第218話 『 本選‐第四回戦 』
「……」
……突如訪れた静寂。
「……」
……交錯した刃。
「……」
……互いが互いに背を向け、まるで時が止まったかのように静止していた。
――ピシッ……! 俺とギルドを中心に地面に亀裂が走り――弾け飛んだ。
……逃げ場を失ったエネルギーに地面が耐えきれず爆発したのだ。
「……タツタさん」
ギルドが〝終焔の剣〟を下ろした。
「どうした?」
〝SOC〟から闇の魔力が退いていく。
「 準決勝進出、おめでとうございます 」
――〝終焔の剣〟が粉々に砕け散り、ギルドはその場で倒れた。
「……流石はタツタさん。もうここまで強くなっていたなんて驚きですよ」
ギルドは倒れたものの意識は鮮明であった。
「もう、わたしなんかじゃ敵わないようですね」
会場から響き渡る拍手と歓声の中でもギルドの声はちゃんと聞こえた。
「 バーカ 」
――ピシッ、俺は寂しそうに微笑むギルドにデコピンをした。
「……ほえ?」
……ギルドは俺の行動に戸惑いの声を漏らす。
「俺がここまで強くなれたのはお前のお陰なんだよ」
「……わたしの?」
「ああ」
俺は倒れたギルドの上体を起こして、そのまま背中を差し出した。
「ほれ、乗れよ」
「はっ、はい」
ギルドは困惑しながらも俺の背に体重を預け、俺はそのままギルドを持ち上げた。
「ありがとな、ギルド」
俺は歩きながらギルドにだけ聞こえるように囁いた。
「お前と出逢って、初めて俺に涙を見せたあの日が無ければ今の俺はいないんだ」
「……」
会場の温かい拍手と黄色い歓声を背に俺はバトルフィールドを降りる。
「あの日、俺はお前を守りたいと、お前の涙を吹き飛ばしたいと思った」
「……」
出口を潜り、俺は治療所を目指して歩く。
「だから、強くなれた」
「……っ」
「 ありがとな、ギルド 」
俺の言葉を聞いたギルドが俯いた。
「……本当に……敵わないなぁ」
そして、掠れたような声で呟いた。
……こうして俺はギルドに勝利し、準決勝へと駒を進めた。
一人目は〝白絵〟。
二人目はバタフライ仮面。
三人目は俺。
そして、四人目は――……。
「 カノン=スカーレットVS〝紙刃〟の〝糸氏〟 」
……二人の内のどちらかが勝ち上がってくる。
「 本選‐第四回戦! 」
ウサ子のアナウンスが後ろから反響してくる。
「 Ready…… 」
コロシアム中が熱気を帯びる。
「 fightッッッ……! 」
……そして、戦いの火蓋が切って落とされた。




