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 第164話 『 共闘……ならず? 』



 「 〝水由〟、何をしに来た 」


 ……〝LOKI〟が来訪者である〝水由〟に問い質した。


 「これはわたしとドロシーとタツタの問題だ。君の出る幕ではない」

 「……」


 〝LOKI〟が退場を促すも、〝水由〟は何も答えず、又、その場から一歩も動かなかった。


 「 計画通りだ 」


 ……〝水由〟が凶悪に笑んだ。


 「〝LOKI〟、今から貴様は俺のイヌになる」

 『……何を言っている』

 「そして、〝LOKI〟のいないドロシーはもう要らなくなる」

 『答えろ、〝水由〟ッ』


 「最悪、殺したって構わない」


 『それは失言だぞ、〝水由〟』


 ――〝LOKI〟の指に高密度の熱エネルギーが集まる。


 「 聞こえなかったか? 」



 ――パンッッッ……! 圧縮された熱の球が飛散した。



 「 今からお前は俺のイヌだ 」

 『――』


 ……何が起こった?


 「……理解できない、そういった顔をしているな」


 〝水由〟が戸惑う〝LOKI〟を嘲笑った。


 「俺の〝特異能力スキル〟は熱エネルギーを移動させる能力――〝写火インフェンクション・ファイア〟、それは知っているだろう」

 『……』

 「そして、俺は貴様の炎を分散させた……ただそれだけの話だ」

 『……それは不可能だ』


 〝LOKI〟が〝水由〟の言葉を否定する。


 『わたしの中にある熱エネルギーは君が操りきれるほどに温くはない』

 「……時間はあった」


 〝LOKI〟の否定の言葉を〝水由〟が否定した。


 「お前がカラアゲタツタに気を取られ、戦闘している間にお前の体内に内蔵されている炎を支配した」

 『……』

 「故に、今のお前の炎は俺には届かない」

 『 ならば 』


 ――〝LOKI〟が岩の拳を振りかぶった。


 『 直接叩くまでだ 』


 「 浅はかだな 」


 ――ボンッッッッッ……! 振りかぶった〝LOKI〟の拳が爆発し、粉々飛び散った。


 「俺を誰だと思っている。〝魔将十絵〟、〝写火〟の〝水由〟だ」


 ――パチンッ、〝水由〟が指を鳴らした。


 「ただの暴力が通用するとでも思ったのか」


 ――轟ッッッッッッッ……! 今度は大爆発が〝LOKI〟を吹っ飛ばした。


 『……っ!』

 「服従しろ、〝LOKI〟……そうすればドロシーには手を出さない」

 『……貴様』

 「だが、これ以上歯向かうならドロシーを殺す」

 『貴様ァァァァァァァァァァ……!』


 〝LOKI〟が〝水由〟に飛び掛かった。


 「……無駄だ」


 〝水由〟も〝LOKI〟を迎え討たんと構える。



 ――ドッッッッッ……! その二人の境目に黒い衝撃波が駆け抜けた。



 「……おい、おめェら。俺を無視してんじゃねェぞ」


 ……俺だ。俺は軋む身体を無理矢理立ち上がらせ、〝黒飛那〟を放ったのだ。


 「帰れ、〝水由〟。これは俺と〝LOKI〟の喧嘩だ」


 俺は〝闇黒染占〟を爪先に集中させる。


 「 邪魔すんならぶっ飛ばす……! 」


 ――ゴッッッッッ……! 俺は一瞬で〝水由〟との間合いを制圧し、その頬骨に拳骨を叩き込んだ。


 「――ッッッッッッッ……!」


 〝水由〟は吹っ飛ばされるも空中で体勢を修正し、踵を磨り減らしながら接地した。


 「……軽いな」

 「安心しろ、一割しか出してねェよ」


 〝水由〟がゴーグル越しに睨み付け、俺も睨み返した。


 「役不足だな」


 〝水由〟が幾つもの圧縮された熱の球を展開した。


 「ご退場願おうか」


 高 機 動 爆 弾 × 1 0


 ――それらが一挙に襲い掛かる。


 ――同時、岩の剛腕が俺の前に伸びる。


 『共闘しよう、カラアゲタツタ』


 ――岩の剛腕に遮られ、爆発が俺に届く前に爆発した。


 『君はドロシーを取り戻す為に』


 〝LOKI〟だ。〝LOKI〟が俺を庇ってくれたのだ。


 『わたしはドロシーを守る為に』


 確かに、俺と〝LOKI〟には共通点があった。


 『戦え! そして、〝水由〟を倒すのだ!』


 ……そう、俺達二人共、ドロシーのことが大好きなのだ。


 「オーケー、その話乗った」


