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  第9話  『 進化 』



 「……Lv.96!?」


 ……俺は〝SOC〟を納刀し、ギルドは俺の頭上の数字に驚愕した。


 「わたしのレベルはLv.281ですが……」


 ……盛り下がるからそういうこと言うなよ。


 「実質、Lv.184の差ですが……」


 ……お前、俺に何か恨みでもあるの?


 「でも、凄いですよタツタさん。この短期間でレベルを95も上げてしまわれるなんて異常な成長速度ですよ」

 「……そうなのか?」

 「はい、わたしがそのレベルに達するのに冒険を始めてから一年は掛かりました。それに比べてタツタさんは冒険を始めてまだ二ヶ月も経っていませんので、およそ5~6倍の速さで成長しています」


 ……俺SUGEEEEEEEEE! ――と、言いたいところだが、実は言うとそんなに凄くない。

 このハイスピードなレベルアップはほぼギルドのお陰である。

 この急成長のカラクリをわかりやすく説明するならば、ポケ○ンでいう、〝が○しゅうそうち〟と〝チャ○ピオンロード〟である。

 最初の草むらでコツコツとレベル上げをしていたときと〝が○しゅうそうち〟を持たせて、〝チャ○ピオンロード〟でレベル上げをしていたときとでは成長速度が違うように、コツコツとレベル上げをしていたギルドとギルドと一緒に同行し、その闘いを見て、その動きを真似する俺の成長速度に差が出るのは当然のことであった。

 とどのつまり俺は、ギルドの戦いを安全圏で見学し、ある程度成長したところで弱い魔物を相手に無双していたというわけだ。

 ……………………。

 …………。

 ……。


 俺、格好悪っ……!


 ……俺自身そう思います、はい。


 「凄いです! タツタさん!」


 俺の成長に大絶賛なギルド……正直、悪くない。


 「タツタさんは天才です☆」


 ……いいね、これ。


 「とっても格好いいです☆」


 ……ちょっくら、無双してくるわ。

 それから俺は〝迷宮砂漠〟にて無双の限りを尽くした。

 〝鬼サソリ〟の鋏による攻撃も軽やかにかわして、一刀両断。

 〝人喰いワーム〟は取り敢えず一刀両断。

 ミノタウロスはパンチ。

 〝レッドスライム〟はデコピン。

 無双! 無双! 無双! まさに、無双に次ぐ無双からの無双であった。

 きっ、気持ちいい~~~~~~っ!


 「きゃー☆ タツタさん、格好いい~~~☆」


 更に、ギルドからの黄色い声援。


 ……気持ちよすぎるんじゃ~~~~~~っ!


 「ふう、弱すぎる。これじゃあ、準備体操にもならないね」

 ↑(ドヤァ……!)


 ……とか、言っちゃってみたり? うは~~~~~~っ!


 これが俺tueeeeeeee……! ライフ! 最高すぎるぜ!


 「……良かった、少しおだてただけで戦ってくれるなんて。正直、一人で戦うの疲れてたんですよね」

 ↑(ぼそっ)


挿絵(By みてみん)


 「……ん? 何か言ったか?」


 ギルドが何か言ったような気がしたが、声が小さくてよく聞こえなかった。


 「いえ、何でもありませんよ。何でも」

 「ん、そうか」


 ……まあ、大したことじゃないだろ。


 そんなわけで、俺は無双に次ぐ無双からの無双をし、遂に〝迷宮砂漠〟の中心地に位置する――〝溶岩王の宮殿〟へとたどり着いたのだ。


 「遂に着いたな」

 「そうですね」


 〝溶岩王の宮殿〟は、この〝迷宮砂漠〟で最も強い魔物――〝ファイア・ゴーレム〟が君臨し、火の精霊――〝フレイチェル〟(略して、〝フレイ〟)を生け捕りにし、監禁しているのだ。


 「〝FG〟は高い攻撃力と防御力を誇るLv.100の魔物……今のタツタさんといえど油断は大敵ですよ」


 ……確かに、今の俺のレベルは〝FG〟と互角のLv.100――今までのような無双は厳しいかな。


 「ここは一つわたしが戦いましょうか? わたしなら〝FG〟ぐらいなら簡単に倒せますから」

 「……」


 ギルドの提案に沈黙する俺。


 「どうしますか、タツタさん」


 「 断る 」


 ……しかし、俺はギルドの提案を一刀両断した。


 「〝FG〟は俺がやる、手出しは無用だよ」

 「でもっ」

 「大丈夫だ」


 食い下がるギルドに念入りに釘を打つ。


 「俺には修行で見極めた――〝取って置き〟がある」

 「……取って置き?」

 「おう」


 俺は自信満々に頷いた。

 そんな俺に何を言っても無駄だと思ったギルドは素直に引いた。


 「……でも、無茶だけはしないでくださいね」

 「了解だ」


 俺は豪快に〝SOC〟を抜刀した。


 「俺は勝つ」


 そして、その切っ先を宮殿へと向けた。


 「絶対にな」


 俺は力強く歩を進めた。



 ……かくして、俺と〝FG〟との戦いが静かに始まるのであった。


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