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 第228話 『 対戦相手は? 』



 「 お待たせしました! ただ今を以て雷帝武闘大会準決勝戦を開始しまーす! 」


 ……トラ子のはつらつとした声がコロシアムに響き渡った。


 「……遂に始まるのか」


 俺は緊張した面持ちでこれから始まる死闘に覚悟を決めた。


 「タツタくん、お互い頑張ろうね!」

 「おう」


 隣で待機しているカノンが鼓舞してくれた。

 雷帝武闘大会も終盤に差し掛かり、残る選手も俺・カノン・バタフライ仮面・〝白絵〟の残り四人となっていた。


 (……T.タツタから二人勝ち上がったのは上出来だが、他の一人がバタフライ仮面。そして、最後の一人は――)


 俺は東の方向へ視線を傾ける。


 「……♪」


 ……〝白絵〟が飄々とたたずんでいた。


 ――魔王、〝白絵〟。


 ……あらゆる魔術を創造し、それを実現する〝特異能力〟――〝white‐canvas〟に加え、Lv.55100という規格外の経験値から為す基礎戦闘力はまさに化物である。

 果たして、俺とカノンはこの化物に勝てるのだろうか?


 ――無理。


 ……その二文字を頭に浮かべるのは容易いことであった。


 それほどまでに〝白絵〟の強さは圧倒的であった。


 (……とはいえ諦める訳にもいかないな)


 この大会の優勝賞品は雷の精霊――〝アルマガンマ〟。俺がこの先強くなるには必要な奴であった。


 (……残り一試合。どうにかして奴の弱点を見極めてやる)


 それが今の俺とカノンにできる唯一の悪足掻きであった……まあ、二人共この準決勝で敗れたら見極める以前の問題だが。


 「……タツタくん、始まるよ」

 「あっ、ああ」


 ……カノンの呼び掛けにより、俺は再びトラ子の声に耳を傾けた。


 「それでは準決勝第一試合の選手を紹介しまーす!」


 トラ子がビシッとこちらに手を突き出した。


 「 まず一人目はカノン=スカーレット! 」


 ――ワッッッ……! 会場から歓声が上がる。

 「そして、その対戦相手は――……」


 『……』


 ……一瞬の静寂。



 「 魔王――〝白絵〟だァァァァァァァァ……! 」



 ……遂に出たな。


 「……行ってくるよ」


 カノンが神妙な面持ちで前に出た。


 「出番だね♪」


 一方、〝白絵〟はいつも通りの飄々と表情でバトルフィールドに上がった。

 カノンと〝白絵〟が戦うということは――……。

 俺はバタフライ仮面の方へと視線を滑らせた。


 「……」


 俺の視線に気がついたバタフライ仮面が親しげに手を振った。

 俺の対戦相手はバタフライ仮面ということになる。

 俺は素っ気なくバタフライ仮面から視線を逸らし、再びバトルフィールドへと視線を戻した。


 「ずっと、この時を待っていたよ」

 「あれからどのくらい強くなったのか見せてもらおうか」


 カノンと〝白絵〟は対峙し、試合開始の合図を待った。


 「それでは! 雷帝武闘大会! 準決勝戦第一試合!」


 トラ子が豊満な乳を揺らしながら、力強くアナウンスする。


 「 カノン=スカーレットVS〝白絵〟! 」


 ――両者の視線が交差する。


 「 Ready…… 」


 「……あっ」


 ……俺は見た。


 「 fightッッッ……! 」


 ……あいつ、笑ってやがる。



 ――トラ子が挙げた右手を振り下ろした瞬間。カノンの拳が〝白絵〟に叩き込まれた。



 「……えっ?」


 俺は思わず呆けた声を漏らす。


 「せっかちだね、カノン=スカーレット」


 しかし、カノンの拳は〝白絵〟の右手に遮られ届いてはいなかった。


 「……〝白絵〟」


 ――ニコッ、カノンが笑った。


 「 僕はお前を殺すよ 」


 次  の  瞬  間  。



 ――カノンは〝白絵〟の背後いた。



  雷   鳥   の   爪



 ――雷速の右手が〝白絵〟に叩き込まれる。


 「やってみれば……♪」


 ……しかし、それも〝白絵〟は左腕でガードした。


 「言われなくて――も!」


 ――また、カノンの姿が消える。


 そして、見失うと同時に次の攻撃が〝白絵〟に放たれる。

 しかし、〝白絵〟は全ての打撃をガードする。

 雷速で攻め続けるカノンと雷速を見切って捌き続ける〝白絵〟。超高速の世界が目の前で繰り広げられていた。


 「……すげェ」


 最早、それしか言葉が出なかった。


 (……だが、どの攻撃も〝白絵〟には届いてはいない!)


 カノンの不可避の連撃ですら〝白絵〟には届かなかった。


 「残念だけど、雷レベルじゃ僕には届かないよ」


 〝白絵〟が欠伸を噛み殺しながら、カノンの攻撃を捌く。


 「……みたいだね」


 カノンは素直に停止した。


 「お前があらゆる魔術を創造し実現するなら、お前の知覚を上回る速度で殺せばいい。そう思ったんだけど甘かったみたいだね」


 ……カノンの言う通り、〝白絵〟の知覚と反射神経は雷速を超えていた。


 「なら、どうするつもりだい?」


 「作戦その2だ」


 ――装填チャージ


 「……お前が僕の家族を殺した日から僕はお前を殺すことばかりを考えていた」


 ……〝破王砲〟


 ――ボシュッッッッッ……! カノンの身体から蒸気が吹き出た。


 「……何度頭の中でお前と戦ったと思う?」


 ……〝雷鳴閃〟


 ――バチッッッ……! 紫電が空気を焼く。


 「……僕は」


 ……〝水旋〟


  メキッメキッ  グチャッ


     バキッ

        バキッ

 ジュルルッ   メキッ

      ギギギッ

   メキョッ   ゴキィッ


 ……カノンの身体が化物の姿に変わった。


 「今日コそお前ヲ殺ス……!」


 ……何てことはない。


 「 〝白絵〟! 」



 ……カノンは今日、この日を以て〝白絵〟を殺そうとしていた。


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