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 第137話 『 因縁・再燃 』



 ……タツタくんと別れた僕は、パールの賑わいを横目に、都の入り口を目指していた。


 都の入り口と言っても、パールの都には、中心地から東西南北に走る大通りがあり、その端が入り口となっていた。

 ちなみに、僕が目指しているのは西の入り口であり、その近辺に建つ占い屋が目的地であった。

 別に占いとかは趣味じゃないけど、気紛れで占い屋に行こうって思ったんだ。

 ただ、気になることは一つ――……。


 ……この意思は誰かに操られているような気がする。


 ……というものである。


 (……まっ、考えすぎかな?)


 とはいえ、占いに全くと言っていいほどに無関心な僕が占いに行きたくなったことを疑問に思わない訳でもなくて……。


 「……あっ」


 ……と、そんなことを考えている内に、占い屋の目の前まで着いていた。


 「ここだっけ?」


 「 おやおや客かな? 」


 ――僕が店の前で立ち止まっていると、店の中から声がした。


 「開店中だよ、暇なら寄ってけば」


 その声は若い男の声で……どこかで聞いたことのある声だった。勘違いかもしれないけど。


 「えっと、失礼します」


 僕は入り慣れていない占い屋の雰囲気に戸惑いながらも、入り口を潜った。


 「ようこそ、占いの館へ」


 ……真っ暗だった。


 僅かな光は小さなロウソク一本で、それは占い師とその手前にある机だけを照らしていた。

 占い師は細身の男で、髪は長く白かった。顔はローブを深く被っていてよく見えなかった。


 ――怪しい。


 ……それが第一印象であった。

 とはいえ、折角足を運んで帰るのもあれだったので、素直に占ってもらうことにした。


 「あの、占いに来ました」

 「うん、知っているよ。さっ、腰掛けなよ」

 「う、うん」


 僕は占い師に言われた通り、向かいの椅子に座った。


 「じゃ、早速だけど占おうか」


 占い師はそう言って机の上に置かれた水晶に手をかざした。


 「うーん」


 占い師は水晶に手をかざしたまま唸った。


 「……何か見えたんですか」


 僕は怪訝そうに占い師の顔を見る……よく見えないけど。


 「うーん、これはあれだね。中々、過酷な未来が待ってるねー」

 「……」


 ……何か軽いなー。


 「あんた、冒険者だよね?」

 「はい」

 「それに、凄く仲のいい仲間がいるよね?」

 「はい」


 占い師の確認に僕は淡々と頷いた。


 「僕から言えることは一つ」


 占い師が人差し指を立てる。



 「 お前、仲間と決別するよ 」



 ……はっ?


 占い師の語る結果に、僕は耳を疑った。


 「決別、ですか」

 「うん、喧嘩して」

 「……」


 ……うん、この占い師はイカサマだ。


 僕がタツタくんと喧嘩することなんてほぼ無いし、それで決別するなんてもっと有り得ないからだ。


 「御代は幾らですか?」

 「おや、もう帰るのかい」

 「ええ、まあ」


 これ以上、イカサマ占い師の話を聞いたって時間の無駄であろう。だったら、延長料金とか取られる前にさっさと帰ったっていい筈だ。


 「 待ちなよ――復讐者 」


 ――その言葉に僕は財布に伸ばした手を止めた。


 「折角だから最後まで聞きなよ」


 占い師の口調は穏やかだったか、どこか威圧的で逆らえなかった。


 「僕の占いは百発百中――だから、お前は仲間と決別する」

 「……」


 僕は無言で占い師を睨み付けた。何というか不愉快だった。


 「それにお前の復讐は成功しない」

 「どうしてそう言い切れる」


 僕はついつい突っ掛かってしまう。


 「言い切るさ」


 占い師は飄々とした態度で即答する。


 「僕の言葉は絶対だ、何者にも覆せない」


 その手はローブのフードの端を摘まんでいた。


 「何より王様は嘘を吐かない」


 そして――静かにフードを上げた。


 「 これが答えだよ――カノン=スカーレット 」


 ――ドクンッッッ……! 僕の心臓が大きく鼓動した。


 「――っ」


 ――ガタンッ! 僕は立ち上がり、〝火音〟をホルダーから抜き出し、安全装置を解除して、奴の額に銃口を向けた。


 「せっかちだね、カノン」


 しかし、奴は一切動じることなく、僕の方を真っ直ぐに見つめていた。


 「……何でお前がここにいる」


 僕は〝火音〟の引き金に小さく力を込めた。


 「……お前は何を企んでいる!」


 僕は強めに吼えた。しかし、奴は動じない。


 「答えろ!」


 そいつはこの世界で最も強く、残忍で、何よりも僕の家族を――殺した男!



 「 〝白絵〟! 」



 そう、占い師は魔王――〝白絵〟であった。


 「 少し昔話でもしようか、カノン 」



 ……〝白絵〟は静かに笑い、提案した。


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