第10話 『 タツタVS〝FG〟 』
【 溶岩王の宮殿 】
「初めましてだな、〝FG〟」
……俺は全身炎に包まれた石の巨人――〝FG〟の前に立っていた。無論、俺の視界にギルドの姿は無い。
「頑張ってください、タツタさん」
ギルドは入り口の前から俺の勝利を応援していた。
「言われなくても既に殺る気満々だよ」
俺は〝SOC〟を抜刀し、刃先を〝FG〟に向けて、臨戦の構えをした。
「向こうさんもな」
『korosu』
〝FG〟の瞳が赤く発光した。
「……」
『……』
俺と〝FG〟が睨み合い、沈黙する。
「……」
『……』
……風が吹く。
……砂塵が舞う。
……そして、
――俺と〝FG〟が同時に動き出した。
俺は〝SOC〟を片手に一挙に間合いを詰める。
〝FG〟は飛び出す俺目掛けて、豪腕を振り下ろす。
「先手必勝……!」
『sine』
俺は構わず前進する。
〝FG〟も躊躇いなくその豪腕を振り下ろす。
――ゴッッッッッッッッ……! ……〝FG〟の振り下ろした豪腕が炸裂した。
……その威力は凄まじく、地面を抉り、粉塵を巻き上がらせ、宮殿を揺らした。
『sinnda?』
〝FG〟は口の無い顔で呟いた。
確かに、あの一撃は強力だ。幾ら俺が同じLv.100だとしても喰らえばただではいられないだろう。
ああ、そうだ。
そうだとも。
あんな隕石みたいなパンチ、当たれば即死だ。
まあ――……。
『 o? 』
「 当たればな 」
――俺は粉塵から飛び出した。
そして、勢いそのまま〝FG〟の顔面まで跳躍した。
「地獄の底まで落としてやるよ」
ギュッ……! 〝SOC〟の柄を力強く握った。
「 空龍心剣流魔剣術 」
目標は〝FG〟の脳天。
(――思い出せ! カグラの技を!)
……俺は力の限り〝SOC〟を振り下ろした。
地 獄 落 と し
――炸裂。俺の振り下ろした〝SOC〟は〝FG〟の脳天に直撃した。
「う」
そして、
「おおォォォオォォォォォォ……!」
……〝FG〟は弾かれるように地面に叩きつけられた。
その勢いは凄まじく、地響きと共に周囲一帯に礫や砂塵を撒き散らした。
「どうだ」
トンッ……。俺は着地して、ギルドの方を見て親指を立てた。
「凄いです、タツタさん!」
ギルドが声援が心地よい。
「……勝ったかな」
……そう思った瞬間。
「タツタさんっ……!」
ギルドが叫んだ。
「――っ!」
俺は咄嗟に振り返った。
そこには――……。
『 ou 』
――粉塵から飛び出す〝FG〟の巨大な腕があった。
ヤバい!? かわしきれない! ……そう思った俺は反射的に〝SOC〟を構えた。
――ガッッッ! 〝FG〟の拳が直撃した。
「あっ、ぶな……!」
しかし、俺は〝FG〟の攻撃を受け止めることに成功し――……?
……ふわっ
「……えっ?」
――足が地面から浮いた。
「――重っ……!」
あ、これは支えきれない……そう直感的に悟った。
――俺は弾丸のように弾かれた。
そして、その先にある岩壁に直撃した。
「……がっ!」
……一瞬。意識が飛んだ。
その衝撃は岩壁を砕き、隣の部屋まで俺を吹っ飛ばすほどの威力であった。
――……ぽたっ。頭から熱い何かが溢れ落ちた。
「……血?」
……俺の血だった。血液ってこんなにも熱くなるんだ、と少し驚いた。
いつまでも寝ているわけにもいかないので立ち上がる。
「……っ」
――痛みが走った。背中や頭、体の節々が痛かった。
「クソッ、油断した」
でも、戦える。俺の体はLv.100の頑丈さがあった。
歩く、歩く、歩く。粉塵を掻き分け前へと進む。
数歩歩くと視界が開けた。
……そこには僅かに頭を抉られた〝FG〟が立っていた。
何てことはない、〝FG〟は生きていた。
「待たせたな」
ならば、やることは一つ。
「第2ラウンドを始めるぞ」
――〝FG〟をぶった斬る。俺のやることはただそれだけだ。
……俺は〝SOC〟を構えて、不敵に笑った。