第202話 『 タツタ無双 』
「 fightッッッ……! 」
……虎柄ビキニの審判の開戦宣言と共に〝雷帝武闘大会〟Aグループの試合が始まった。
……同時。
「死ねっ! モテ男っ!」
「盛大にフラれろっ! そして、死ねっ!」
「いいから死ねェェェェェェェッ……!」
――三名の戦士が開幕と同時に飛び掛かってきた。
(……コイツら、最初から俺を狙ってやがったのかっ!)
無差別混戦の恐ろしさを俺は改めて実感した。
(……てか、あいつらのせいで目ェ付けられたんじゃね?)
俺は内心溜め息を溢した。
「余所見してんじゃねェよ!」
三名の戦士の一人、槍使いが連続突きを繰り出す。
「かわしきれるかなァ!」
双剣使いが目にも止まらぬ連撃を繰り出す。
「いいから死ねェェェェェェェッ……!」
ボウガン使いが矢を放つ。
――集中。
「「「 あっ? 」」」
――俺は槍による連続突き、双剣の連撃、全てをかわし切った。
「 見えてるぜ 」
――パシッ、少し間隔を空けて放たれた矢を俺は掴み取る。
「「「 !? 」」」
……あれ?
そこで俺は違和感に気がついた。
(……遅い?)
――否、それは違う。
コイツらは弱くなんかない。槍使いも双剣使いも怒濤の攻撃だったし、ボウガン使いのタイミングも悪くなかった。
(……でも、見切れた)
全ての攻撃がスローモーションに見えたし、死角から放たれた矢も見切れた。
(……そうか、コイツらは弱くなんかない)
……八雲の斬撃はもっと鋭かった。
……カノンのスピードはもっと速かった。
……〝むかで〟の攻撃はもっと隙がなかった。
……〝水由〟の連撃はもっと絶え間なかった。
(……〝空龍〟に〝KOSMOS〟に〝七つの大罪〟に〝魔将十絵〟)
……今まで戦ってきた奴等が強すぎたんだ。
「なら、倍速で行くぞっ!」
「俺は更にその倍速!」
「いいから死ねェェェェェェェッ……!」
――三名が同時に襲い掛かった。
「 空龍心剣流魔剣術 」
――俺はその三名を迎え撃つ。
八 叉 連 斬
――ドッッッッッッッッ……! 高速八連撃が三名を吹き飛ばした。
「……悪いな」
俺は〝SOC〟を納刀した。
「俺も今まで修羅場潜ってきたんだ」
三名の身体が地に落ちた。
「こんなところで立ち止まっている訳にはいかないんだよ……!」
俺は周りを見渡した。
最初20名はいた選手も、気づけば俺と後一人になっていた。
「おおっと、遂に残るは初出場の剣士――カラアゲタツタと昨年の大会準優勝者――ジル=シュタインだぁぁぁぁぁぁ……!」
ラウンドガール兼審判兼解説役の虎柄ビキニの美女がマイク越しに叫んだ……一人三役、すげェな。
「よう、お前やるじゃねェか」
「そうか?」
ジルが話し掛けてきた……上から目線だが気さくな感じであった。
「初めてにしちゃあ上出来だ」
「……何が言いたいんだ?」
さっさと本題に入らないジルに俺は早急な返答を追及した。
「率直に言おう。怪我をしたくなければ棄権しろ」
「……」
……何を言い出すかと思えばそんなことか。
「どうだ? 悪い話じゃないと思うが」
「お前、馬鹿だろ」
「――」
俺は喧嘩腰でジルを睨み付けた。
「御託はいいからさっさと来な」
ジルは紫電を纏うトンファーを構えた。
「……死刑確定だな」
――ドッッッッッッ……! ジルがトンファーを両手に――飛び出した。
「俺は昨年大会準優勝者、ジル=シュタインッッッ……!」
……スッ、俺は〝SOC〟を抜かず、拳を振り上げた。
「〝神速〟のジルだッッッ……!」
―― ジルが一瞬で間合いを制圧する。
……俺は微動だにしない。
――ジルがトンファーを振り抜く。
――ゴッッッッッッッッッ……! 俺の拳骨がジルの頬に叩き込まれ、ジルは地面を砕く程の勢いで叩きつけられた。
「 あっそ 」
「――ぐがっ!」
ジルは吐血しながら地面をバウンドする。
「大したことなかったな、あんたの〝神速〟」
「……」
やがてジルは地にひれ伏し、ピクリとも動かなくなった。
『……』
……昨年準優勝者の瞬殺にコロシアムが静まり返った。
「……あっ」
虎柄ビキニの美女が我に返った。
「 Aグループ勝者、カラアゲタツタァァァァァァ……! 」
「……どうも」
……俺はそれだけ言ってバトルフィールドから降りた。




