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 第129話 『 最後の一振り 』



 ――〝むかで〟が超高速移動で接近する。


 「――くっ!」


 俺は辛うじて反応して、〝SOC〟で迫り来るナイフをガードした――と、思ったら既に〝むかで〟は俺の背後にいる。


 俺は咄嗟に身を屈ませて、背後から迫るナイフを回避する。


 (――集中ッ!)


 回避したのも束の間、〝むかで〟は手首をスナップさせナイフを投げる。


 「 〝風刃ウィンドサーベル〟! 」


 しかし、〝むかで〟が投げたナイフはギルドが放った風の刃によって弾かれる。


 ( 集中! )


 俺は攻めずに、後方へ跳んで距離を取る。


 「……どうした? さっきから逃げてばかりではないか」

 「……」


 ……そう、〝むかで〟が言うように俺はさっきから攻撃をせず、回避することに徹していた。


 「勝つ気が無いのならば素直にフレイを置いていったらどうだ」

 「それはやだね」

 「だが、逃げてばかりでは勝利は手に入らぬぞ」

 「……チッ、余計なお世話だよ」


 ……〝むかで〟の言うことは間違ってはいない。

 攻めなければ勝てない、至極常識的な話だ。


 ……まあ、普通の戦いだったらな。


 「……それとも何か企んでいるのか」

 「……」

 「……沈黙、か」


 きりの無い問答に〝むかで〟は溜め息を吐いた。


 「まあ、いいだろう」


 ―― 一瞬の静寂。


 「貴様は飽きた」



 ――ズアッッッッッッッッッ……!



 「 ―― 」


 ……プレッシャーが跳ね上がった!


 「 もう死ね 」



 〝 蟲 龍 〟 、 陸 式



 「……ギルド、作戦中断だ」

 「――えっ?」





    百    足    王





 「……お前は逃げろっ」


 ……それはひたすらに強大で、


 ……凶悪な牙と脚を持つ、


 ……百足だった。


 「……でかいっ!」

 ……それは、最初見たときよりも数段巨大であった。

 「……」


 ――俺は〝氷龍装填・蒼天斬華〟を解除した。


 「ギルド、皆を連れて逃げろ!」

 「タツタさんはどうするつもりですか!」

 「俺は!」


 ――〝SOC〟を構える。


 「コイツを何とかする!」

 「無茶です! タツタさんも逃げてください!」


 ――無理だ。


 〝百足王〟はあらゆる障害物を無視して全てを破壊する。

 今の俺に、全員を抱えて逃げ切る体力は残っていなかった。


 「……死ぬ気ですか」

 「……」

 「……駄目ですよ、諦めちゃ」

 「仕方ねェだろ、作戦は間に合わなかった。〝むかで〟が本気を出した時点でゲームオーバーなんだよ」


 ――もう〝百足王〟は目の前まで迫っていた。


 「急げ、ギルド! ここは俺が時間を稼ぐ! だから、急いで逃げろ!」

 「嫌です!」

 「頼む! 俺の言うことを聞いてく


 ――しまった。


 『 ギィイィイイィィィィィィィィィィィイイイィイィイイィィィィィィィィィィィイイイ 』


 ――もう、間に合わない。


 『 ィイィイイィィィィィィィィィィィイイイ 』


 ……〝百足王〟がもうすぐそこにいた。






 ――死。





     黒     羽





 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 〝百足王〟に鴉を模した黒い炎の集合体が衝突した。



 「 いい加減にしろよ、タツタァッ! 」


 ……〝からす〟だ。〝からす〟が〝百足王〟の進行を止めていた。


 「勝手に諦めるなよ! 勝手に死のうとするなよ!」


 〝からす〟が吼えた。


 「あんたはフレイにとって大切な人なんだよ! あんたが死んだらフレイが悲しむんだよ!」


 無理矢理身体を動かしているのか額から滝のような汗を流していた。


 「自己満足な自己犠牲に浸んなよ! 生きろよ! 生きてフレイにおかえりって言ってやれよ!」


 ――ピシッ、〝黒羽〟に亀裂が走った。


 「……勝ってよ、タツタ」


 ――〝からす〟の膝が崩れた。


 「……じゃないと、許さないからな」


 ……そして、〝からす〟は倒れた。


 「……」


 ――同時。〝黒羽〟が粉々に砕け散った。


 「 ありがとな、〝からす〟 」


 ――〝百足王〟が俺たちに直進する。



 「 お陰で目ェ覚めたよ 」




  超  ・  黒  飛  那




 ――〝百足王〟と〝超・黒飛那〟が衝突した。


 「 ギルド! 」


 「――はいっ」


 俺は〝百足王〟から目を逸らさずにギルドを呼んだ。


 「頼む、俺一人じゃどうにもならなそうでな、お前の力を借りたい」

 「……」

 「……いいか」


 「 いいに決まっているじゃないですか! 」


 ――ギルドの頭上に巨大な魔方陣が展開された。


 「 わたしはギルド=ペトロギヌス 」




   終   焉   の   光




 「 空上龍太の一番の仲間です……! 」


 ――そして、特大の熱線が放たれた。


 ……凄まじい威力だが〝百足王〟の威力が凄すぎる! これだけ撃ってもまだ足りないのかよ!


 「「 わたし達もいます……! 」」


 俺とギルドの後ろには――フレイとクリスがいた。


 「もう、守ってもらうだけなのは嫌なんです!」

 「わたしはわたしを必要と言ってくれたタツタさんを信じたい!」


 フレイとクリスが腕を前に出した。


 「だから!」

 「絶対に今ここで勝つ!」




     灼     煌




    凍    幻    郷




 ――圧倒的な熱量を誇る衝撃波が炸裂して、間髪入れずに氷結した。


 「……行けるかっ」


 ……〝黒羽〟・〝超・黒飛那〟・〝終焉の光〟・〝灼煌〟・〝凍幻郷〟。これほどの大技をぶつけたのだ。

 だから、止まる! 止ま



 『 ギアァァァァアアァァァァアァァァァァァァァァァァッッッッッ……! 』



 「 ―― 」


 ――〝百足王〟が氷結を破壊した。


 ……まだ、


 ……まだ、止まらないのかよ。


 「 顔を上げて、タツタくん! 」


 ――声が聴こえた。カノンの声だ。


 「 〝火音〟 」


 「 (+) 」


 「 〝雷羽〟 」


 「 (+) 」


 「 〝水蓮〟 」


 ――カノンが俺たちの前に滑り込む。


 「――カノン!」

 「君は僕らの希望だ! だから、けっして奪わせはしないよ!」


 ――カノンの人差し指が〝百足王〟を捉える。


 「 解放バースト 」




  らい    すい  りゅう  だん




 ――圧縮された、雷速の熱線が〝百足王〟の頭蓋骨に亀裂を入れた。


 「後は任せたよ、タツタくん!」

 「おう、任せろい!」


 ――俺は抜刀の構えをした。


 「 ギルド 」


 ……俺は呟く。


 「 カノン 」


 「 フレイ 」


 「 クリス 」


 「 〝からす〟 」


 ……〝SOC〟に〝闇黒染占〟を集中させる。


 「 ありがとな! 」


 ――〝百足王〟が迫る。


 ――俺は右手を柄に添える。


 「乗せるぜ、この一刀に」


 『 ギィイィイイィィィィィィィィィィィイイイッッッッッ……! 』


 ――〝百足王〟が迫る。


 ――俺は地面が弾けるほどの力で踏み込んだ。


 「 俺とお前らとの全てをな……! 」






     かみ     づき






 ……そして、刃が解放された。


挿絵(By みてみん)


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