第181話 『 〝極〟の境地 』
――黒い魔力が渦を巻く。
……その魔力は空気を軋ませ、大地を震えさせた。
……やがて、渦巻く魔力は俺の身体へと集結する。
「……何だ……その姿は」
〝水由〟が俺の姿を見て、驚愕する。
「……何だ……その魔力はっ」
俺は自分の腕へと視線を向ける。
――そこには黒い紋様が浮かび上がっていた。
黒い魔力は翼へと形を変え、背中に一方だけ噴き出していた。
「答えろッッッ!」
〝高機動爆弾〟が次から次へと空へ展開される。
「カラアゲタツタッ……!」
千 年 炎 舞
――千を超える〝高機動爆弾〟が俺に降り注いだ。
「 極 」
……俺は〝SOC〟をゆっくりと振り上げた。
「 黒 飛 那 」
――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!!
……視界が暗闇に支配される。
その闇は目の前にあるもの全てを呑み込み、破壊した。
しかし、やがて闇は晴れ、視界が開ける。
「……言ったろ」
……酷い光景だった。
「手加減してやれないってな」
森は消し飛び、地面は割け、目の前は開けた広野が広がっていた。
「よくやった、〝LOKI〟」
それでも、〝水由〟は〝LOKI〟を盾に〝極・黒飛那〟を凌いでいた。
『……グッ……ガッ』
しかし、いくら〝LOKI〟と言えど、〝極・黒飛那〟は重かったのか、静かに崩れ落ちた。
「……凄まじい威力だな、〝極・闇黒染占〟」
〝水由〟は倒れる〝LOKI〟には見向きもせず、俺を睨み付けた。
「ようやく俺も本気を出せる」
〝水由〟が臨戦態勢を取る。
「さあ、お前も本気を出せ! カラアゲタツタ……!」
――俺は既に〝水由〟の目の前にいた。
〝水由〟が拳を振るう――その拳には凝縮された熱の球が乗せられていた。
「消し飛べ!」
爆 掌――……
――ガッッッ……! 俺は〝水由〟の手首を掴み、地面に叩きつけた。
「遅ェよ」
――ボンッッッッッ……! 〝爆掌〟を受けた地面が爆発する。
「なっ……! 速っ――……ッグガ!」
俺は間髪容れず、〝水由〟の顔面に蹴りを叩き込む。
〝水由〟のゴーグルが軽快に吹っ飛ぶ。
〝水由〟も空中で姿勢を直して着地する。
「――ッ」
〝水由〟は咄嗟に視線を俺のいる方向へ走らせる。
「――〝黒飛那〟、だとッ!」
――そう、〝水由〟の目の前まで〝極・黒飛那〟が迫っていた。
「――ッッッッッ……!」
しかし、〝水由〟は爆発で自身の身体を押し出し、〝極・黒飛那〟を回避する。
「 よう 」
……だが、俺は〝水由〟が回避した場所に回り込んでいた。
「くっ……!」
……それは卓越した反射神経であった。
――ボンッッッ……! 〝水由〟は俺が〝SOC〟を強く握り直すよりも速く、小爆発で〝SOC〟を弾いた。
「 関係ないね……! 」
――ゴッッッッッッッッッッ……! 俺の拳は〝水由〟のガードを突き破り、鳩尾に叩き込まれる。
「――っげふっ……!」
〝水由〟は弾丸のような勢いで吹っ飛ばされる。
「……くっ!」
〝水由〟は地面を転がるも、体操選手のような身軽な体捌きで静止した。
同時。俺は〝黒飛那〟を放つ。
同時。〝水由〟は特大の熱の球を撃ち出す。
――轟ッッッッッッッッッッッッ……! 二つの高エネルギー集合体が衝突し、相殺される。
……そのコンマ一秒後。俺は爆煙を死角に、〝水由〟の背後へ回り込む。
――同時。〝水由〟も踵返して、右手を振り抜く。
スピード勝負。制したのは――……
超 ・ 高 機 動 爆 弾
……〝水由〟だった。
俺は大爆発によって吹っ飛ばされる。
「――ッッッッッッ……!」
……重ッ……! この〝超・高機動爆弾〟。速さだけじゃなくて、威力もかなりのもんだ。
……だがな。
――ブシュッ……! 血飛沫が飛び散った。
……俺もただじゃやられはせんよ。
――斬ッッッ……! 〝水由〟の左腕が吹っ飛んだ。
「――ッ!」
〝水由〟が激痛に奥歯を噛み締める。
しかし、〝水由〟の判断は速かった。
間髪容れずに左腕の切断面を焼いて、塞いだ。
……流石は〝魔将十絵〟。とんでもない決断力だ。
「だけど、俺の方が強いね……!」
「試してみるか?」
俺は〝SOC〟を構え、〝水由〟も残った右腕を構えた。
「ならば、俺の最強の技を打ち破ってその力を証明してみろ……!」
千 年 炎 舞
――千を超える〝高機動爆弾〟が展開される。
「 圧縮……! 」
……展開された〝高機動爆弾〟が一ヶ所に集まる。
「……これが俺の最大奥義」
天 照
……それは圧倒的な熱量を秘めた――巨大な熱の球。
「……すげェな、それがあんたの全力か」
……なんて熱量だ。光も空間も歪ませるほどの熱灼がそこにあった。
「さあ、決着の刻だ……! カラアゲタツタ……!」
――〝天照〟が放たれる。
「いいぜ、だが勝つのは俺だ」
俺はありったけの魔力を〝SOC〟に込めた。
「だから、この一撃で勝利を掴み取る……!」
俺は〝SOC〟をゆっくりと上げ――振り下ろした。
「 〝極〟 」
黒 飛 那 十 字 衝
――十字型に交差した二つの〝極・黒飛那〟が放たれる。
……これが今の俺の最大最強だ。
「うおおォォォォォォォォォォォォッ……!」
――〝極・黒飛那十字衝〟が直進する。
「タツタァァァァァァァァァァァァッ……!」
――〝天照〟も直進する。
――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!!
……直進する二つの圧倒的な暴力が衝突した。




