第176話 『 〝写火〟の真髄 』
超 ・ 火 焔 球
――わたしは無数の炎弾を〝水由〟目掛けて乱射する。
その威力は今までの〝火焔球〟とは比べ物にならないほどの火力であった。
「撃ち落とす」
高 機 動 爆 弾 × 31
――〝水由〟は〝高機動爆弾〟で〝超・火焔球〟を迎撃する。
「 あら 」
――しかし、〝高機動爆弾〟と衝突してなお、〝超・火焔球〟は止まらなかった。
「 まさか、凌ぎきったとでも? 」
「……馬鹿な、〝火焔球〟は下の中レベルの技な筈だ」
〝超・火焔球〟が〝水由〟に襲い掛かる。
「それが俺の〝高機動爆弾〟に耐えられる筈がない」
〝水由〟は迫る〝火焔球〟を撃ち落とさんと〝高機動爆弾〟を乱射した。
一度目の衝突で威力が減退していたせいもあり、今度は〝超・火焔球〟を相殺させられた。
――トンッ
しかし、既にわたしは〝水由〟の背後に回り込んでいた。
「この間合いでは撃てないよね、〝高機動爆弾〟♪」
「――」
零 距 離 爆 破
――轟ッッッッッッ……! 大爆発が〝水由〟を吹っ飛ばした。
「馬鹿な、これも威力が上が――……」
――〝水由〟が吹っ飛ばされた先に〝超獣転生〟状態のカノンくんがいた。
『 墜ちロ 』
――ゴッッッッッッッ……! カノンくんの右ストレートが〝水由〟に叩き込まれた。
……その〝水由〟を吹っ飛ばしたカノンくんに岩の拳が迫っていた。
『 DeATH 』
「 〝超・火焔球〟 」
――岩の拳がカノンが届くよりも速くわたしは〝LOKI〟さんの腕に〝火焔球〟を当て、拳の機動を逸らす。
『ナイスアシスト♪』
「どういたしまして♪」
カノンくんは間髪容れずに〝LOKI〟さんと距離を取る。
「……想定外だ」
……〝水由〟だ。
「まさか、貴様らごときにここまで手こずるとはな」
……強い。〝超獣転生〟状態のカノンくんの一撃を受けてなお、〝水由〟は平然としていた。
「だが、遊びはここまでだ」
高 機 動 爆 弾 ×――……
「ここからは少し本気を出そう」
――1 9 9 !!
……空には無数の〝高機動爆弾〟が展開されていた。
(……なんて数、規格外だね)
わたしは直に来るであろう嵐に備えた。
「さあ、踊ろうか」
――無数の〝高機動爆弾〟が彗星のように降り注いだ。
「OK☆ ちゃんとリードしてね☆」
超 ・ 火 焔 球
――わたしは無数の炎弾で応戦する。
……が。
「……数が多すぎるっ!」
威力は上がったものの、やはり数の差は圧倒的であった。
この数、捌ききれない!
――捌き損ねた〝高機動爆弾〟が迫る。
「――ッ!」
『伏せてッ!』
――カノンくんが身を挺して〝高機動爆弾〟からわたしを庇う。
「カノンくんッ!」
『集中ヲ切らすなッ!』
珍しくカノンくんが声を荒あげた。
『〝水由〟は強い! だからこそ、ギルドさんが冷静じャなければ絶対に勝てないんだ!』
「……」
……カノンくんの頭上に〝高機動爆弾〟が落ちる。
『この戦い、絶対に勝ち抜こうッ!』
「うんッ……!」
――わたしは炎弾を撃ちだし、カノンくんに降り注ぐ〝高機動爆弾〟を相殺した。
「ありがとう、気合い入った……!」
……そうだ、落ち着こう。
元からこの戦いは格上との戦いだったんだ。不利で上等、逆境を覆すんだ。
そもそもこの作戦は〝LOKI〟さんを取り返す為の戦いであって、〝水由〟を倒す戦いではない。
だから、優先すべきことは、〝LOKI〟さんの中に埋められている魔導石の破壊か、〝水由〟の所持している〝LOKI〟さんを支配する指輪の破壊だ。
「……あれ?」
……そういえば、〝LOKI〟さんはどこにいるんだっけ?
