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 第216話 『 タツタVSギルド 』



 「……まさか、こんな形でタツタさんと戦うことになるとは思いもしませんでした」


 ……ギルドは穏やかな笑みを浮かべていた。


 「俺もだよ」


 俺も思わず苦笑する。


 「……戦う前に一つ確認したいのですが」


 ギルドが周りに聴こえないよう小さな声でぼそっと囁く。


 「 本気でやります? 」


 ……ギルドの質問はごもっともなものであった。

 どちらが勝とうが負けようがT.タツタから一人勝ち上がり、一人脱落する。ならば、敵にどちらかがリタイアすれば他の選手にこちらの手の内を見られないで済むのではないだろうか。

 そう、それが正しい選択であった。


 ……正しい選択の筈であった。


 「 いや、全力でやろう 」


 ……しかし、俺はその選択肢を否定した。


 「……何故ですか?」

 「俺がお前と戦いたいからだ」


 俺は自分の気持ちを素直に答える。


 「全力のお前と戦ってそんなお前に勝ちたい……それが今の俺の望みだ」

 「……」


 真剣そのものな俺に対してギルドも真剣な眼差しを向けた。


 「……非合理的ですね」


 ギルドが小さな溜め息を吐いた。


 「だけど、わたしはその非合理的な選択を否定したくありません」


 ギルドはクスリと笑った。


 「わたし、ギルド=ペトロギヌスはカラアゲタツタのその要望に喜んで承りましょう」

 「……って、ことは?」


 「 真剣勝負をしましょう 」


 ギルドが不敵に笑んだ。


    同    時    。



 ――ゴッッッッッッッッッッッッ……! 膨大な魔力が噴き出した。



 「ギルド! やっぱ、お前は最高だよ!」


 俺も〝SOC〟を抜刀した。


 「何を話していたのかこちらから聞き取れませんでしたが、両選手ヤル気満々です!」


 ウサ子のアナウンスが俺とギルドの闘争心を煽る。


 「……」

 「……」


 俺とギルドは無言で睨み合う。


 「ふふふっ」


 ……笑うギルド。


 「ふふっ」


 ……笑うギルド。


 「……あれ?」



 ――カッッッッッ……! 閃光が視界を支配した。



 「 後ろ☆ 」


 ――目が眩んだ隙にギルドが俺の背後に回り込む。


 「――!?」


 俺は反射的に〝SOC〟を薙ぐ。


 ギルドが太陽の杖を振り抜く。



 ――杖と刃が交差した。



 「 BOM☆ 」


 「――」


 ――間髪容れず、大爆発が俺を呑み込んだ。


 バトルフィールドを吹き抜ける暴風と灼熱。


 (……これがギルドの戦闘スタイルだ)


 俺は爆風に吹っ飛ばされながらも分析を続けり。


 (高レベルな体術に多彩な魔術を織り交ぜた、遠近両立型戦闘スタイル)


 俺は〝闇黒染占〟を纏ったお陰で、辛うじてダメージを緩和することに成功していた。


 (特に魔術、技の出だしが速すぎて見切れねェ)


 俺は踵を磨り減らしながらも着地した。

 ガバッ……! 俺は頭を上げた。


 「――ッ」


 ……しかし、既に無数の光の刃に包囲されていた。 


 「 〝光刀包囲陣ブライド・ブレード・サークル〟 」


 ……まずい!


 「 〝炸裂バースト〟 」


 ――無数の光の刃が俺目掛けて降り注ぐ。


 「……包囲? 関係無いね!」


 ――俺は〝黒飛那〟で目の前の〝光剣〟を吹き飛ばす。


 「一点さえ穴を空ければ包囲は包囲じゃなくなる!」


 ――俺はそのまま〝黒飛那〟が空けた包囲の穴から飛び出す。


 「今度はこっちの番だ!」



 極  黒  の  侵  略  者



 ――バトルフィールドとその周辺が暗闇に呑まれた。


 (……これでお前の目を封じる!)


 空かさず俺は〝夜王の眼〟で視界を確保する。

 俺は暗闇に乗じて、ギルドに飛び掛かる。


 (これで形勢逆転――……)


 ――ギロリッ……! ギルドがこっちを見た。


 「――えっ?」


  次  の  瞬  間  。



 ――轟ッッッッッッ……! 大爆発が俺を吹っ飛ばした。



 「 なっ! 」


 ……何で見えているんだ!?

 俺は地面を転がるも、すぐに体勢を立て直す。


 ……ぶわっ、風が吹いた。


 ――俺は視線を上げた。


 「 !? 」


 ――そこには、脚を振りかぶったギルドがいた。


 (まずい! かわせない!)


 ――ゴッッッッッ……! ギルドの強烈な回し蹴りが俺の顔面に叩き込まれた。


 (――重っ!)


 俺は為す術もなく吹っ飛ばされ、堪らず〝極黒の侵略者〟を解除した。


 (……どうして?)


 俺は地面に倒れながら思考した。


 (アイツは確かに俺の姿を捉えていた……どうやって?)


 「 〝魔眼〟です 」


 俺の疑問にギルドが答えてくれた。


 「……聞いたことはありませんか? 一流の魔術師にでもなると魔力の流れを五感で感じ取れるんですよ」


 ……一流の魔術師、か。確かにそれは否定しようがないな。

 俺は煤と砂埃だらけの身体で立ち上がった……良かった、まだそれほどダメージは負ってないな。


 「……ギルド、お前やっぱり強いな」


 俺は自分を圧倒した仲間に称賛の声を投げた。


 「そんなお前に俺はずっと憧れていたんだ」


 ……最初、俺が手も足も出なかったMr.サニーとMs.ムーンと二対一でありながら善戦していた。

 ……暗黒大陸ではずっと守ってもらっていた。


 「あの時から俺はずっとお前を超えたいと思っていたんだ」


 俺は〝闇黒染占〟を全身に纏った。


 「だから、今日はお前に戦いを挑んだんだ」


 正直、俺の胸は興奮でドキドキしていた。


 「もう、憧れるのはやめる。妬むのもやめる」


 やっと越えられる。あのギルド=ペトロギヌスを……。


 「男とか女とか関係ねェ。一人の戦士として俺はお前を!」


 ――俺はギルドに〝SOC〟の刃先を向けた。



 「 ギルド=ペトロギヌスを越え――そして、勝つ……! 」



 ……それが俺の二度目の宣戦布告であった。


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