第18話 『 火龍烈伝 ~火龍装填・紅蓮斬華~ 』
……巨大な火柱が立ち上がる。
憑 依 抜 刀 !
……紅蓮の業火が〝SOC〟の刀身を渦巻く。
火 龍 装 填
紅 蓮 斬 華
……そして、進化する――〝SOC〟。
「 行くぜ 」
俺の手に握られた〝SOC〟は既に以前の形を失い、新たなる姿をしていた。
その刀身は燃え盛る炎の如く赤く、
更に巨大になり、
俺の背中には三枚の赤い花弁の翼が伸びていた。
「 紅蓮業炎流魔剣術 」
俺は〝SOC〟を高く持ち上げた。
「 オーバーヒート 」
そして、振り下ろす。
火 龍 天 焼
――赤い衝撃波が地面を走り抜けた。
『 ……ブ
モッ? 』
……キングミノタウロスが一刀両断された。
「言ったろ」
――同時。
「火傷するってな」
キングミノタウロスの身体は紅蓮の業火に焼かれ、灰になった。
「……来たか」
茂みが揺れる。
『ギギガッ』
『グルルルッ』
『キィーーーッ』
『オッオッオッ』
『グラァァァァァッ』
……俺の火柱を目印に、魔物が次々と姿を現した。
「いいぜ」
俺は〝SOC〟を構えた。
「掛かってきな」
――全身鋼のゴーレムが俺に飛び掛かってきた。
「……おっ、硬そうだな」
……でも、関係ないね。
俺と鋼のゴーレムの距離――五メートル。
俺は〝SOC〟を構える。
鋼のゴーレムは加速する。
「 13000℃ 」
――斬撃一閃。
「それが〝火龍装填・紅蓮斬華〟の刃の温度だ」
一 刀 火 斬
……鋼のゴーレムが一刀両断された。
「畳み掛けるぜ」
俺は地面に〝SOC〟を突き刺した。
炎 幕 展 開
――轟ッッッッッ……! 地面から炎が噴き出した。
燃え盛る炎は魔物らを囲う。
「捕まえた」
魔物らは炎に怯えて、動けない。
「お前ら知ってるか?」
……俺は炎の中から魔物らに語りかけた。
「この〝火龍装填・紅蓮斬華〟は炎を自在に操ることができる」
魔物らは気づかない。
「だから、こんな風に」
――ボッ、俺が炎を突き破って魔物らに突進した。
「熱くない炎だって作り出せるんだ」
火 影 斬
――横一閃。魔物が二匹、一刀両断された。
「後ろ、がら空きだったぜ」
残り――八体。
「これで終わらせてやる」
俺は〝炎幕〟によって一ヶ所に集められた魔物らを睨み付けた。
「 光焔万丈 」
赤い花弁の翼の一枚が砕け散る。
「 焼き尽くせ
燃やし尽くせ 」
〝SOC〟が激しく赤光を解き放つ。
「 灰は灰に 」
――ギュッ、俺は柄を力強く握った。
「 天上天下骨肉灰塵 」
――極限解放。
灼 煌
……そして、俺は〝SOC〟を振り下ろした。
……………………。
…………。
……。
「 あー、死ぬかと思った 」
……俺は森のど真ん中で仰向けになって、倒れた。
既に〝火龍装填・紅蓮斬華〟は解除され、俺と〝SOC〟は元の姿形に戻っていた。
「……あの、タツタさん」
フレイは既に元の人の姿に戻っており、何かを言いたげにもじもじとしていた。
「その、ありがとうございます。タツタさんの頑張りが無かったら、わたしたち二人はここで死んでいました」
フレイは深く深くお辞儀をした……何だか照れ臭いな。
「別に感謝することないさ、この勝利は俺とお前、二人で勝ち取ったものだろ」
「……はい、ありがとうございます」
……また、感謝された。
「……それにしても凄い威力でしたね」
「ああ、〝灼煌〟か」
〝火龍装填・紅蓮斬華〟の奥義――〝灼煌〟は一日三発しか撃てない。限定条件付きの技である。
「……確かにこれは凄い威力だ」
俺は右手の方向を向いて、呟いた。そこには――……。
……焼け焦げ、抉れた大地が広がっていた。それしかなかった。
かつて一面の緑に覆われていたその森は、全て灰になってしまったのだ。
「……何で笑っているんですか?」
フレイが俺に訊ねた。
……俺は笑っていたのだ。
そうか、俺は嬉しかったのだ。
――強くなりたい。
……かつて、曇り空の下、大粒の涙を流して泣いていたギルドを見てそう思ったんだ。
俺は弱い。〝白絵〟や〝からす〟は勿論のこと、ギルドにすら敵わない。
でも、強くなっていた。
少しずつではあるが前に進んでいた。
それが嬉しくて仕方がなかった。
「……何でもないよ」
俺はフレイの質問にそう答えた。
「ただの思い出し笑いだ」
……俺は暗黒大陸の空を見上げた。そこにはただ暗く、灰色の空が広がっていた。しかし、俺の気持ちはとても清々しいものであった。不思議なことに。