷華〟だけを解除していなかったのだ。



  雷   鳥   の   爪



 ――雷速の右手が走る。


 「 遅いよ 」


 ――パシッッッ……! 〝白絵〟は意図も容易く僕の右手首を掴み〝雷鳥の爪〟を止める。


 ……だけど、僕の攻撃はまだ終わっちゃいない!


 「 〝解放〟 」


 ――僕の右手から高電圧の雷撃が〝白絵〟に炸裂した。


 「もう、終わりかな?」


 ……しかし、それでも〝白絵〟には届かなかった。


 「この程度の電撃。魔法障壁を使うまでもない――……」


 ――僕は空いた左手で〝火音〟を抜き、その銃口を〝白絵〟に向けていた。


 「……零距離」



   破    王    砲



 ――大火力の熱弾が〝白絵〟に叩き込まれた。


 「そんな大味な攻撃、真っ正面から受けるとでも?」


 ……しかし、これも魔法障壁に遮られ〝白絵〟には届かない。


 「……」


 やはり〝白絵〟は別格だ。僕なんかじゃ敵わないのか。







 ……何て、今までの僕なら思うんだろうね。


 「……真っ正面が駄目か」


 僕は笑う。


 「 だったら後ろなら? 」


 ――〝白絵〟の真後ろに〝炎魔水旋弾〟が迫っていた。


 「――」

 「 BANG 」



 ――直撃。〝炎魔水旋弾〟が〝白絵〟に炸裂した。



 爆発の拍子に僕は〝白絵〟の手を振りほどき、後ろへ跳んだ。


 「……」


 僕の作戦は巧くいった。

 〝炎魔水旋弾〟は〝破王砲〟と〝水旋〟の合わせ技だ。その性質は旋回機能を有した大火力の熱弾。

 僕は〝炎魔水旋弾〟を放ち、〝炎魔水旋弾〟が旋回して戻ってくる位置に〝白絵〟を足留めすることにより意識外から攻撃を当てたのだ。


 「……考察その2。魔王は意識外の攻撃を捌くことができるのか?」


 ……実験結果は?


 「 うん、凄くいいね♪ 」


 ……無傷の〝白絵〟が立っていた。


 「君の考察は悪くはない。確かに僕の魔法障壁は任意でオンとオフを切り替えている」


 〝白絵〟は機嫌良く笑っていた。


 「勿論、常時発動することはできるけどそんなことをすれば疲れちゃうからね」


 ……だけど、と〝白絵〟は笑った。


 「僕の体表には常に魔力の膜が張っている。これは一切体力を消耗することはないし、意識の有無関係なく僕の体表を覆っている代物だ」

 「……」


 ……成る程。所謂、素の防御力ということになる。


 「勿論、魔法障壁に比べて強度は劣るがお前の〝破王砲〟ぐらいなら完全に凌ぐことができる」

 「それはどうも」


 ……嫌味な奴だ。


 「だけど、この魔力の膜は身体は守れても衣類は守れない」


 〝白絵〟は笑みを崩さない。


 「これ、僕のお気に入りのマント何だよね」


 〝白絵〟は少し焦げた漆黒のマントの先を摘まんだ。


 「それじゃあ、クリーニング代を戴こうか」

 「――」


 ――〝白絵〟の姿が消えた。


 「 御代はお前の命だけど♪ 」


 ――既に〝白絵〟の手が目の前にあった。


 「――えっ?」


 ――ガシッッッッッ……! 僕が何かするよりも速く、〝白絵〟は僕の顔を掴んだ。


  次  の  瞬  間  。



 ――僕の頭は地面に叩きつけられていた。


 「……がっ!」


 ……揺   る

     れ

         れ

 ……脳   揺   る

     が       。


 「ほら、起きなよ」


 〝白絵〟が僕の襟を掴み、無理矢理起こした。


 「じゃないと、空を飛ぶことになるよ」


 ……突然の遠心力。


 「……えっ?」


 ……僕の身体は宙を飛んでいた。


 僕は〝白絵〟にぶん投げられ宙を飛んでいた。

 そして、一度も地面に着地することなく――……。



 ――コロシアムの壁に叩きつけられた。



 「……ごがぁっ!」


 石の壁が崩れ落ちるほどの勢いで叩きつけられ、僕は一瞬意識が飛びかけた。


 「……何だ、こんなもんか」


 〝白絵〟は退屈そうに地にひれ伏す僕を見下ろした。


 「この程度なんだね、お前の力は」

 「……違う」


 僕はすぐに立ち上がり〝白絵〟の言葉を否定した。


 「この程度かい、お前の復讐心は」



    違    う    !



 「……この程度の筈がないだろう」


 ……考察その3。


 「……何度お前を殺したいと思ったと思う」



 ――僕の最大最強はどれだけ〝白絵〟に通用するのか?



 「……何度家族を思い出して涙を流したと思う」


 装填――……。


 「 〝破王砲〟! 」


 装填――……。


 「 〝雷鳴閃〟! 」


 装填――……。


 「 〝水旋〟! 」


 装填――……。


 「 〝重王弾〟! 」


 ……身体が軋む。


 ……自分が壊れそうになるのが何となくわかった。


 「……だけど、やるんだよ」


 ……目の前に立つ男は絶対に許してはいけない奴だから。


 「 装填――…… 」


 ……強大な魔力が渦を巻く。


 ……空気が軋み、地が揺れる。




     黒     朧




 ……そして、圧倒的な力場が解放される。


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