獄 炎 大 葬
――紅蓮の業火がすぐ目の前まで迫っていた。
「……これはかわせないだろう」
〝水由〟が小さく呟いた。
「上空からは無数の〝高機動爆弾〟、平面からは〝LOKI〟の大火力攻撃」
――〝獄炎大葬〟に気を取られ、〝高機動爆弾〟に吹っ飛ばされる。
「気づかなかったか? 貴様らは既に包囲されていたんだよ」
――顔を上げたその先には〝獄炎大葬〟があった。
「これは出し惜しみしている暇はないねっ」
――パリンッ、赤い花弁の翼が砕け散った。
「 〝灼煌〟――…… 」
弐 式
――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 熱風と業火が衝突した。
「……ふう」
わたしの目の前には虚空が広がっていた。
「危なかったー」
何とか間に合った。とはいえ、撃てる〝灼煌〟はあと一発、無駄撃ちはできない。
できないけど……!
「……持久戦か」
〝水由〟が小さく呟く。
「俺達相手にか? 馬鹿なのか?」
「……」
……〝水由〟の言う通りであった。
相手は〝魔将十絵〟と炎の魔神、魔力切れは望めないだろう。
対して、わたしもカノンくんもガス欠寸前であった。
〝水由〟の言う通り、持久戦は有り得ない。
「……ありがとう」
わたしは不敵に笑んだ。
「お陰で迷いが晴れたよ……!」
わたしは魔力を練り込んだ。
「カノンくんは〝LOKI〟さんを食い止めといてっ」
『……ギルドさンは?』
「わたしは〝水由〟を倒す! 一撃で!」
……寧ろ、全てをこの一撃に籠めると言っても過言ではないだろう。
『了解、〝LOKI〟さんは任セて!』
カノンくんは二つ返事で〝LOKI〟さんに向かって飛び出した。
「聞こえたぞ、俺を一撃で倒すんだってな」
〝水由〟がわたしの前に立ちはだかる。
「うん、その聞こえた通りだよ」
――パキンッ……! 最後の翼が砕け散った。
「わたしはあなたを倒す……!」
解放――……。
灼 煌 ・ 極
「 型式 」
龍
……それは巨大で凶悪な牙を携えた炎の龍であった。
「……魔術は創造力」
その熱は空気を焼き、周囲を灼熱へと変えた。
「確かにフレイちゃんとの親和性ならタツタさんに一歩遅れている」
……だけど、とわたしは笑った。
「 魔術ならわたしはその十歩先を行く……! 」
「……いいだろう」
〝水由〟のプレッシャーが跳ね上がる。
「貴様に教えてやる」
しかし、〝水由〟は一歩も引くことも構えることもなかった。
「〝魔将十絵〟が貴様の遥か高みにいるということを」
「だったら、わたしも教えてあげる」
〝龍〟が咆哮する。
「上ばっか見てたら足下掬われるってね♪」
「上等だ……!」
――〝龍〟が〝水由〟へ放たれる。
――〝水由〟はただ悠然と立っていた。
……火龍の巨大な顎が〝水由〟を呑み込まんと迫り来る。
「……準備する時間は山程あった」
〝水由〟が小さく呟いた。
「お前は気づかなかっただろうが、既にこの場から数百メートルにある全ての熱は俺の支配下にある」
――ピシッ……!
……凍っていた。
「熱を集めると同時に熱を逃がす――それこそが〝写火〟の真髄なんだよ」
……〝龍〟が完全に氷結していた。
「……嘘、だ」
わたしの身体は〝灼煌〟の反動に耐えきれず地に落ちた。
「言っただろ」
パリイィィィィィィンンッ……! 〝龍〟が粉々に砕け散った。
「〝魔将十絵〟は貴様の遥か高みにいるとな」
「……」
……負けた。
「ほれ、お前の仲間も力尽きたみたいだぞ」
カノンくんが〝LOKI〟さんの巨大な手から、わたしの横へ投げ捨てられた。
……完敗だ。
もう、わたし達に戦う力は残っていなかった。
あとは、〝水由〟と〝LOKI〟さんに蹂躙されるだけだった。
「終幕だ」
〝水由〟が静かにそう宣告した。
……本当にそうなのだろうか?
わたしは必死に策を模索した。
……本当にもう終わりなのだろうか?
しかし、答えはでなかった。
……希望はもうないのかな?
――ザワッッッッッッ……!
……胸騒ぎがした。
(……この感じ、知ってる)
そう、近づいていた。
……その人はわたしのよく知る人物だ。
……その人はとても優しくて強い人だ。
……そう、もの凄い速さでこの場へ迫っていた。
(……来る!)
……空上龍太が――来る!




