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 第148話 『 憤怒100% 』



 「 さあ、剣を構えろ 」


 ……コイツはとんでもないな。


 「 ここからの俺は今までの俺を遥かに凌駕する 」


 威圧感で心臓が圧迫されやがる。


 「……ははっ」


 恐怖はある。だが、それ以上に気分は高揚していた。


 「……何がおかしい?」

 「いや、何もおかしくはない。ただ、お前と同じ気持ちになっただけさ」


 俺は笑っていた。


 「強い奴と戦うのってワクワクするだろ? 今がそれだ」

 「……そうだな」


 グレゴリウスも笑っていた。


 「これ以上に楽しいことはない……!」


 グレゴリウスが圧倒的な初速で飛び出し、勢いそのまま跳び蹴りをする。


 「やっぱり気が合うな、お前ェッッッ……!」


 俺は回避せず、真っ正面から正拳突きで迎え撃つ。



 ――グレゴリウスの跳び蹴りと俺の正拳突きが真っ正面から衝突した。










 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!!



 ……その衝撃は凄まじく、周囲一帯を全て吹き飛ばした。


 大地は裂け、

 暴風が吹き荒れ、

 四周の建物が瓦解した。


 「 ハッ 」


 俺は笑う。


 「 ハハハッ 」


 グレゴリウスも笑う。


 「「 死ねッッッ……! 」」


 俺が追撃の右ストレートを放つ。

 グレゴリウスが追撃の右ストレートを放つ。



 ――同時。互いが互いの頬に拳が叩き込む。



 押し負けたのは――……



 ――俺だった。俺はとてつもない速度で弾き飛ばされ、幾つもの建物を突き破り、やがて静止した。


 そ の 直 後 。


 ……足下に影が差す。

 ……俺は上を見上げる。


 ……そこには跳び蹴りを繰り出すグレゴリウスがいた。


 「――マジか」


 俺は咄嗟に後ろへ跳ぶ。



 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! グレゴリウスの跳び蹴りが地面に叩き込まれた。



 ……凄まじい威力だった。

 その一撃は大地を割り、パールの都を揺らした。


 ――パシッッッ、グレゴリウスが飛び散った礫の一つを掴み、そして、俺目掛けて投石した。


 (……やべェ! 空中じゃかわせねェ!)


 俺は咄嗟に飛来する礫を裏拳で弾く。



 ――弾かれた小石は煉瓦の建物に直撃して、その建物を瓦解させた。



 (ただ小石がなんつぅ威力だ――……)


 そこで俺の思考は途絶える。

 そう、投石などただの囮に過ぎなかった。


 「 ひはっ……♪ 」


 ――グレゴリウスが俺の目の前にいた。


 「――ッ!」


 俺は咄嗟にガードする。

 しかし、グレゴリウスは手前で交差した俺の腕を掴み、無理矢理ガードを解いた。



 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッッッ……! グレゴリウスの頭突きが俺の顔面に叩き込まれた。



 「――ッッッッッッッッ……!」


 俺の身体は建物を薙ぎ倒しながら吹っ飛び、丁度武器屋に突っ込んで静止した。


 「……ラッキー♪」


 俺は笑い、足下に転がる三股槍を拾い上げ――グレゴリウス目掛けて投擲した。

 しかし、グレゴリウスは容易くそれを回避する。






 ――ゴッッッッッッッッ……! グレゴリウスの遥か後ろに建つ民家が、三股槍との衝突と同時に瓦解した。


 「――!?」


 グレゴリウスが目を見開く。


 「 まだ 」


 ――更に大剣がグレゴリウスに飛来する。


 「 まだまだァ……! 」


 ――間髪容れずに槍・サーベル・戦斧・棍棒と絶え間なく、グレゴリウスに飛来する。


 まるで凶器の流星群であった。

 しかし、グレゴリウスはそれらの武器をも凌駕する生きる凶器であった。


 「ひはっ♪」


 ――ガシッッッッッ……! グレゴリウスが飛来する大剣を掴み取った。


 そして、その大剣を以て迫り来る凶器を弾いていく。

 流石は〝七つの大罪〟の一人――グレゴリウス=アルデミーと言ったところだ。


 ……だが、奴は一つ見落としていた。


 ――グレゴリウスの頭上には、大人一人隠れることができる程に巨大な戦斧が、回転しながら落下していた。


 そう、今までの投擲はこの戦斧を隠す為のフェイクに過ぎないのだ。


 「 気づいてるよ♪ 」


 ――グレゴリウスはそう言って、最低限の横移動で巨大な戦斧を回避した。


 グレゴリウスの視線は瓦解した武器屋の方向へと傾ける。


 ……そこに俺の姿は無かった。


 ――同時。巨大な戦斧にひびが走った。


 「 えっ? 」



 ……武器の投擲は巨大な戦斧を隠す為のフェイクだ。だが、その戦斧も実はフェイクの一部だったんだ。



 ――巨大な戦斧は砕け散り、そこから俺の拳が飛び出し、その拳はグレゴリウスの顔面に叩き込まれた。


 「ッッッッッッッッ……!」


 グレゴリウスは地面を二・三度バウンドして、空中で体勢を直して、着地した。


 「……チッ」


 どうやら戦斧を破壊した分威力が落ちていたようであった。

 グレゴリウスの脚は僅かにふらついていた。全くダメージが蓄積されていない訳ではないようである。

 それは俺も一緒で、全身痛い上に重かった。


 「……なあ、グレゴリウス」

 「何だい、〝空門〟」


 互いに満身創痍ではあったが、目だけは両者死んではいなかった。


 「疲れていないか?」


 「全然」


 「もう、やめたくないか?」


 「まったく」


 「じゃあ」


 「……」


 ……互いの獰猛な視線が交差する。


 「 俺の全力全開を受けてみたくないか? 」


 ……一瞬の沈黙。



 「 最高だね、それ……♪ 」



 ――グレゴリウスが狂笑した。


 「……」


 俺は無言で構える。


 「……」


 グレゴリウスもそれに倣う。


 ……風が吹く。


 もうじき日が暮れる。

 それは嵐の前の静寂。


 「 先に言っとく 」


 「 何だい? 」


 ――俺は飛び出した。


 「 楽しかったぜ……! 」


 ――グレゴリウスも飛び出した。


 「 俺もだよ……♪ 」



  そ  し  て  。





 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!!!!!




 ……両雄が激突した。


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