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 第101話 『 空門、覚醒 』



 ……やった。


 やったぞ!


 勝ったんだ、あの〝むかで〟に!


 まあ、カノンと組んで二対一だったから完全勝利とは言い難いが、何にしても俺は勝ったんだ。


 おいおい、何だよギルド。何でそんな焦った顔してんだよ。


 フレイもフレイだ。勝ったんだから泣いてんじゃねェよ。


 ……あれ?


 何でだろう、何で俺の身体は動かないんだ?


 何で、地面に横たわっているんだ?


 何だよ、これ?


 俺、勝ったんだよな?


 これじゃあまるで、俺達が負けたみたいじゃないか?


 ……ギルド。


 ……フレイ。


 ……カノン。


 皆、何か言ってくれよ!


 ……俺達、勝ったんだよな!


 ……勝ったんだよな!



 「 もう、終わりなのか? 」



 ……何で?


 何でだよ!


 何で。


 何で。何で。何で。何で。何で。何で。何で。何で。何で。何で。何で。何で。何で。何で。何で。何で。何で。何で。何で。



 「 空上龍太 」



 ――〝むかで〟が生きているんだ!


 「……………………まだ、戦える」


 〝むかで〟は生きていた。ただ右手から僅かに出血しているだけであった。


 「……まだ……戦える」

 「無様だな」


 往生際の悪い俺に〝むかで〟が冷たく吐き捨てる。


 「……もう、貴様に戦う力は残ってはいない」


 ……嫌だ。


 「翼を無くした小鳥はただ墜ちるだけ」


 ……嫌だ。


 「 貴様は負けたのだよ 」


 嫌だ……!


 「……守らないといけないんだ」


 ……腕に力が入らなかった。


 「……フレイを守りたいんだ」


 ……指一つ、動かなかった。


 「見るに耐えないな」


 ……〝むかで〟が右手を振りかざした。


 「せめて潔く――死ね」



 〝蟲龍きりゅう〟、弐式――……。



 ……ああ、


 ……ちくしょう。俺、死んじまうのかよ。



        雷



 「……」


 ……悔いが残るな。




 ――ドッッッッッッッッ……。




 ……血飛沫が舞った。


 「……………………なっ!?」


 ……俺は目の前の光景に目を疑う。


 「……なん……でだよ」


 ……俺は生きていた。


 「 怪我は無いかな、タツタくん 」


 ……カノンが俺の前に立ち、その横腹には風穴が空いていた。


 「……お前……動けたのかよ」


 だって、〝黒朧〟は発射と同時にカノンの魔力・体力を根こそぎ消費する諸刃の剣なんだぞ! それなのに何でだよ!


 「……ははっ、気合いかな? タツタくんを守ろうって思ったら何とか動けたんだよ」


 ……何で俺なんかの為に!


 「……でも、ごめんね」


 ふらり、カノンの身体が傾いた。


 「……もう……ぼく……限界、なんだ」

 「カノンッ……!」


 ――どさっ……。カノンの身体が床に落ちた。


 「……」

 「カノン……!」

 「……」

 「カノンッ……!」












 ド      ン

            ッ!

    ク



 ――憎い。


 ……ドクンッ。


 ――殺す。


 ……ドクンッ。


 ――殺す。殺す。殺す。


 ……ドクンッ。


 ――殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。


 ……ドクンッ。


 「 むかでェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッッッ……!!! 」


 ――ゴッッッッッッッッッッッッッ……!


 ……魔力が一挙に膨張した。


 「タツタさん……!」


 ギルドが叫ぶ……しかし、俺の頭の中には入ってこない。

 何故なら、俺の頭の中にはまったく別のものが占めていたからだ。


 (……憎い!)


 ……それはありったけの、


 (憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い! 憎い!)



 ――憎悪。



 ……頭の中に声が響いた。



 ――おい、からだを寄越しやがれ。



 ……俺の声だ。



 ――〝俺〟がもっとてめェを巧く使ってやるよ!



 ……でも、俺であって俺じゃない。



 ――仲間を守りたいんだろ、龍太!



 ……そう、



 ――だったら、てめェはさっさと眠りやがれ!



 ……〝俺〟だ。


 ……そこで、俺の意識は途絶えた。それは、唐突で抗いようのない強烈な失神だった。


 ……………………。

 …………。

 ……。


 「……魔力の質が変わったか、だが何も変わらんよ」


 〝むかで〟は右腕を差し出し。


 「最強は俺だ」



        雷



 雷速のムカデが〝俺〟に襲い掛かった。



 ――ガシッッッ……! 同時、俺は雷速のムカデを鷲掴みした。



 「……遅ェんだよ」


 ……ぐいっ、〝俺〟は無理矢理鷲掴みしたムカデを引っ張り、その延長線の〝むかで〟も引っ張られた。


 「代わるならさっさと代われ、馬鹿が」



 ――ゴッッッッッッッッッッッ……! 〝俺〟は〝むかで〟の頬に拳骨を叩き込んだ。



 〝むかで〟は弾丸のように弾かれ、氷の壁を幾つもぶち抜き、やっと静止した。


 「……貴様」


 ……しかし、〝むかで〟はすぐに立ち上がった。呆れた頑丈さだな。


 「貴様――じゃねェよ」


 〝俺〟は遥か向こうにいる〝むかで〟を真っ直ぐに見据える。



 「 〝空門あもん〟だ 」



挿絵(By みてみん)


 ……それが〝俺〟の名前であった。


 「さあ、殺ろうか」

 「少し、面白くなったな」


 ――〝俺〟は〝SOC〟を握り、飛び出す。


 ――〝むかで〟が右手から〝雷〟を繰り出す。



 「「 殺す 」」



 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッ……! 〝俺〟の斬撃と〝むかで〟の〝雷〟が衝突した。


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