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 第185話 『 一人、また一人と……。 』



  水   霊   憑   依



 ……〝霊王〟により、クリスちゃんがわたしの中に入ってきた。


 ――ズシンッ、急に身体が重くなるような錯覚に陥った。


 「……っ!」


 やはり、クリスちゃんとの相性は良くなかった。

 ただでさえ青色の魔力と赤色の魔力は相性が悪いのに、クリスちゃんに内蔵している魔力量が桁違いに多いので、わたしの身体への負担が大きかった。

 とはいえ、今回の目標はタツタさんの捕縛である。それならば破壊力重視のフレイちゃんより拘束能力に長けたクリスちゃんの方が理に叶っているであろう。


 「来るよっ」


 ――〝極・黒飛那〟がタツタさんの口から吐き出される。


 「散って……!」


 ――わたしは左へ、カノンくんはフレイちゃんを抱えて右へ散った。


 「そして、常に反対の位置をキープ! なるべくタツタさんの狙いを撹乱して!」


 〝極・黒飛那〟を回避したわたし達は高速機動でタツタさんを包囲する。

 とはいえ、雷速移動のできるカノンくんに比べ、わたしは逃げ切ることすら困難であった。

 なんせ、今のタツタさんは常時〝極・闇黒染占〟を発動しているのと同義であり、その機動力はカノンくんに匹敵するものであった。


 (……この巨体でこの速力、正直厳しいか!)


 『……』

 「――」


 ―― 一瞬、タツタさんと目が合った。


 ――ドッッッッッッッッッ……! タツタさんの巨体が一挙に間合いを詰める。


 ……まずい! 速度を見極められた!


 「逃げ切れない、から!」


 わたしは右手をタツタさんへ構える。

 タツタさんは構わず直進する。


 「迎え撃つ……!」



   アイス    る    ショット



 ――無数の氷の礫がタツタさんに放たれる。


 『グルァァァァァァァァァァァ……!』


 タツタさんは一切の回避行動もせずに直進する。

 氷の礫がタツタさんの巨体を叩きつける。


 「……凍れ」



 ―― 一瞬にしてタツタさんの巨体が氷結した。



 (捕らえた、かな――……)


 『グルァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ……!』


 ――タツタさんを覆う氷が弾け飛んだ。


 「……っ!」


 なんて腕力。純粋な力で氷結を解除するなん――……。


 ――そこでわたしの思考は停止した。


 『ォォォォォォォォォッッッ……!』


 ――タツタさんが目の前にいた。


 ――タツタさんの凶悪な爪が襲い掛かる。


 (――反射神経、総動員ッッッ!!)


 ――斬ッッッ……! わたしは身を屈ませ、その頭上をタツタさんの爪が通過する。


 ( 集中ッッッ……! )


 ――間髪容れずに強靭な尾が振り抜かれる。


 ――わたしはその尾にそうように身を翻して回避する。


 (集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中集中)


 ――二つの爪と、一つの尾による絶え間ない連撃が襲い掛かる。


 わたしはそれを紙一重で回避し続ける。


 (集中右左集中集中上集中尾集腕中尾集中集カノンくん中腕集爪爪爪爪中集中集中集来てる中集中集中集中集中爪爪爪爪爪爪尾爪爪尾爪爪)


 ――チラッ、わたしは一瞬だけタツタさんの背後へと目をやった。


 「 〝重王弾〟 」


 ……そこには六発の弾丸が紫色の軌跡を描いて、タツタさんを貫いた。


 「ナイス誘導♪」

 「どういたしまして☆」


 ……〝重王弾〟は一発、70キロ、六発なら――420キロ! これならすぐには動け


 『グルァァァァァァァァァァァッッッ……!』


 ――いや、動ける! この程度ではタツタさんの動きを止めることはできない!


