第127話 『 轟け、絶対零度! 臨界突破の凍幻郷!! 』
「 行くぜ 」
「 いつでも構わんよ 」
「 ふふっ 」
「 だったらお言葉に甘えさせてもらうよ♪ 」
―― 一瞬の静寂。
――ダッッッッッ……! 俺と〝むかで〟とギルドとカノンが同時に飛び出した。
「 まずは手始めに 」
――〝蟲龍〟、弐式。
「 何名生き残れるのかね 」
雷
――雷速の〝ムカデ〟が〝むかで〟の袖から飛び出した。
「 上等だ! 」
――〝闇黒染占〟ッッッ……!
俺は手足や目に〝闇黒染占〟を集中させた。
〝雷〟が俺の目の前まで迫る。
俺はそれを〝SOC〟を突き出して迎撃する。
――ギュルッッッ……! 〝雷〟が一切速度を落とさずに方向転換した!
「――」
――〝雷〟は複雑な軌道を描き、そして、俺の後頭部を狙う。
「 見えてる、って言っただろ 」
――キイィィィィィィィンンッ……! 〝雷〟の軌道を見切った俺は意図も容易く〝雷〟を弾いた。
「 〝むかで〟 」
「……〝雷〟を見切ったか、空上龍太」
……しかし、〝雷〟はまだ死んではいなかった。
「 だが、貴様の仲間はどうかね 」
――〝雷〟はカノンに襲い掛かる。
「……ハッ、馬鹿言うなよ」
装填――〝雷羽〟。
「 俺の仲間はそんなに柔じゃねェよ! 」
雷 華
――雷速化したカノンは〝雷〟を雷速移動で回避した。
「……これならどうかな」
――〝雷〟は軌道を複雑に変化させ、カノンに襲い掛かる。
「悪いね、雷速の世界ならとっくに身体が覚えているんでね」
――カノンは踊るように〝雷〟を回避した。
「今の僕は〝雷速の脚〟だけじゃなくて、〝雷速の目〟すらも手に入れた」
「……力を上げたのは空上龍太だけではないようだな」
――だが、と〝むかで〟は言った。
「 足手まといを見逃す俺ではないのだよ 」
「……あら?」
――〝雷〟はギルドへと標的を変えた。
「役不足だ。ご退場願おうか」
〝雷〟がギルドの脳天を狙う。
しかし、ギルドは一歩も動かない。
「……確かに、わたしにはタツタさんやカノンくんのような〝目〟や〝脚〟は持っていません」
絶 対 風 域
――〝雷〟の軌道が大きく逸れ、地面に突き刺さった。
……風だ。ギルドを渦巻く暴風に煽られ、〝雷〟の軌道は無理矢理ねじ曲げられたのだ。
「 でも 」
ギルドが不敵に笑んだ。
「わたしには魔術がある。それなら戦える――〝むかで〟さん、あなたとでもね」
「見事だ」
〝むかで〟がギルド、いや、俺達を認めた。
「どうやら、俺は貴様ら見くびっていたようだな」
〝むかで〟は〝雷〟を解除した。
「少し本気を出そうか」
千 獄
――ドッッッッッッッ……! 大量の〝ムカデ〟が地面から飛び出した。
「……これはどう凌ぐ」
〝むかで〟が試すように問うた。
「ギルド!」
「はい!」
「カノン!」
「何?」
俺はギルドとカノンを呼んだ。
「俺は〝むかで〟をブッ飛ばす、だからお前らは〝千獄〟を何とかしてくれ」
「了解しました☆」
「うん、任せて♪」
……ああ、頼もしい限りだぜ。
「行くぞ、一、二の――……」
――散ッッッ……! 俺とギルドとカノンは一斉に飛び出した。
「 暴れろ、〝千獄〟 」
――千の〝ムカデ〟が一挙に押し寄せた。
まるで雨、いや津波だ。一撃一撃が高い殺傷能力を秘めた〝ムカデ〟がこの数で攻めてくるのだ。脅威以外の何物でも無いだろう。
〝千獄〟の動きは統制されたものであり、三分の一が雨のように上空から降り注ぎ、三分の一が俺たちを囲うよう遅い、三分の一が追尾してきた。
何て手数だ! これじゃあ〝むかで〟にたどり着くことすらできないぞ!
「 行って、タツタくん! 」
――俺を追尾する〝ムカデ〟が灼熱の弾丸に呑み込まれ、消し炭になった。
「ここは僕たちが引き受けるから!」
「頼もしいぜ!」
俺は〝闇黒染占〟を脚に集中させて――地面を力強く踏んだ。
――ドッッッッッ……! 俺はロケットのように真っ直ぐ、〝むかで〟目掛けて跳んだ。
――俺の頭上に大量の〝ムカデ〟が降り注ぐ。
絶 空
――斬ッッッッッ……! 目の前の〝ムカデ〟の群が真空の刃に切り裂かれ、消し飛んだ。
「タツタさんの邪魔はさせません……!」
「ギルド、ナイスアシストだ!」
俺は〝むかで〟目掛けて直進する。
「うお」
目の前を遮るものは何も無い。
「ォォォ」
――俺は〝SOC〟を構えた。
「ォォォォォォォォォォォォッッッ……!」
「来い、空上龍太」
黒 飛 那
――極黒の衝撃波が〝むかで〟に放たれた。
「脆弱な一撃だ、嘗めているのか」
――しかし、素手で〝黒飛那〟は弾かれる。
「 嘗めてねェよ! 」
「 ―― 」
――俺は〝むかで〟の頭上にいた。
……さっきの〝黒飛那〟は〝俺〟が〝むかで〟の頭上を取るための目隠しだったのだ。
「これで終わりだァァァァァァァァァァァァァァ……!」
――〝俺〟は〝SOC〟を〝むかで〟目掛けて突き出した。
――ドッッッッッッッ……!
「 確かに、これで終わりだな 」
――〝SOC〟は空を切り、代わりに〝むかで〟のナイフが〝俺〟の心臓を貫いていた。
「……貴様の敗けだ」
「……」
――ピシッ、〝俺〟に小さなひびが入った。
「 ―― 」
「 いい技持ってんじゃねェか――〝からす〟 」
……〝俺〟は笑った。
次 の 瞬 間 。
――パリイィィィィィィィンッッッ……! 〝俺〟が砕け散った。
「 〝鏡〟、だとっ 」
……〝むかで〟が珍しく目を見開き、驚愕した。
そう、あらかじめ〝からす〟に頼んでいたのだ。このタイミングで〝鏡〟と俺を入れ換えるようにな。
「行っけェェェ、タツタァ……!」
〝からす〟が叫んだ――〝むかで〟の目の前で〝SOC〟を振りかぶっている俺に。
「 喰らえ、〝むかで〟 」
――パキイィィィィンッ……! 背中の花弁が一枚粉々に砕け散った。
「 これが-273℃の氷撃 」
――俺は力の限り〝SOC〟を突き出した。
凍 幻 郷
――圧倒的な質量を誇る氷が〝むかで〟を呑み込んだ。




