第11話 『 オーバー・ロック 』
「 空龍心剣流 」
『 si 』
――俺は〝SOC〟を構えて、突進する。
――〝FG〟も迫り来る俺を迎え討たんと拳を振り上げる。
『 ne 』
――震ッッッッッッッ、〝FG〟の渾身の一撃が地面を揺るがした。
……何て威力だ。当たっていないのに衝撃で手足が痺れやがる。
だが、その分懐ががら空きだ。
〝FG〟の攻撃をかわした俺はその懐に潜り込み、一挙に胸元まで跳躍した。
「 〝土竜〟 」
『a?』
そして、〝FG〟の顎に――……。
天 翔
――〝SOC〟を叩き込んだ。
『ga……!』
〝FG〟が堪らず尻餅を着く。しかし――……。
「まだまだァ……!」
……俺の攻撃は終わらない。
「空龍心剣流――……」
俺は再び力強く〝SOC〟を握り直し、尻餅を着いた〝FG〟の頭部に狙いを定めた。
地 獄 落 と し
――斬撃炸裂。脳天に斬撃を喰らった〝FG〟はその慣性に従い、地面に叩き付けられた。
『ga……gi……!』
〝土竜天翔〟からの〝地獄落とし〟のニ連激、流石にこれは喰らうだろう。だがな……。
「 ラストォ……! 」
……まだだ。
まだ、俺の連撃は終わりじゃない。
俺はうつ伏せ倒れる〝FG〟の後頭部を睨み付けた。
更に、虚空にて回転し、自由落下に身を委ねる。
「喰らえ」
俺は落ちる。
〝FG〟は動けない。
〝SOC〟が空を斬る。
「 これが地獄の底の更なる地獄 」
深 域 突 破 ・ 地 獄 斬 り
――〝SOC〟による一撃が〝FG〟の後頭部に炸裂した。
その衝撃は凄まじく、地面に亀裂を走らせ、巨大なクレーターをつくり、宮殿を大きく揺らした。
「どうだ……!」
〝土竜天翔〟からの〝地獄落とし〟からの〝深域突破・地獄斬り〟、今の俺にできる最大限の連続攻撃だ……これが効かなければ正直お手上げ――……。
『 oッ 』
……クソッたれ。
〝FG〟は平然と立ち上がった。呆れた頑丈さだな、おい。
しかし、何だ。さっきと雰囲気が違うんじゃないか?
目の赤い光は更に輝きを増し、
溶岩石の躯に纏う炎は更に激しくなり、
今まで無かった筈の口ができていた。
「……進化」
……後ろのギルドが静かに呟いた。
『o』 『oッ』 『oッ』
『oッ』 『O』
……何かが来る。俺はそう直感した。
『Oooッッッッッッッッッ……!』
――ドンッッッ、咆哮した〝FG〟が地面が震えるほどの勢いで地面を殴った。
……………………………………………………………………………………………………ズズッ
……何かが地面の底で動く音がした。
ズッ
ズズッ
ズ
ズズズッ
ズズッ
ズズズズッ
……来る! 巨大な何かが地面を伝って近づいてくる!
ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズッッッ……!
『 〝砂漠〟 』
――地面から巨大な砂の槍が飛び出した。
『 〝無双〟 』
それだけではない。砂の槍の他に大太刀、三股槍、薙刀、サーベル、棍棒、戦斧、大鎌等々、数え切れないほどの武器を型どった砂の攻撃が地面から繰り出された。
「魔術……!」
……油断した! コイツ、力押しだけじゃない!
危なかった。咄嗟に跳躍していなかったら、串刺しになるところだった……。
俺はふと〝FG〟の方を見下ろす。
〝FG〟も俺の方を見た……そして、合掌した。
『 and 』
……頭上が熱い。俺は咄嗟に上を向いた。
そ こ に は ?
「……嘘だろ」
――巨大な隕石群が地上目掛けて降り注いでいた。
……あっ、これはヤバい。
それは子供でもわかる俺の現状であった。
巨大な隕石が降り注ぐ、
宙にいる俺は動けない、
ギルドが何か叫んでいたが、よく聴こえなかった。
『 sine 』
火 龍 乃 涙 !
――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!
……最初は白。
次に赤。
間髪容れずに熱。
その後すぐに暴風。
一瞬だけ真っ暗になって、途方もない浮遊感と斥力に振り回されて、全身に激痛が走った。
引き裂けそうなほどに痛かった。
溶けてしまいそうなほどに熱かった。
……しかし、
「……ははっ」
――俺はまだ生きていた。
「呆れるぐらいに頑丈だな、俺って奴は」
全身、火傷や擦り傷だらけになりながらも俺は生きていたのだ。
以前の俺ならば骨すら残らなかっただろうに……本当にレベル上げをしていてよかったと思う。
しかし、全くの無傷とは言えなかった。頭はクラクラするし、全身が痛く、そして重かった。
「……少し、ヤバいな」
こんなに痛い思いをしたのは初めてだった。
「でも、何でだろうな」
……悪くない、そう思っている俺がいた。
傷だらけな体とは裏腹に気分はすこぶる高揚していた。
俺は最早原型を留めていないほどに損壊した〝溶岩王の宮殿〟を歩く。
『omae yowai』
そんな俺に〝FG〟が嘲笑う。
『omae sinu』
俺は歩く。
『omae makeru』
「 何、勘違いしてんだ? 」
……俺は立ち止まった。
『?』
〝FG〟は訳がわからないという雰囲気であった。
「俺はさ、漫画とかでの主人公の無双シーンとか大好きなんだ」
全身ボロボロの満身創痍な体にも拘わらず俺は笑っていた。
「無敵な主人公が次々と敵を薙ぎ倒す……格好いいよな?」
余裕な振りをする……それが〝取って置き〟のための一つの布石だった。
「だから、この世界に飛ばされたときは俺も無双するって決めたんだ」
俺はただ強者の振りをし続ける。
「でも、無双するのって案外楽じゃないんだ。だって、無双するには相手より遥かに格上じゃなければできないからだ」
……さてと、使うか。
「だから、俺は格好悪くても自分より格下としか戦わないんだ」
『……?』
「まだ、わからないのか?」
……〝取って置き〟、を。
「俺が今、ここで戦っているってことはな」
……心の準備はできていた。
……布石も既に敷かれていた。
……あとは?
「 俺がお前より格上だってことだよ……! 」
……あとは、コイツをぶった斬るだけだ。
「冥土の土産に見せてやるよ」
――俺は心の中でその名を叫ぶ。
「これが俺の〝取って置き〟だ」
〝特異能力〟 、 解放 。
極 黒 の 侵 略 者




