第221話 『 シーソーゲーム 』
「アァアァァアァァァァァァァァァァァッッッ……!」
……電撃が〝糸氏〟の身体を蹂躙し、彼の悲鳴がコロシアムに響き渡った。
「ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ……!」
僕は電撃を流し続け、〝糸氏〟は悲鳴を上げもがき続けた。
「……」
……違和感があった。
(……何だ、この手応えの無さは?)
そんな疑問を抱いた――そのとき!
――地面から〝紙刃〟から飛び出した。
「――ッ」
――僕は上体を捻って、辛うじて直撃を回避した。
しかし、〝紙刃〟を完全にかわし切ることはできず、僅かに横腹を浅く切り裂かれた。
「……やっぱりね」
僕は出血する横腹を押さえながら〝糸氏〟の方を見た。
……丸焦げとなった〝糸氏〟は紙人形となり、燃え尽きた。
「……囮だったか」
「正解ネ」
――〝糸氏〟は僕の背後に立ち、剣と化した〝紙刃〟で斬り掛かる。
「――ッ」
――僕は雷速機動で紙一重で回避する。
「……〝紙分身〟、そんなこともできたんだね」
「ワタシの〝紙物語〟に出来ないこと無いヨ」
……〝糸氏〟が懐から星形の折り紙を取り出した。
「……?」
「 〝星〟 」
〝糸氏〟が空高く〝星〟を投げ上げた。
「 それはアカンで、〝糸氏〟ちゃん 」
――聞いたことのある声がバニーガールの審判のいる方向から聴こえた。
「……〝額〟?」
そう、声の主は嘗て一度だけ僕達の前に姿を見せた男――〝封世〟の〝額〟であった。
「バニーの姉ちゃん、ボクの後ろへ下がっとき」
――ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……。
……何かが空を切りながら落下する。
「 死ぬで 」
――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 〝星〟が落下し、バトルフィールドを粉微塵に破壊した。
「――ッッッッッッッッッッ……!」
僕も堪らず吹っ飛ばされる。
(……この威力、〝飛行機〟なんかと比べ物にならない!)
「 〝流星〟 」
……〝額〟が呟く。
「文字通り、星が流れ落ちる程の威力を誇る〝糸氏〟ちゃんの必殺技……ホンマに無茶苦茶やで」
〝額〟の言うようにバトルフィールドは見る影もない程に粉々に砕け散り、巨大なクレーターが一つできていた。
「バニーの姉ちゃん、怪我はあらへんか?」
「……はい、お陰様で」
審判の言うように、〝額〟より後ろは一切の被害はなかった。
……一方、僕は?
「――かはっ」
……満身創痍であった。
全身傷だらけで、頭がクラクラするし、吐血だってしていた。
(……〝破王〟で身体強化したにも拘わらずこのダメージか)
正直、下位とはいえ〝魔将十絵〟を侮っていた。
「でも」
……まだ、戦える!
――僕は立ち上がる。
「顔に似合わずタフだネ」
「そりゃ、どーも」
僕は無理矢理にでも笑った。
「だけど、次で終わりネ」
〝糸氏〟は〝怪鳥〟の背に乗り、空高く飛翔した。
「今度は今の四倍ネ」
――空から四つの〝星〟が墜ちてくる。
……これはヤバい!
「 墜ちろ 」
龍 星 群
――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!!
……灼熱と暴風がバトルフィールドを蹂躙した。
……その場にある物全てを凪ぎ払った。
……とてもじゃないが、直撃すれば〝破王〟と言えど耐えられたものではない。
「……まあ」
……紫電が走る。
「 当たればね 」
――僕は〝糸氏〟の頭上にいた。
「――」
「 〝解放〟 」
破 王 砲
――直撃。〝破王砲〟は〝糸氏〟に叩き込まれ、〝怪鳥〟諸とも地面に落下させた。
「……遊びはここまでだ、〝糸氏〟」
僕は着地し、〝糸氏〟を見下ろす。
「そろそろ殺すよ」
「……やってみろ」
……両者の殺意がぶつかり合う。
……互いに体力は限界寸前。
「「 次で終わらせる……! 」」
……決着の時はもうすぐそこまで来ていた。




