第222話 『 Burst‐end 』
「 翔べ――〝怪鳥〟 」
……〝糸氏〟は〝怪鳥〟の背に乗り、飛翔した。
「 装填――〝黒朧〟 」
……僕の身体に黒色のオーラが渦を巻く。
黒 龍
「……先に言っておくよ」
僕の鋭い眼光が〝糸氏〟を貫く。
「今の僕は今までの三倍強い」
「面白いネ」
……〝糸氏〟の両手には計十個の〝星〟があった。
「 ならばこっちは十倍ネ 」
……たった一撃でもヤバい〝流星〟が十倍か。喰らえば骨も残らないだろう。
「こっちの準備はできたヨ」
「うん、僕も準備万端だ」
……交差する視線。
……始まるのは純粋な殺し合い。
……生き残るのはどちらか一人。
「「 じゃあ、殺ろうか 」」
――計十個の〝星〟が〝糸氏〟の手から放たれる。
「確かに〝龍星群〟は凄まじい威力だけど」
……ジャリッ、僕は足の裏に力を入れた。
「当たらなければどうってことはな
――ガシッッッ……! 足首に〝紙刃〟が巻き付いた。
「――」
「 これで逃げられないヨ 」
〝紙刃〟は地面から伸びており、 僕に跳躍という手段を許さなかった。
「ツマラナイ幕引きだったネ、カノン=スカーレット」
「うおおぉぉぉぉぉぉッッッ……!」
……墜ちる〝星〟。
……逃げられない僕。
……嗤う〝糸氏〟。
「 星に祈れ、星に願え 」
龍 星 群
「 そして、星に殺されろ 」
――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!!
……世界が真っ白になった。
……爆風が押し寄せ、灼熱がこの身を焼いて、重力が殺された。
しかし、すぐに風は止み、熱も冷め、重力も蘇る。
代わりに粉塵が舞い上がり、バトルフィールドに静寂が訪れた。
「 死んだネ 」
……〝糸氏〟は舞い上がる粉塵と深く抉られた地面を、〝怪鳥〟の上から見下ろした。
「……カノン=スカーレット、最期まで哀れで愚かな男だったヨ」
舞い上がった粉塵は濃く、地上のほとんどを見ることができなかった。
「〝白絵〟様に家族を殺され、〝白絵〟様を憎み、〝白絵〟様の部下であるワタシに殺された」
もうすぐ粉塵が晴れる。
「貴様はワタシが出会った者の中で最も不幸な男だったネ」
……そこに僕の姿は無かった。
「 勝手に決めつけるなよ、〝糸氏〟 」
――僕は〝糸氏〟の頭上にいた。
「……貴様……生きて」
「 墜ちろ 」
黒 龍 の 爪
――僕の拳は〝糸氏〟の顔面に叩き込まれた。
〝糸氏〟は勢いよく落下し、地面に叩き付けられた。
――パキィィィッ……! 同時、〝糸氏〟の面が粉々に砕け散った。
「――かはっ」
〝糸氏〟が吐血し、地にひれ伏した。
「……身体が……動かないネ」
ダメージが大きかったのか〝糸氏〟は起き上がれなかった。
「……何故……生きている」
見下ろす僕に〝糸氏〟が問う。
「〝龍星群〟をその身に受けてなお、貴様は何故立ち上がれる」
「 潜った 」
――〝糸氏〟の疑問に僕は即答した。
「……回避もできなかったし、直撃したら死んでいた。だから、咄嗟に地面を掘ってダメージを緩和させた」
「……」
僕の回答に〝糸氏〟は沈黙した。
「……ワタシを……殺すネ」
「言われなくてもそのつもりだ」
その為に、僕は〝黒朧〟一発を右手に残していた。
「今殺さなければ、いつか来る〝白絵〟との戦いで、お前が僕を殺しに来る」
「……そうだろうネ」
僕の復讐対象は〝白絵〟。〝糸氏〟はその〝白絵〟の部下だ。遅かれ早かれ戦いは免れないだろう。
「 だから、今ここで殺す 」
……僕は人差し指を〝糸氏〟に向けた。
「……最期に言い残したことはあるかい?」
「……」
僕の質問に〝糸氏〟は少しだけ考えた。
「 誇れ、カノン=スカーレット 」
――〝糸氏〟が笑った。
「 ワタシに勝ったお前は強い 」
「 どういたしまして 」
解 放
「 さようなら、貴方は確かに強かったよ 」
……黒き波動が〝糸氏〟を呑み込み、一瞬にして消し炭にした。