 その気持ちがあれば、共闘できる。


 「……作戦会議はもういいのか?」

 「ああ、お陰様でな」


 俺は〝SOC〟を構え、〝水由〟は幾つもの熱の球を展開した。


 『わたしが盾になる。君は攻撃に専念したまえ』

 「オケッ、頼もしいぜ」


 俺達の作戦はシンプルなものだった。

 俺が特攻して、〝LOKI〟が防御する。ただ。それだけである。

 だが、これなら即興のコンビでも連携できる筈だ。


 「行くぜ」

 「さっさと来い」


 ――俺は〝闇黒染占〟を脚に集中させる。


 「あいよ」


 お 望 み 通 り に !


 ――ダンッッッッッ……! 俺は力強く踏んだ。


 (まずは縦横無尽に駆け回り、〝水由〟を混乱さ――……あれ?)


 ……そこで、俺は異変に気づいた。


 「――かはっ!」


 ……俺の体は岩の拳に殴られ、宙へ弾かれていた。


 「……どう……して」


 訳がわからなかった。


 ……〝LOKI〟は仲間だったんじゃなかったのかよ。


 なのに、どうして俺は〝LOKI〟に殴られているんだよ!



 ――そこで、俺の思考は途切れた。



 ……既に、幾つもの〝高機動爆弾〟が目の前に迫っていたからだ。


 (まずい! 〝闇黒染――……)


 ――ボンッッッッッ……! 〝闇黒染占〟を脚に集中させるよりも早く、爆発が俺を吹っ飛ばした。


 「――ぐあっ!」


 ……クソッ! 一撃一撃がクソ重いな!


 「訳がわからない、という顔をしているな。カラアゲタツタ」


 〝水由〟が爆発のダメージで膝を着く俺を見下ろし、語り始めた。


 「……悪いが、俺もコイツの炎を支配するのに体力を使ってしまってな。もう、部屋に戻って寝たいんだ」


 〝水由〟が欠伸を溢した。


 「だから、不本意だが〝白絵〟様から戴いた〝奥の手〟を使わせてもらった」


 ……〝奥の手〟、だと?


 「この指輪を見ろ」


 〝水由〟が真っ赤な宝石の指輪を見せつける。


 「この指輪は嘗て、〝白絵〟様が〝LOKI〟の体内に埋め込んだ魔法石とリンクしていてな」


 〝LOKI〟は〝水由〟に膝まついた。


 「この指輪をはめている者は魔法石を内蔵された人・魔物を支配することができる、そう言った術式が施されている」


 つまり、今の〝LOKI〟は〝水由〟の操り人形って訳だ。

 だとすればまずいことになった。

 現状、俺は〝水由〟と〝LOKI〟の二人と戦わなければならないようだった。

 ……そう、たった一人で


 「……悪いが決着が着いたようだ」


 〝水由〟が絶望する俺を嘲笑った。


 「貴様は死ぬ――ドロシー諸ともな」

 「――っ」


 ……〝水由〟が俺と、その後ろにいるドロシーの方を見て、そう吐き捨てた。


 「殺れ、〝LOKI〟」


 ――〝LOKI〟の口にとんでもない熱量の熱エネルギーが集約される。


 「祈りの時間は充分か」

 「俺は神に祈らねェよ」

 「ならいい」


 ――〝LOKI〟の口から圧倒的な熱量を秘めた熱砲弾が放たれる。


 「 潔く死ね 」




        ファ   イア




 「 …… 」


 ……俺は逃げなかった。


 ……というより、逃げられなかった。


 ……もう、〝闇黒染占〟も底を尽きかけている。


 ……さっきの〝高機動爆弾〟で脚を潰されてしまっている。


 ……逃げるなら上空か、〝LOKI〟の背後だが、ドロシーを抱えてからでは間に合わないだろう。


 「……タツタ、様」


 ……だから、俺はドロシーの前に立っていた。


 「心配そうな顔すんなよ、ドロシー」


 ……逃げられないのらば、せめてドロシーを守るべきだと思ったからだ。


 「お前は俺が守る」


 ――ドッッッッッ……! 俺は最後の悪足掻きで〝超・闇黒染占〟を解放した。


 「んで、俺も生き残る」


 ……もう、巨大な熱の砲弾がすぐそこまで迫っていた。


 「約束だ……!」


 「タツタさ――……」








 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!!



 ……地獄の業火が木々と大地を呑み込んだ。



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