 「カノンくん! 追加の〝重王弾〟を……!」

 「うん、わか



 ――目の前に〝極・黒飛那〟が迫っていた。



 「「――」」


 ――ダッッッ……! わたしとカノンくんは咄嗟に跳躍して回避した。


 「……危な――って二発目!」


 ――更なる〝黒飛那〟が襲い掛かる。


 『ウヴォォォォォォォォォォォォォッッッ……!』


 タツタさんは滅茶苦茶に〝黒飛那〟を乱射する。


 「……近づくなってことかな」


 尽きることのない〝黒飛那〟の嵐、確かにこれでは近づけなかった。


 「いや、僕なら当てられる」


 カノンがフレイちゃんを抱えたまま前に出る。


 「フレイちゃん、援護頼んだよ」

 「任せてください!」


 ――カノンくんが〝雷華〟で飛び出す。


 「当たらないよ♪」


 カノンくんの雷速機動は無数の〝黒飛那〟を回避して、タツタさんに接近する。


 「ほら、追加の〝重王弾〟だ」


 カノンくんが〝重覇〟の銃口をタツタさんへ向ける。


 ――ゾクッッッッッ……! 嫌な予感がした。


 「カノンくんッッッ……!」


 ――ドッッッ……! 地面からタツタさんの強靭な尾が飛び出した。


 「カノンくん、逃げて……!」

 「良かった」


 ――スカッ、タツタさんの尾がカノンくんをすり抜けた。


 「保険、掛けといて♪」


 ……巧い! これはフレイちゃんの熱魔法によって生み出された蜃気楼だ!


 「これで840キロだ」


 ――ガクンッ! タツタさんが下を向いた!


 カノンくんが引き金を引く――同時、タツタさんが〝極・黒飛那〟を地面へ放った。


 「……えっ?」


 戸惑うカノンくん。次の瞬間――……。



 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!! 周囲一帯が吹き飛ばされた。



 「カノンくーーーんッ!」


 やられた! 地面に〝極・黒飛那〟を撃ち込み、逃げ場を求めた衝撃波が周囲一帯を吹き飛ばす――これなら〝雷華〟でもかわしきれない!

 土煙が舞い上がり、よく見えないが無事ということは無いだろう。


 (……お願い、どうか命だけでも無事でいて!)


 やがて土煙が晴れて視界が鮮明になる。


 「……ぐっ……う」

 「……うぅっ」


 二人とも生きていた。とはいえ、既に戦えるような状態ではなかったが……。

 晴れた土煙からタツタさんの姿が露になる。


 (まずいっ……!)


 タツタさんは二人の目の前にいた。


 わたしは全速力で駆け出す。

 タツタさんが巨大な口を開ける。


 (〝黒飛那〟を撃つ前に救出しな



 ――グリンッ……! タツタさんがこっちを向いた。



 (――しまっ、罠っ!)




 極  ・  黒  飛  那




 (かわし切れない……!)


 ……そう、判断したわたしは苦肉の決断を下す。




   凍    幻    卿




 ――〝極・黒飛那〟が一瞬にして氷結した。


 ――パリイィィィィィィィィンッッッ……! 同時、最後の青い花弁の翼が砕け散った。


 (……やばっ……力出し切っちゃったかも)


 そのままわたしは地面に身体を投げ出した。


 (……身体、力入らない)


 指先一つ動かなかった。

 だけど、タツタさんはそうではなかった。


 『グルァァァァァァァァァァァッッッ……!』


 タツタさんが咆哮する。840キロの重りを背負ってなお、タツタさんは動けていた。


 (……ごめん、ドロシーちゃん)


 タツタさんがわたしを見つめ、巨大な顎を開いた。


 (……わたし……死ぬかも)


 そして、タツタさんの口から〝黒飛那〟が放た




 ――ドッッッッッッ……! タツタさんの巨大な口を一本の刃が貫いた。




 「 目が覚めて駆けつけたら大変なことになってるじゃん 」


 ……この声は!


 「 ユウくんッ! 」


 「助けに来たよ、ギルド姉ちゃん!」



 ……そう、この絶望的な状況下、夜凪夕が颯爽と登場したのであった。


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